PR

 先日、情報産業における官民のキーパーソンが集う勉強会で「ブログ道」のお話をする機会がありました。その講演後、名刺交換をした際に、あるメーカーの技術管理職の方から「イントラブログ(社内向けブログ)」の活用についてご質問を受けました。

 当然ながら、機密事項が多い開発部門の技術者が、ブログで安易に社外向けの情報発信を行うわけにはいきません。しかし、直感的にイントラブログならうまく使えるのではないかと思われたそうです。それも、単なる技術情報共有のためのブログではなく、もっと人肌が感じられる社内交流を目的としたブログ活用ができるのではないかというご質問でした。

 そこで私も即座にお答えいたしました。

「上司・同僚・部下が公私共々よく知り合い、仲良くなり、敬愛し合うのにブログは効果的です」

会社での自分と個人とを明確に分けたい

 今から15年以上も前、私は証券会社に勤務していたことがありました。もちろん上司から「飲みに行こう」と誘われたらほとんど断ることはありませんでした。幸い上司に恵まれたこともあって、楽しい思い出もたくさんあったと記憶しております。

 思い返せば、飲んで歌って、ざっくばらんに話すことで、お互いのもうひとつの顔、仕事以外の家族人、趣味人としての一面などを発見することができました。その結果、少しずつ縁が深まっていったと思うのです。また、お酒を飲んだ時の上司や同僚のさりげない一言から、働き方や生き方のヒントをいただいたことも少なくありません。

 しかし、ちょうど私より少し後輩、昭和40年代生まれの新入社員あたりから、こうした「飲みニケーション」を敬遠する傾向が少しずつ出てきたと聞きます。即ち、上司の眼から見れば、付き合いが悪い=使いづらい若者が出てきたわけです。

 この現象を、子供部屋個室世代による「個人主義の台頭」などと一言で言ってしまえば、それまでです。しかし、こうした傾向は若い世代にとどまらず、ひそかに先輩世代にも「飛び火」してしまったかもしれません。デフレの10年、降って湧いた能力主義やリストラで、団塊の世代が冷遇されたことも一因でしょう。部下に勢いよくおごれるような、懐具合でなくなってしまったことも遠因かもしれません。

 かくして「飲みにケーション」が下火になると期を同じくして、部下にも上司にも「仕事は仕事」「会社は会社」「自分は自分」という、心の区分が密かにできあがってしまったように思えます。

個人を大切にすると十人十色、一人十色になる

 しかし、行き過ぎた個人主義を嘆き憂いているわけではありません。かつての、会社一筋、滅私奉公、集団主義の姿ばかりが美しいとも思えないからです。

 むしろ、誰もがよく似た価値観・ライフスタイルを持つ「金太郎飴のような集団」になることは、高度成長期には有用でも、成熟期や新創業期には必ずしも望ましいとは言えないのではないでしょうか?これからは、経営理念や目標は共有しながらも、多様な個人の発想や創造性を生かす企業の方が、成長を遂げる場合も多いでしょう。年がら年中、会社や会社がらみのつきあいで拘束するよりも、「個人の自由時間」を適度に持たせた方が、むしろ「健全なやる気」が湧いてくるかもしれません。

 私事で恐縮ですが、先日地元の公立小学校の運動会を見学して驚いたことがありました。あいにくの雨天で土曜日から順延になり火曜日の開催になったのですが、なんと平日にも関わらずお父さんたちの姿が数多く見られたのです。わが子の運動会のために有給休暇を取る父親と、それを許す職場が増えたのでしょうか?

 いずれにせよ、会社一辺倒ではなく、個人や家族を大切にする傾向は進みつつあるように感じます。休暇が増え、会社のつきあいの時間が減れば、自ずと学生時代からの趣味や新しい興味にも心向かうはずです。会社での姿や立ち居振る舞いは「社風そのまま」であっても、いざ自分自身の時空に身を置けば「十人十色の多彩な活躍」をしている人も増えていることでしょう。

 今後、個人ブログを通じて自己表現をする人は、ますます増え続けると思います。その時、だれもが似たようなことを書いていたら、もちろん面白くありません。もしも30~40年前、誰もが同じようなファッションに身を包み、同じようなテレビ番組に興じていたころに「ブログ」があらわれたとしたら、今ほど多様な情報発信は見られなかったと思うのです。ひょっとしたら、今読んでいるユニークなブログ発信の主は、実は、みなさんの前に座っている何を考えているかわからない社員かもしれないのです。

 ですから、今はちょっと行き過ぎているかもしれない個人主義の台頭も、企業や個人の成長に必要な通過儀礼なのかもしれません。行き過ぎた個人主義も集団主義も具合が悪いとわかれば、あとは「塩梅(あんばい)」の問題です。独立自尊の精神で個々が生活の質を高めることと、チームワークを発揮して企業がさらなる進化をとげることとを、両立させるような新しい社内文化とツールが必要になるでしょう。

飲まなくともお互いを知り合えるブログ

 そこで役立つのが、各社員の個人ブログだと思うのです。わざわざ飲みに行って、酔っ払う。気を許してから、少しずつ自分のことを語り始める。...そんな面倒なプロセスを経ることなく、ブログを5分でも読めば、その人の趣味や最近の関心事を簡便に知ることができるのです。

 例えば、記事が整理保管されているカテゴリーや、おすすめのリンク集を見るだけでも、そのブロガー=部下や上司が興味を持つものやことなどについて知ることができるでしょう。また、プロフィールやバイオグラフィーを読めば、出身地・出身校など、意外な共通点を見つけることができるかもしれません。

