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 日常的な接点の少ない現役大学生と中小企業のオーナー社長。その2つのコミュニティが、ブログを通じて出会い、新たな化学反応を起こしています。通常ならば、上司と部下の間でも、あるいは親と子の間でもしないような「本質的な問答」を、公開されたブログ上で展開しているのです。

毎週明大生の「素朴な疑問」に、社長ブロガーが答える

 その仕組みは、いたってシンプルです。

 私は、今年から、明治大学商学部クリエイティブビジネスコースの講師を勤め、受講者全員が「ブログ起業」を1年間実体験するプログラムを進めています。その受講生のみなさんが、一方の主人公です。

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 そして、もう一方の主人公は、経営者限定の「経営者会報ブログ」に参加する積極的な社長ブロガーのみなさんです。

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 まず、明治大学商学部の学生が、先輩社長ブロガーに対して聞きたい質問を「私の講義ブログ」に書き込みます。その質問の中から、経営者会報ブログの編集部が、毎週問を選び出します。

 そして、その質問を社長ブロガーたちに投げかけますと、心ある社長ブロガーが回答を自らのブログに書いて、質問の書かれた記事にトラックバックするという仕組みです。

なぜ多忙な社長ブロガーが見知らぬ学生の質問に答えるか?

 もともと、これはふとした思いつきで始まった企画でした。ですから、正直言えば、ここまで盛り上がるとは思いませんでした。

 滅多にない機会ですから、学生たちの質問が集まることは想像できました。しかし、ただでさえ忙しい中小企業のオーナー経営者、それも毎日のように情報発信する社長ブロガーが、学生たちの質問に答える時間はないと思っていました。しかも、その質問内容をご覧いただければお分かりの通り、かなり本質的かつ抽象的で、簡単に答えられる質問ではないのです。

 ですから、当初は、せいぜい1つ2つ回答が集まればよいと思っていました。しかし、毎回、10件近い真剣な回答が集まっているのです。なぜ、社長ブロガーは、見知らぬ学生たちの質問に真剣に答えるのでしょうか?

 もちろん、私もなるべく質問に答えるようにしておりますが、簡単には答えられない難問が並んでいます。しかし、質問に向かい合って答えているうちに、言葉にできない特別な感情を覚えることに気づきました。それが何であるか、最初はうまく言い表すことができなかったのです。

 しかしある日、発案者でもある大西啓之さんの一言にはっといたしました。その豊富な取材経験から想像すると、オーナー経営者は誰しも「次世代に伝えたいメッセージ」を持っているのではないか、だからこそ学生たちの質問をきっかけに、そのメッセージを発するのではないか、とおっしゃったのです。

本来ならば、父から子に話しておきたいこと

 その言葉を聴いて、私は、一番身近なオーナー経営者である父のことを思い出しました。

 経営を譲り受けた今でも、できる限り1日1回は父と向かい合って話を聞き、教えを受けるように、私は心がけています。そんな時、父から「伝えたい」「遺したい」という、ほとばしるような情熱を感じることが、よくあるのです。

 最初は、親子という照れがあったり、父のやり方が古く思えたりして、素直に聴けなかったこともありました。しかし、今では、積極的に耳を傾けられるようになりました。いざ経営者になって初めて、孤独で迷いが多いことに気づいたからかもしれません。だからこそ、昔はうるさく感じられた父の言葉が、つくづくありがたいと感じられるようになったのです。

 また、父と話をしていると、私に話すようでいて、もうひとりの自分と対話をしているのではないかと感じることがあります。わが子への教えという形をとりながらも、無意識のうちに、自らの人生を振り返って、そこに意味や学びを見つけているのではないでしょうか。それは、自らを「認めたい」「許したい」という気持ちの表れなのではないでしょうか?

 若輩経営者の私が、学生のみなさんに回答をしながらふと抱く「言葉にできない感情」。それは、あえて言うならば、中小企業オーナー経営者ならではの不安と自負との狭間で、誰かに伝え遺したいという気持ちと、自分を認め許したいという気持ちとが混ざり合った感情なのではないかと感じました。

 こうした自らの存在の証を「メッセージ」として、自らの後継者に直接うまく伝えるのは、意外に難しいことかもしれません。だからこそ、かえって見ず知らずの学生には熱く語り、素直に伝えられるのではないでしょうか?

