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 ITに関して,日本は完全に輸入超過です。超過という生やさしい状態ではありません。9割のソフトウエアを輸入しています。ITベンダーの社長同士のあいさつは「いい人いませんか?」です。人手を欲しがるのは,日本のIT業界の実態が多段階・下請構造という日本独特のIT人材派遣業という業態だからです。日本人には創造性がないから,こんな女衒のような恥ずかしいピンハネ・ビジネスモデルが羽振りを効かせているのでしょうか?

 日本人に独創性がないと決め付けるのは欧米の洗脳だ!と,「国家の品格」の著者の数学者藤原先生が言っていました。確かに数学の世界,特に数論や代数幾何学では,日本はトップクラスです。フェルマーの最終定理は,1995年にワイルズが完全制覇したのですが,直接解いたのではなく,谷山志村予想の一部を解いたのです。その時,岩澤理論も重要な役割を果たしました。

 ソニーのトランジスタラジオやウォークマンやトリニトロン,ホンダのシビック(排ガス規制対応車)やマン島TTレースやF1参戦は,まさにハイリスク・ハイリターンです。日本人がというよりも,属する組織や会社というコミュニティの文化土壌の問題でしょう。現に,ソニーは偉大な創業者が去って普通の会社になってしまい,その後,魅力的な製品は出ていません。

 このIT業界には派遣業と受託開発と商品開発の3業態が混在しています。他とは違うポジションにいる商品開発を除けば,圧倒的少数のプライムコントラクタと,茫漠(ぼうばく)たる量の下請群が渾然一体となった,システム・インテグレータの世界です。任意のプロジェクトチームは,プライム,下請け,孫請けが混在し,優秀な職人もいればモラールや技能の低い人間もいます。給料のもらいどころも様々です。

 プライムコントラクタにはプロジェクトの管理責任がありますから,プライムの正社員が任務としてプロジェクトマネジャ(PM)を担当します。しかし,プライムの正社員に必ずしもPMに相応しい力量があるわけではありません。ですから,寄せ集め集団のプロジェクト要員の忠誠は,プライムの正社員ではなく,力量のある実質的なリーダーに向かいます。ほとんどのプロジェクトチームには,こうしたネジレ構造が内包されています。

 そんな実質的現場リーダーは職人です。人望もあり尊敬もされ,仕事の責任感もあります。裁量権もあるから,不満は口にするけど,そんな自分に誇りも少し感じています。しかし,優秀な人間はそんなに多くありませんから,いつも忙しく,自分の生活を犠牲にしています。忙しくて犠牲になっていることも,ネジれてはいますが自慢です。ITベンダーの経営者は,腫れ物に触るように現場リーダーを扱います。彼がいるから飯を食えているからです。

 でも,システム・インテグレータの世界は景気循環型の労働集約産業です。需給関係がタイトな今は,猫の手も借りたい。プロジェクトチームの平均スキルは急降下。しかも「短納期」「低利益」「複雑な新技術」の組み合わせで,プロジェクト難度は逆に上がっています。優秀と言えども実質的な現場リーダーも人間です,ピークアウト寸前です。経営と現場の擦り合せができていない曖昧なシステム仕様書(要件書)で,さらに現場は振り回されます。

 昔,コンバットという戦争TVドラマがありました。サンダース軍曹はまさに八面六臂の大活躍でしたが,戦術を担当する少尉もいました。残念ながら日本の組織は一億総軍曹なんです。ミドルだけで比べたら,日本は世界一だと言われています。その分,戦略や戦術を担当する少尉以上の司令官や参謀は,比較にならないくらい劣悪です。ハンモックナンバーって知っていますか?兵学校の卒業成績順位のことです。日本軍の階級昇進は全てこのハンモックナンバーに基づく序列に従っていたのです。白兵戦に強い戦闘現場は,間違った作戦を敢行していたんです。


悪しき現状を打開するにはSEが中流を目指すしかない

 システムインテグレータの世界では,強い現場の属人的な強みを活かすのではなく,米国型リスクマネジメントで一律に押さえつけるような管理が広がっています。ワクワクする喜びは減り,現場の裁量権も減少しています。

 現場型の属人的な職人リーダーの代わりに,トップガンで将校を養成しようとしています。一見うまくいきそうですが,サンダ-ス軍曹が少なくなって,現場がうまく回るのでしょうか?作戦をどのように実行するかを担当する現場下士官(軍曹)と,戦略戦術を担当し作戦を立てる少尉とではミッションが違います。

 システムを構築するSE軍団は,軍曹以下の現場戦闘集団です。リーダーである軍曹は何を作るかの作戦指示書(要求定義書)を理解していますが,指示書の内容には責任がありません。指示書の作成は少尉や将校の仕事なんですが,彼らは戦闘の経験がない。このため指示書の内容は曖昧です。

 現場で必死に戦闘しているSEリーダーは,曖昧な作戦指示書にいら立ちを感じながら,矛盾や非整合のままでは戦闘(構築)できませんから,指示書の変更を求めます。しかし,SEリーダーの責任範囲は限定されています。現場や戦闘を知らない参謀(コンサルタント)が策定した頭でっかちな作戦命令書で,白兵戦に強い現場が戦局を打開し,勝利に導いて行けるのでしょうか?

 作戦命令書は自分のマターではないとSEリーダーが考えていても,生死の危険がない安全な場所から戦闘を見て,「アーデモナイコ-デモナイ」と御託を並べるハンモックナンバー・コンサルに憤りを感じるのは自然です。だからこそ,この悪しき現状を打開して,情報システムの成功率が3割を超えるためには,「ITを体で知っているSEが経営中流を目指してビジネスドリブンSEになってくれる以外にない!」という信念を私,トナチャンは持ち続けているのです。

 私はSEでした。40以上のプロジェクトに係わり,一切失敗させなかった自負がある現場リーダーでした。トヨタのトップディーラーに作った中古車オンライン・システムは,昨年トヨタ自動車版にリプレースされ,その寿命を終えました。何と25才!以上のご長寿。そのトヨタ自動車版の最初のバーションも,20年近く前,私がトヨタ側リーダーとして,富士通,NECと一緒に作りました。ですからSEには愛憎が強いのです。今後も,SEの諸君に嫌われても「中流を目指すことの重要性」を叫び続けます。