 何より、最近のブログ記事を読み返せば、ここ1~2週間に起こった個人イベントや、感動の種を知り、共感することができます。この個人ニュースこそが、部下や上司に声をかける「最初の一言」に最適なのです。

 例えば、あいさつだけで済ましていたところを

「□□さん、ブログを読んだけれど、先日のコンサート、大成功だったらしいね。」
「○○さん、ブログを読んだけれど、ご長男、運動会の徒競走では残念だったね。」

と声をかければ、その後の会話も思わずはずむはずです。

 最近は、私も、社内外で「ブログを読みました」という一言をいただくことが多くなりました。そう言われますと、もちろん悪い気はいたしません。一個人としては、実のところ、会社のホームページ以上に自分の個人ブログが大切なのです。その個人ブログを褒められることは、即ち生身の自分自身を褒められることでもあるので、これほど嬉しいこともないのです。

特別な社内システムは不要

 お互いのブログを見合い褒めあうという、シンプルながら効果てき面の社内コミュニケーション活性化プランを実現しようと思った方は、ぜひご安心ください。このプラン実現のために必要な新規投資や追加投資は、実はほとんどありません。

 自社専用の特別なイントラブログを、わざわざ社内サーバーで始める必要もありません。各個人が、それぞれ自分で無料サービスなど使って勝手に始めている個人ブログをそのまま活用してもらいます。中には匿名ブログもあるでしょうが、それでも良いのです。

 むしろ、会社専用のイントラブログで自己紹介を書けといったら、誰もが自分を飾ったり、本音を語らなかったりするかもしれません。積極的に参加するというより、嫌々書かされている感覚をおぼえる人が多くなるおそれもあります。ですから、個人が好き勝手に自宅で書いているブログこそが、実は各人の「生きた姿」を伝えるのに好適なのです。

 ですから、部内単位で「飲みニケーションがわりのブログコミュニケーション」を広め深めるのであれば、必要なのは「部長の一言」「ブログアンケート」「ブログ一覧表」ぐらいなのです。

 まずは部長が、ミーティングの場で、「部内コミュニケーションを楽しく活発にするために、お互いのことをよく知りましょう。個人ブログをやっている人で公開しても良い方はURLを教えて下さい」と宣言します。

 そして、メンバー全員に、名前と個人ブログのURLだけ書き込めるようなアンケート票を配って、その場で回収します。もちろん、強制はせず希望者だけで良いでしょう。その集計結果を、表計算ソフトで一覧表にして、後は社内でメール回覧すれば良いのです。そうすれば、部内個人ブログ一覧表ファイルを、デスクトップに置いて開けば、いつでも、メンバーのブログを見ることができます。

 さらに、月に一度の会議で、部長が読んで楽しかった「月間MVPブログ」を発表いたしましょう。なるべく仕事に無関係なテーマで書かれた楽しいブログ選ぶのがお勧めです。もちろんMVP以外にも、面白い賞を考えて複数のメンバーを表彰すればもっと盛り上がることでしょう。

 飲みにニケーションで部下におごる代わりに、ちょっとしたプレゼントを自腹で買ってもいいはずです。堅苦しく重苦しくなりがちな部内の会議も、互いのブログを褒めあう「この時ばかり」は盛り上がりそうです。

 もし全社的に「社内交流のためのブログ回遊」を広めるならば、各部門のブログ大賞を社内報で表彰ブログともども紹介すれば良いでしょう。その個人ブログを褒める部長のコメントつきで紹介されれば、なお効果的です。

社内では書かない。ただし決めた時間に読んでもいい

 ここまで書くと、貴重な会社の時間や資源を、個人ブログに費やすのは許しがたいという方もいらっしゃるでしょう。

 たしかに、個人の楽しみでもあるブログを会社で勤務時間中に書くことは、当初は禁止した方が良いかもしれません。しかし、仲間の個人ブログを回遊する10分~15分については、検討の余地があるでしょう。緊張が続く1時間半~2時間の合間のスキマ時間10分~15分に、息抜きを兼ねてそれぞれのブログを読む時間を作っても良いはずです。また、社内の会議や根回しに行く前にブログをチェックことを認めるのも良いでしょう。

 ブログを読むわずかの時間の損失よりも、ちょっとした人間関係のこじれや好き嫌いで、会議や合議に時間がかかる方が「もったいない」のです。また、部門内であれ部門間であれ、お互いの信頼関係が築かれていないと「悪い情報ほどリーダーに届かない」悲劇が生まれます。

 そう言えば、社内を半日ぶらぶらしながらメンバーに声をかけ、雑談をしながら、会社の問題点や、新しい提案をキャッチするマネージャーもいるそうです。雑談を交わしているように見えて、実は社内の情報交流と活性化を促しているのです。

 言うのは簡単ですが、この「ぶらぶらマネージャー」を実践するのは大変です。常にメンバーに愛され、メンバーのプライベートなことまでも記憶して気遣いすることが必要になるからです。

 そんな特別な心配りができなくとも、毎朝、ひそかに部下のブログを眺めておき、その話題で1人ずつ声をかけることはできるはずです。そんな「ブログ発の一言」で、きっと気さくなコミュニケーションが生まれるでしょう。そして、そんな毎日の積み重ねで、いつしか「和やかな社風」が生まれ、会社に行くのが楽しみになるような「コミュニティー」が育つと思うのです。