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 今回は(も)具体的な事例話ではなく,読者に不人気な抽象的話題です。でも,面白い視点から中流を見ていきます。

 マクロスコープ(微視的)とマクロスコープ(巨視的)の間にメゾスコープ(中間領域)があるのを知っていますか?大学時代の友人が物理学の教授をしています。先日,彼からメゾスコピック(Mesoscopic)の話を聞きました。ニュートン力学が記述するマクロ的特徴と,量子力学が描く量子の重ね合わせなどミクロ的特徴を同時に兼ね備えている揺らぎの世界です。

 この中間的性格のおかげで,量子力学という基礎理論から,いかにして客観的実在性をもつ古典物理学的世界が生まれるか?シュレディンガーの猫(ミクロの量子の世界で起きている摩訶不思議な現象がマクロの世界でも起きるという思考実験)に象徴される量子力学のパラドックスを解く鍵として,また,量子コンピューターなど新技術の土壌として期待を集めています。

 また,近年注目を集めているナノテクノロジーの舞台でもあり,工学の観点からも,非常に重要な分野となっているようです。

 マクロはマクロ経済,業界や他社の動きやミッションや戦略や目的に該当します。これに対して,ITの技術的な話やプログラミングはミクロにたとえられます。両者を兼ね備えるシステムエンジニアリングの対象世界は,揺らぎのあるメゾスコピック系と言えます。

 メゾスコピック系のカバーする領域は,アメーバのように拡大もすれば縮小もします。この揺らぎの世界は,経営と現場とITが重なり合う“中流”です。
 
 メゾスコピック領域では問題対象を整理・構造化して,問題(目的)モデルにします。そのモデルに対応した,解モデルを策定します。「問題モデルと解モデル」がシステムとして一体化しているイメージが必要です。「解モデル」には,ITプロセスを内包したビジネスプロセス・モデルのイメージもあります。

 メゾスコピック領域では問題が前提としてあるのではなく,解との関係で問題も変更されるダイナミズムがあります。コスト納期の関係で問題を変形させたり外したりすることもあれば,コンサル脳のWhyによる議論で問題が変容・霧散することもあります。「問題モデルと解モデル」の間には揺らぎの関係があり,行きつ戻りつしながら確定していきます。

 メゾスコピックな中流は,アメーバのように柔軟で揺らぎがある領域ですから,ユーザー(経営,現場)もコンサルもSEも参入します。今までは戦略上流からIT構築下流をブレークダウンしようとして,深く広いこの中流のギャップに泣いて来ました。

 ミクロ的なプログラミングはパズルを解くような面白さがあり,この経験がなければ,SEとしての大事な基盤は構築できません。コンサルタントのような業務をこなすSEにも,プログラミングの経験は必須です。それほどSEの仕事は広範囲です。

 ソフトウエアの難しさも機能要素の関連性の圧倒的な複雑性にあります。ソフトの中には多くの業務コンポーネントがあり,また多くのソフトがサブシステムを構成し,それらが全体システムを構成しています。全体の関連を頭の中に描き,影響関係を(詳細はともかくとして)押えられるのはSEの重要な特徴でもあります。

 次回はマクロなビジネス世界がメゾスコピックな中流で,どのような様相をしているのか?どう対応せねばならないかをお話しします。