いかに受講生に商いの心を伝えるは、その難問を社長ブログで解決

 こうした先輩社長ブロガーたちの「生身の思い」に触れることができるのは、明大商学部の学生たちにとって、とてもありがたいことだと思います。「社長業」に対して抱いている漠然としたイメージを補うことができるからです。

 今回の「ブログ起業論」は半ば実験的な講義ですので、受講生のスキルもニーズも仮説だらけで始まりました。ですから、毎回素朴な質問や回答に触れるたびに、予想外の事実にぶつかるのです。講義後の質疑応答や、ブログへの書き込みこそ貴重なマーケットリサーチなのですが、実際のところ驚かされることばかり。のっけから当初の計画の変更や微調整を余儀なくされました。

 その意外な事実のひとつが、いわゆる商売人のお子さんが少ないことでした。中小企業の社長であれ、飲食店の店主であれ、明治大学商学部それもクリエイティブビジネスコースの受講者ということで、「あきんどの子供」が多いのではないかと予想していたのです。ひょっとしたら半分、少なくとも3分の1は、商売人のお子さんだと予測して講義概要を考えていました。

 しかし、実際には、ご両親が商売をしている受講生はわずか数人でした。つまり、ほとんどの受講生が、幼少の頃から間近に起業家や社長の背中を見ることなく、この「ブログ起業論」に参加しているのです。これではおそらく、中小企業やベンチャーの社長の悩みや喜びを具体的にイメージすることは難しいでしょう。

 具体的な「社長業」のイメージが無いままに「起業なるもの」に漠然とした夢と意欲を持っている学生たち....それが受講者の実像でした。かといって、私のような経験の浅い若輩者に「商いの道」を熱く語られても説得力はないはずです。

 ですから、経験豊富な先輩社長の生の声、「商いのこころ」をいかに伝えるかが課題だと実感しました。まさに、その難問の解決に、この「一問百答ブログ」が重要な役割を果たしてくれています。

ICT習熟度が低い受講生にそのありがたみを伝える

 もう一つ、この授業には問題がありました。意外にも、最新のICTツールを活用している学生が少なかったのです。

 授業計画に、ブログを使って起業体験をすると書いたので、当然、ICTについてある程度の知識や経験があると甘く見ていました。昨今の大学では、パソコンを使わなければレポートもできないとも聞いていたからです。個人的に友人たちと、ソーシャルネットワーキングやブログを楽しんでいるのが普通だと楽観していたのです。

 しかし実際には、ブログ経験者は五指に満たない状態で、ショックを受けました。それどころか、中にはICTに対して良くない印象を持っている人や、ブログを単なる日記としか思っていない人もいるようでした。

 このままでは、とてもブログなどを積極的に使ってくれそうにありません。いくら、高度なプログラム技術やITスキルが不要になったとは言え、ブログが「どんなに便利でありがたいものか」を体感してもらわなければ、積極的に取り組む熱意も生まれないでしょう。さらに、ICT技術は人間を疎外するものではなく、生身の人こそがICTの中心であることや、今後ますます人と人との交流が大切になることを体感してもらわなければなりません。

 そのためにも、受講生たちのブログの向こう側に、特別な読者がいること。そして、非日常な出会いや、どきどきする体験が待ち構えていると実感してもらう必要がありました。中でも、まだ見ぬオーナー社長にネットで質問をぶつけて、真剣に答えてもらえる「特別な体験」が、きっと役立つはずです。

1年後3年後に何が起こるか?何が残るか?

 様々な可能性を秘めた、明治大学商学部生と社長ブロガーの「一問百答」も、まだ5問めを数えたばかりです。授業はこれから1年間続きますので、おそらく30~40問の熱い問答が繰りかえされることでしょう。

 これから、学生ブログと社長ブログの化学反応で何が起こるのか楽しみでなりません。

 学生たちにとって、「社長はどう考え、どう意思決定するか」という様々な回答例に接することは、かけがえのない経験でしょう。中でも、自らの質問に答えてもらった学生の心には、その回答が、さらには回答の根底に流れる精神が、深く染み入ることでしょう。そして、感動した学生の多くが、答えを下さった社長のブログに感謝の言葉をコメント・トラックバックするはずです。

 お礼コメントを読んだ社長も、もちろん感銘を受けることでしょう。そこから学生と社長と1対1の対話が始まり、その会社のインターンになったり、さらには就職する道を選ぶ学生が出てくるかもしれません。生身の学生と生身の社長とが深くコミュニケーションする機会は、実際にはありそうでないのですから。

 また、学生たちの熱心な反応を意気に感じて、多くの社長が、さらに深奥なる回答を寄せてくださるかもしれません。こうした週1回の問答が、実は、社長のメッセージを伝えるのみならず、自らの夢や存在価値を再確認するプロセスであると予感しています。

 学生への回答ブログのカテゴリーに、「夢・経営理念」を選んでいる社長ブロガーが多いのも印象的です。学生たちへの熱いメッセージは、そのままご自身に、そして社員に贈るメッセージにもなっているのだと思います。

 また、この問答が1年分2年分と蓄積していけば、貴重な学習文献にもなるはずです。そのエッセンスを抜粋して、雑誌に連載したり、1冊の書籍にする企画も十分に考えられそうです。

 そんな日が来ることを夢見て、私も難問の回答にチャレンジしてみます!

 ▼経営者会報ブログ「明大生との毎週一問百答」
  http://editors.keikai.topblog.jp/blog/g/index.html