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 SEを目指す大学生4年生のTさんは、複数の企業の選考に合格し、最終的にどの企業に就職するか悩んでいます。企業に関する様々な情報に混乱してしまっているというのと(前回を参照)、どうもそれとはまた別の課題もありそうです。

 「親しい友達が同業のX社に内定したんだけど、自分がA社に入社したら、X社の人と一緒に仕事することもあるのかな」

 「X社なら、A社に限らずB社やC社とも協業する可能性はありそうだけど、友達がそこに入社するということで、なにか気になることでもあるの?」

 「家庭人としての幸せも大事だって両親が言うので、やっぱりそうかなと思って、それならSEにならなくてもいいような気もするんだけど」

 「家庭人としての幸せってどんなイメージなのかな?SEとしてやっていくこととどう関係しそう?」

 「同じSEをするのでも、育児や介護の休暇もあって働きやすい企業に就職したいな」

 「育児・介護休業法はどの企業にも適用されると思うけど、例えば子育てをしながらフルタイムで働くかどうかは、自分や家族のそのときの状況によっても違うよね」

 その仕事に就くとどのような良いことや大変なことがあるかを、ありのままに知らせることが、企業として必要と前回お話ししましたが、Tさんとの会話のなかには、それだけでは解決しない要素も含まれているようです。働き方や生き方に対する本人の価値観と深く関わっていそうですよね。職業人としてのキャリアを長く歩んでこられた方からみれば、話が矛盾していたり主体性がみえにくかったりして、歯がゆさを感じられるかもしれませんが、わたくしの経験から申しますと、このような悩みや混乱は、学生さんだけでなく既に働いている人にもよくみられます。

実は、30歳のひとも。

 友人や家族の言うことも気になるでしょうし、各種制度が整っていても本人次第の要素が大きく、また結婚や出産などのライフイベントについては、性別に関わらず、学生のうちから判断のしようがないでしょう。何年か働いた経験のある30歳ぐらいの人たちでも、似たような状況があるようです。様々な情報が手に入るために、それらを用いれば論理的な判断や計画ができそうな気にもなるのですが、実際にはなかなかそうはいかないものですよね。学生さんに限らず、キャリアについて悩んだとき、先ずそのことに気づくことが意外と大事なように思われます。

 情報を集めたり、いろいろなひとの意見を聞くプロセスは大切ですが、限りなく情報を集め、あらゆる代替案を想定して判断しようとすると身動きがとれなくなってしまいます。「何をしたいか、何が得意か、何をしているとき意義を感じるか」を考えましょうとよくいいますが、仕事経験がほとんどないひとにとっては少し難しいかもしれません。いろいろ聞いて自分なりにじっくりと考えたら(いろいろな情報を具材としたスープのように、個々の具から出る‘エキス’やそれらの‘混ざり合った風味’を吟味)、エイっと決めて、まず一歩目を踏み出すことが大事だと思います。

まず一歩踏み出す。自分で決めたという感覚が大事。

 一歩踏み出してみると、想像していたのとは異なる景色が見えるかもしれませんし、未だ見ぬ誰かと出会うかもしれませんよね。しばらく進んでみて全くしっくりこなければ、路線を変更することもできるでしょう。一歩も踏み出さないでじっと考えてつづけていては、キャリアそのものを前進できませんので、どこかで思いきって踏み出しましょう。重要なのは「自分で決めた」という感覚です。親や先生や先輩や友人の意見を参考にしたとしても、最後に決めたのは自分だという思いが、歩みの足取りをしっかりとしたものにしてくれると思います。人生の重要なことを決めるとき、誰にもあてはまることでしょう。

 Tさんとのやりとりのなかで、具体的な何かをわたくしが示すようなことはその後もありませんでしたが、しばらく話しているうちに、Tさんは晴れやかな表情になりました。実は感覚的にA社がいいなと思いながらも、筋道だった理由や計画がなくてはいけない気がしてそれを探していたのだそうで、いずれかに決めて歩みだすこと自体が大切とわかり、スッキリしたとのことです。

 それでは、今日もイキイキ☆お元気に。