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 ビジネスモデルとは何か。一言でいえばビジネスの設計図である。

 ビジネスは設計(デザイン)されるものである。その設計図がビジネスモデルであるといえる。機械や建物を作るとき,通常は設計図なしに仕事することはない。それに比べ,往々にして経営やビジネスの世界では,明示的にデザインするという意識が希薄ではないだろうか。

 このビジネスモデルという言葉は,多くの人が色々な意味で使っている。一時はビジネスモデル特許がビジネスモデルであるような解釈の時期もあった。現在徐々に,本来の意味であるビジネスの設計図としての意味で使われるようになった。しかしながら相当その範囲は広く,未だ決まった定義がない。

 設計図というものはその基礎に標準的な表記法が定められ,それに基づいて記述されることによって多くの人が共通の認識,理解を持つことができる。代表的な例は三角法や一角法による機械製図であり,これは国際的な標準として確立している。言語による注記を除けば,世界中の機械技術者はこれを完全に,正確に理解することができる。したがって図面を入手すればそれを完全に複製できるともいえる。昨今の中国への金型図面流出騒ぎは設計図の価値を証明している。むろん実際は,複雑な機械では図面だけでは完全に複製できない。電気の分野でも配線図という表記があり,電気回路は世界中共通的な記述がある。

 このように技術の分野では設計という仕事は確立しており,その記述方法も分野ごとに確立している。技術分野の設計図というものは,いわば二次元の言語である。ただし,機械設計では,CADのおかげで3次元の表記が標準になりつつあるが。この設計言語の共通的な表記が20世紀後半の工業文明の繁栄を実現したといえる。

 ビジネスの分野ではこのような標準として確立した表記法はなく,基本的には自然言語を用いた記述,もしくは一般的な図解・表を用いて目標や行動計画や評価を記述し,ビジネスに関係する組織内,および顧客やサプライヤのような組織外の関係者と認識を共有し,目標を共同で実現する活動を行ってきた。

 むろん経験的に有効な表記法も開発され,ビジネスの現場で利用されてきている。とりわけ米国のビジネス界ではビジネススクールという,ビジネス管理者の教育機関がある種の標準的なビジネスのプロトコルを確立し,これが実業界において共通のコミュニケーションを促進し強化してきた。これは経営管理者の移動を容易にし,外部から登用された経営者が短期間で,事業の状況を把握し,新しい経営戦略や事業計画を従来からいる社員に正確,的確に伝えることを可能にした。

 これに反し,わが国におけるビジネスコミニュケーションは,極めて各企業特有の言語表現やプロトコルに依存し,仲間内以外はコミュニケーションが困難である状況であった。加えて言語を持たない文明のように,組織内でも,必ずしも正確にビジネスモデルが共通認識となっておらず,各組織,各人がそれぞれ己の認識を基に行動するという企業活動が一般であった。

 このような言語を持たない文化は,緩やかな環境変化には追従できるが,急変する環境に組織が対応するには極めて困難である。これが90年代,急激にグローバル化する経済環境の中で,日本企業が敏速な対応をとれず,それまで欧米やアジアからその成功を畏敬されてきた状況から一転して反面教師の状況に陥った大きな要因である。

 冒頭に述べたように,ビジネスはデザインするものである。ビジネスの設計図がビジネスモデルである。経済環境がグローバル化し多様な文化や社会的価値に経営は対応する必要がある。現在は,終身雇用制で固定的な組織や構成員で事業をするのではなく,デザインされたビジネスモデルにふさわしい才能を集め,短時間でその目標を達成する必要がある。

 21世紀では,ビジネスモデルは必須である。