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 「日米ITベンダーはくびきの関係にある」。あるITコンサルタントはこう関係を比喩する。「こんなことをしたら製品供給が滞ってしまう」「輸出に乗り出せば、経済摩擦に発展しかねない」などと懸念し、欧米のITベンダーや半導体メーカーとの関係が壊れることを恐れる。10年前に起きた米国での日本製家電製品の打ち壊しをテレビで観た印象が深く刻まれているし、スーパー301条など輸出規制の恐怖も感じているのかもしれない。

 「マイクロソフトのOS、インテルのプロセッサに対抗する製品を開発する必要があるのか」と、ITベンダーは反論するだろう。確かに、同じものを今さなら開発・製造しても意味はないだろうが、プロセッサやOSからミドルウエア、さらに上位ミドルウエアへと主戦場がITプラットフォームを支える技術や製品(ハードやソフト)に移ってきた今、そこをすべて抑えられたら、日本はITの生産国から消費国になってしまう。コンピュータ・メーカーでもなくなる。そう思える。

 だが、その方向に着実に進んでいる。日本のITベンダーがこの数年前から内需中心のSIサービスに走ったことだ。米IBMが「サービスだ」と言うと、日本のITベンダーは一斉にサービスにシフトする。「アウトソーシング」と言えば、アウトソーシングに、「コンサルティング」となればコンサルティングに向かう。その結果、狙い通りSIサービスから利益を確保する構造に転換できた半面、ハードやソフトから得られる利益はわずかになってしまった。05年度の営業利益を見れば明らかで、富士通はサービスで全体の76%、NECはSI/サービスで62%を稼ぎ出す。日立製作所も情報通信事業の営業利益のほとんどをソフト・サービスで得ている。

 一方、米IBMはどうだろうか。05年度のグローバル・サービスの税引き前利益は全体の27.6%で、ハードやソフトからもきちんと収益を得る構造になっている。つまり、日本のITベンダーはハードやソフトへの開発投資を怠った結果、人月ベースのシステム開発などから収益を得る形になった。だから、その生産性をいかに上げるのか、不採算案件をいかにして撲滅するかに重点を移してしまったのだ。このままの状態をよしとしているはずはないだろう。最近、海外市場への本格的な進出、OEM販売など様々な策を練りはじめている。日本のITベンダーが得意とする指や手のひらによる認証システム、ITタグを活用したシステムなどにも取り組みはじめた。

IT産業の国際競争力を高めるには

 そうした中で、オールジャパンでユビキタス時代に向けたITプラットフォーム作りに着手しようという動きがいくつか出てきた。その1つが、自民党の国会議員で構成される情報産業議員連盟が05年末に打ち出したユビキタス・オペレーティング・プラットフォーム(UOP)構想だ。日本のIT産業の国際競争力を強化し、自動車産業に続くリーディング・インダストリに育成するのが大きな狙いで、ハードやソフト、サービス、キラーアプリケーション、さらには成果物をアジアなどに展開するマーケティングまで含まれている壮大なプロジェクトである。年内に具体的な方向付けを決定し、07年度から開発に着手するストーリーを描いている。

 こうした大プロジェクトによく見られるのが、「A社が参加するなら止める」「技術力のないB社と協業しても、なんのメリットもない」といった各社の思惑が働き、なかなか前に進めないことだ。中には「国家プロジェクトと思っていたら、途中で梯子を外されるかもしれない」と危惧するITベンダーもいる。もちろん自社が中心になって推進したいという強い気持ちもあるだろうし、有力な欧米ITベンダーと組むことでグローバル展開を図ろうとする日本のITベンダーもいるだろう。そこから、社内の少なく人材を社内プロジェクトと大プロジェクトにどう振り分けるのかといった問題も表面化する。

 そうした懸念を払拭させる1つが、経済産業省や総務省などIT政策に深く関与する省庁が一丸となって、IT生産国への転換を図る施策を鮮明に打ち出すことだ。もちろん国家プロジェクトなら、成果物が国民にどう貢献できるのかが問われる。一企業だけが恩恵を受けるようなプロジェクトで納得を得られるはずはないが、呉越同舟の状態でプロジェクトが動き始めたら意味が薄れてしまう。日本のITベンダーが国際競争力を取り戻すには、従来のプロセッサやOSの概念を打ち破るものを開発する必要があるだろう。それが次世代ITプラットフォームで主導権を握る第一歩になる。もちろん1社1社で取り組むべきことも多くあるだろうが、小異を捨て大同に就く。そんなことも考える時期に来ているのではないだろうか。