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 前回ご紹介した教育プロジェクトで不思議だったのは,IT企業から参加した見習いプロジェクトマネジャ(PM)が常駐ではなかったことです。メールとか週1回程度の参画だけで,プロジェクトが本当に回っているかどうか分かるんだろうか?私だったら,絶対できません。プロジェクト参加者の顔色を見たり,レビューでのしゃべり方を聞いたりしないと。成果物を前にしない進捗会議なんて無意味です。

 IT企業から参加したPMは,PMBOKやEVMS(earned value management system)にこだわリ過ぎているように感じました。そんなメソッドが,本当に効果的なのか?こんな小さいプロジェクトにEVMSが効果を発揮するとは到底思えない。

 開発規模が小さければ,問題は圧倒的に少ないのです。開発規模が大きくなると,要素の関係による複雑性は幾何級数的に増加します。だからできるだけ疎なサブシステムに分割します。その極致が,共通インターフェース上でコンセントに繋げるように作るモジュラ型です。パソコンがその代表です。ソフト開発は本質的に擦り合わせですから,疎のモジュールに分解するのは困難です。だからPMBOKやEVMSのようなプロジェクトマネジメントのツールが必要になってきます。

 しかし,このような小さいチームへのEVMS適用は,害あって益なし。彼ら生徒をキチット見ていれば,EVMSから取得できる100倍のプロジェクト情報が取れます。

 もっとモノ作りの喜びを生徒に味わわせてほしい。ゲームのように作りたいものを作らせてほしい。PMBOKのようなリスクマネジメントのメソッドやツールが日本に導入されてから,この業界はリスクに及び腰になる風土に変わってきたように感じます。

 リスクはヘッジするものでもあるし,テイクするものでもあります。リスクテイキングは,若い人にとってはチャレンジと同じです。勇気やモチベーション,成功体験やワクワク感があるから,身の丈を超えるモノにぶつかっていけます。成功しても失敗しても身の丈は成長します。

 危険から逃げれば,危険はモンスターのように襲ってきます。人生最大の悲惨は何一つ危険を冒さないことにあります。危険を冒さぬ人は,何も成し得ず何も手に入れられず,何もない人生を送る。危険に身をさらさなければ,苦しみや憂いは避け得ても,学び,成長し,変革していくことができない。危険に対して及び腰でいる人は,自由を剥奪(はくだつ)された奴隷のようなもの。

 短納期・低利益かつ難しいプロジェクトの毎日。少しでもミスすれば,挽回できないまま一気に赤字プロジェクトになり,まわりから責められる。ワクワク感や挑戦する勇気や意欲なんて,現在のSEを取り巻く環境では死語のようです。「問題を発見させながら,解決案を考えさせる」,そんな動機付けを与えることがマネジメントなんですが,余裕はありません。

 今回の教育プロジェクトにIT企業から参加したPMの人達が問題だったのではありません。私を含めたシステム・インテグレータの現実,SEを取り巻く余裕の無い現実が,この産学連携実践プロジェクトにも投影されていたということです。リスクマネジメントを重視した今回のプロジェクトを終えて,学生達はSEになりたいと思うでしょうか?ITサービス産業に入りたいと思うのでしょうか?

 逆に,SEが面白いところはどこなんだろう?その基本技術はプログラミングです。プログラミングが嫌いな人は,SEなんてはなから考えません。私も最初ロジックを考えるのはとても楽しかった。でも,それだけで続きません。

 次回は,SEの仕事について考えてみます。