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 オープン・ソース・ソフトウエアについての考察「伽藍とバザール」を読んだ方は多いだろう。もし,まだお読みでなければぜひ読んで欲しい。日本語訳も無償で公開されている(「伽藍とバザール」)。Windowsの開発モデルはいうまでもなく伽藍方式である。しかし,ちょっとだけ工夫が加えられた。Microsoft MVPに代表されるコミュニティ・サポートである。

 バザール方式では,誰でも自由にコードを変更でき,その成果は一般に公開される。その結果,多くのフィードバックが得られ,バグの発見や製品の機能改善につながる。一方,伽藍方式では,少数のチームにより仕様が決定される上,コードの修正は特定の部署のプログラマに限られる。しかも,修正の詳細は公開されないことが多い。そのため,十分なフィードバックが得られないことがある。

 バザール方式の代表はLinuxであるが,実際にコードを書いている人は多くない。ソース・コードを見ている人ですらそう多くはないだろう。Linuxコミュニティのほとんどの人はバグ・レポートと仕様変更要求を出すだけだ(もちろん,それは非常に重要な行為だ)。

 マイクロソフトはこの点に着目し,Windowsコミュニティに対する積極的なサポートを開始した。どのようなコミュニティでも,積極的に参加しているリーダー・クラスの人がいる。そうした人をMicrosoft MVPとして表彰したのだ。しかも,特に親マイクロソフトでなくても,中立であればMVPとして表彰される。実際に,かなり批判的な意見を展開している人も,その批判が事実に基づくのであればMVPになっている。さらに,いくつかのコミュニティに関しては,MVPを経由せず,直接のサポートも開始している。

 MVPには多くの特典が与えられるが,最大のメリットは開発者と直接コミュニケーションが取れることだろう。製品のベータ・テストには優先的に参加できるし,仕様変更を要求する権利もある。要求が認められるとは限らないが,かなり重視されることは確かだ。一部のMVPにはWindowsのソース・コードを見る権利まである(「MVP Source Licensing Program」)。

 ここまでしてもらえればやる気も出るというものだ。実際,MVPのバグレポート数は,非MVPに比べてかなり多いという。こうして,マイクロソフトは,多くのコミュニティをマーケティングと製品開発に役立てている。もちろん,マイクロソフトの製品開発はバザール方式ではなく,明かに伽藍方式である。しかし,バザール方式の利点の一部をマイクロソフトなりにアレンジして取り込んだということは言えるだろう。