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 システム・エンジニアリングでは,森羅万象や曖昧で複雑な世界を対象とします。対象全体の構造や要素の関係性を明らかにし,現象の奥に隠された本当の問題や原因を抽出し,浮かび上がらせて定義し,その最適なソリューションを,これまたシステムとして組み立てていきます。

 対象が偶有性に富んだ人間系の世界ですから,立場ごとに対象は異なって見えます。経営ニーズや個々の現場ニーズをすり合せ,対立点を超越した一段高いレベルでの弁証法的合意形成も必要です。人間や組織を核として,様々な要素を全体として一つの目標に統合しシステム化することですから,マクロ的世界の取り扱いには,折衝力や政治力のような人間臭い作業も必要です(複雑多様な要素の組み合わせは,マクロからミクロに一貫として流れる共通部分ですが)。

 戦略性が高まり経営に近くなれば,ITに求められるニーズは漠然とした曖昧なものになっていきます。これを的確に把握するのは難しい。経営者自身も完璧に分かっている訳ではないのです。

 細部を知っていることはもちろんのこと,全体的なバランス感覚も必要です。好奇心があり,色々な分野に広く興味を持ち,俯瞰的な視野や柔軟な発想力も求められます。部分の専門家に埋没しないこと。ここらが,今までのテクノロジドリブンSEにとって難しい部分です。

 SEが上流のビジネス工程や要求定義工程をこなすためには,幅広い知識が必要です。既存知識の新しい組み合わせが結晶性知能としての創造力です。組み合わせるベースになる知識が枯渇していれば創造力なんてゼロです。色々な種類の本を読んだり経験を蓄積したりすること。

 構築に必要な知識は多くはありません。しかし,その知識をうまく使って,現場で臨機応変にチーム開発に活かすスキルは,多分,暗黙的な経験知のようなOJT(On-the-Job Training)でしか身に付かないスキルです。

 それらは,経験的な現場スキルであるが故,あるレベルに達したら,こなしていけます。SEの多くは,どうもそこで満足し停滞してしまい,新技術の勉強はするも,新たな広範な勉強をしない嫌いがあります。

 もう一段向上し,メゾスコピック領域で活動するには,現場で獲得不能な知識を触媒にし,今まで獲得した現場の暗黙的ノウハウをすり合わせることで,暗黙的ノウハウを整理体系化し踏み台にしなけばなりません。ミクロである緻密詳細な虫の目と,マクロである俯瞰的な鳥の目の融合です。

 鳥が虫の目を持つより,虫が鳥の目を持つ方が容易です。ビジネス“中流”のキーワードは,多様な視点の融合です。

 このようなアナロジは,過度にわたると危険ではありますが,“中流”の難しさと面白さをイメ−ジさせてくれます。