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 突然ですが、「朝イチ」といえば何時頃だと思われますか?「今度また飲みに行こうよ」と言ったらいつ頃のこと?本当に行く気ありますか? 「暗黙の了解」ってありますよね。わざわざ説明しなくても、仲間うちでは当たり前となっているような、考え方や行動の仕方。この辺りにあまりに鈍感だと、ちょっと困りものかもしれません。

 時間の感覚や、服装、会議の場で配慮すべき事柄(上位職の意向に沿う、積極的な反対意見、独自性、とにかく何かしゃべる、沈黙は金etc)、情報の伝達経路(上位職から階層的に、職位に関係なく一律にetc)、意思決定時に重視される価値(権威、収益性、安全性、スピード etc)などなど、その組織のひとのなかで自然と共有されている流儀がありますよね(関連記事へLINK)。会社や部署、プロジェクトなど自分が所属する組織はもとより、お客様企業や、協業する様々な組織の人たちにとっての「暗黙の了解」を理解しておくことは、意外と重要だと思います。

提案や協業、常駐ビジネスでも。

 例えば、お客様へ提案をするとき。(1)先ず提案内容にピン!ときていただき、(2)次に「これでいこう」と決めていただき、(3)いよいようまく導入し利用していただくために、それぞれのフェーズでお客様の組織文化(暗黙の了解)にフィットするような工夫をされているでしょうか? 安全性を重視する文化のお客様企業に、「ちょっと不安な部分もありますが、ものすごく早く導入できます」と提案をしても納得してもらえそうにないですよね。また、早い仕事にこそ価値があるという文化の人たちとの協業で、「念には念を」とじっくり着実に進めていると、イライラされるでしょう。

 何でもかんでも相手に合わせるというわけではなく、「暗黙の了解」を知っていれば、相手にとって気になるところを押さえながら、スムーズに業務を進めることができそうです。お客様先に常駐するビジネスの場合にも、先方組織に深く入り込むことによって、先方にとって受け入れやすい内容や進め方(暗黙の了解)を察知して仕事を進められるところが、強みの発揮しどころですよね。

ITソリューションで「暗黙の了解」を変える?

 ところで、風土改革とか変革という言葉を職場でお聞きになったことのある方も大勢いらっしゃると存じます(もしかすると何度も?)。組織で変革が叫ばれるのは、「暗黙の了解」の中身を変えようとしているということかもしれませんよね。この変革がうまくいかない原因のひとつは、もともとの「暗黙の了解」とそうなってきた経緯を深く理解して手を打つということなく、別の価値観に基づくものを導入しようとするところにあるように思います。

 組織には目的があって、その組織が社会環境のなかで生き延びるためにとってきた、やり方があり、公式のルールや「暗黙の了解」は、それらにフィットするように段々とつくられ浸透してきたものですし、その経過がメンバーの間で共有されているために、あえて説明しなくても当たり前となっているのですね。そして、この「暗黙の了解」のなかに、その組織がこれまでうまくいってきた源泉があるはずですよね。

 中には今となってはうまくいかないものもあるので、変革が唱えられるのですが、変えるべきところと変えてはいけないところ、特に後者をしっかり把握して進めることが肝要だと思います。ITソリューションによって、業務の仕方やビジネスを変えるのも同様ですよね。一般的な理屈どおりにシステムを導入したとしても、その組織にとって重要な何か(目に見えないものかもしれません)が機能しなくなっては、ビジネス全体としてうまくいかなくなる可能性もありますので、ビジネスそのものとそれを支える「暗黙の了解」の理解が大切でしょう。

IT企業同士の「M&A」も要注意。

 企業の合併などのときも、「暗黙の了解」の見えない力に充分な注意が要りそうです。組織文化については事前に調査されるはずですが、同じIT業界の企業同士でも、社員のなかで共有されてきた歴史と価値観、行動パターンなどが大きく異なる場合は、組織や制度を新たに整備したとしてもなかなかしっくりこないことを、すでに実感されている方もおられるかと存じます。特に「ソリューション」や「サービス」を提供するビジネスでは、人間の行動そのものがその中心ですから、重大な課題です。なるべく短期間で組織文化(暗黙の了解)を融合したり、異なることによる相乗効果を発揮してこそ、合併の効果があるというものですよね。

 また、情報サービス企業にはユーザー系といわれる企業も多いのですが、親会社からの出向などの形態で参入する人も、出身の業界や企業の「暗黙の了解」が無意識のうちに身についておられるので、それがIT業界や該当企業と相性がよくないと、そのままでは、うまくいかないことがあるかもしれません(系列企業同士は似た文化も多くみられますが)。お互いの理解と共感の重要性は言うまでもありませんが、良かれと信じてきたやり方がうまく機能しない可能性もありますので、特に権限を行使する立場にあるときは、どうぞお気をつけて。

 「暗黙の了解」の中身や経緯とその影響力について、もしも、あなたがこれまであまり意識してこられなかったとしたら、これらのことにちょっぴり敏感になられると、あなたも周囲もすこし仕事をしやすくなる、かもしれませんね。

 それでは、今日もイキイキ☆お元気に。