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 OASISが,SGMLやXMLの相互運用性のテストを行う一業界団体から,本格的なオープン・スタンダードの標準化団体として大きく飛躍したのは,1999年に国連組織のUN/CEFACTと共同で,「ebXML(Electronic Business XML)」の開発を開始してからです。

 ebXMLは,企業間(B2B)電子商取引用のXMLタグセット仕様群を開発する国際的な取り組みです。当時,マイクロソフトを除く多くのITベンダーや標準化団体が,その活動に積極的に参加しました(マイクロソフトが参加しなかった理由は後に説明します)。ebXMLは2001年にOASISとUN/CEFACTにより正式に承認されました。

 そして,このebXMLの開発活動の中心にはOASISが存在しました。一般的に,標準化活動の舵取りは困難です。ですがOASISは多くの参加企業のそれぞれのビジネス戦略と,オープンな標準化活動の間を取り持つコーディネータとして立ち回りました。またOASIS内にも技術委員会を複数設置して,みずから地道な標準化活動の推進に努めました。

 OASISがebXMLの開発に取り組み始めた当時は,XML1.0がW3Cで制定された(1998年2月)ばかりで,ようやくXMLの有用性が市場で認識され始めた頃です。OASISとしては,本格的なeビジネス標準の開発を通して,XMLのパワーを市場に示したかったのです。また,国連組織のUN/CEFACTと組むことで,国際的に認知されるeビジネス標準が開発できるとも考えました。

 ただ,ebXMLの立ち上げには,ベンダーの“目論み”やベンダー間の対抗意識があったことも事実です。ebXMLにはIBM,サン・マイクロシステムズ,オラクルなどのITベンダーが大きく関わっています。これらITベンダーは,当時マイクロソフトが発表したSOAPベースの「.NET Framework」への対抗意識を持っていました。マイクロソフトに対抗できる,オープン・スタンダードの形態を取った仕様を開発するために,OASISをその“場”としたわけです。先ほどマイクロソフトはebXMLの活動に参加しなかったと書きましたが,こうした経緯からです。

最も実績ある標準として世界で利用が進む

 ebXMLの活動は,その後,UN/CEFACTとの役割分担の確執や,知財権の取り扱いの関係でIBMが活動から抜けるなど,様々な紆余曲折を経ました。ですが最終的にOASISは以下の四つのebXML標準を開発するという成果を上げました。

- ebXML Collaboration Protocol Profile and Agreement (CPPA)
バイヤーとセラーが,電子商取引する最初に,通信方法を交渉して決定する仕組み
- ebXML Messaging Service Specification (ebMS)
ebXMLメッセージを送受信する際のサービス仕様
- ebXML Registry Information Model (ebRIM)
電子商取引で交換し合う電子文書等のコンテンツを格納するレジストリの情報モデル
- ebXML Registry Service Specification (ebRS)
ebXMLレジストリへアクセスするためのサービス仕様

 これら四つの標準は,強じんな業界サプライチェーンを構築する際に,最も実績のある標準として活用されています。

 それを証明するように,四つの標準は2004年3月,ISO(国際標準化機構)によって,ISO 15000として制定されました。OASISのような非営利会員制の業界コンソーシアムが開発したデファクト(de fact)標準が,世界で初めて国際的な公的標準化機関のデジューレ(de jure)標準に採用されたわけです。これは画期的なことと言えるでしょう。

 標準化に10年以上もの時間を費やし,開発が完了した頃には市場のニーズが変化してしまっている---。ISOなど公的な標準化団体の活動では,しばしばこのような構図が見られます。一方で,OASISの活動は時代に即応するべく,標準を開発すると同時に実地検証しながら1~2年でさっと完成させてしまいます。ISOがOASISの標準を認めたことは,時代の流れの変化をよく示しています。

 ebXMLは,欧州やアジア地域など世界各地で最も使われている標準の一つになりました。例えば健康管理の業界標準化団体であるHL7や,旅行業界の標準化団体OTA(Open Travel Alliance)は,ebXMLベースでそれぞれの標準メッセージを交換しています。各企業や業界団体での活用を促すように,オープンソースのebXMLツールも数多くリリースされています。

 OASISでは,先に説明した四つの標準について強化を続けております。e-ビジネス標準は,“開発しっぱなし”では存在意義は薄れてしまうからです。強化点の一つは,SOA(サービス指向アーキテクチャ)関連です。1999年から開発を始めたebXMLの技術アーキテクチャは少々古くなりつつありますが,これをWebサービス・ベースのSOAと融合を図りながら改訂するために,「Electronic Business Service Oriented Architecture (ebSOA)」技術委員会を立ち上げました。

 こうした活動を通してOASISが業界に供した貢献は,開発した標準だけではありません。標準化のプロセスを確立したことも,その貢献の一つです。e-ビジネス標準の開発は大規模になるに従って,多くのベンダー企業,ユーザー企業,そして他の標準化団体と協力することが不可欠です。その際の柔軟で公平な標準化プロセスを確立しました。

 またebXMLの活動で,同種の標準との収れん・統合や,ユーザー企業に向けた啓蒙活動が重要であることも実証しました。活動ではXML要素技術の利用とフィードバックを繰り返しましたが,一連のダイナミックな技術の交流と人的交流を通して,IT業界の標準化コミュニティのメインストリームを確立できたことも強調したい点です。

 ebXML開発以前のOASISと以後のOASISを比べてみると,OASISの標準化活動自体も,また業界内のOASISに対する評価も,天と地ほどの違いがあります。OASISはこのebXML活動と前後して,W3CやWebサービスの相互運用性を図る組織「WS-I」と共同で,Webサービスの標準化に取り組んでいきます。さらにはグリッド・コンピューティングの国際標準化団体である「GGF」と共同で,グリッド・コンピューティングの標準化を進めます。IT業界がOASISの標準化活動を高く評価していることの象徴と言えるでしょう。

 次回は,XMLベースのオフィス・アプリケーション用ファイル・フォーマットである「OpenDocument」について解説します。