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 6月11日から6月16日まで,恒例のMicrosoft TechEdがボストンで開催された。TechEdは,マイクロソフト最大の技術カンファレンスで,年に1回,世界各地で開催される。最初に開催されるのはもちろん米国である。私が今まで参加したのは,オーランド(フロリダ),ニューオリンズ,アトランタ,サンディエゴ(カリフォルニア)で,いずれも暖かい地域であった。ボストンのような北部都市で開催されるのは珍しい。ちなみに,日本では例年8月にパシフィコ横浜で開催される。今年は8月29日からである。

 既に報道されているとおり,今回の基調講演にはMicrosoftの最高技術責任者(CTO)であるRay Ozzie氏が登壇した。その内容は別の記事(「インターネット上の先進的なサービスを企業システムに取り込む」---米MSのOzzie最高技術責任者の基調講演)に譲るが,ボストンという街で行われたということで,個人的には感慨深いプレゼンテーションであった。

 Ozzie氏は「断絶的な進化」の例として「ミニ・コンピュータ(ミニコン)」を挙げた。ご存じない方も多いだろうが「ミニコン」は,低コストと高管理性を武器にコンピュータ市場を拡大し,一世を風靡した。ミニコン市場を作ったのはDigital Equipment社(DEC)で,他にData General(DG)社などが追随した。ただし,ミニコン市場はPCによって事実上崩壊し,DECはCompaqに買収され,Data Generalはオムロンに買収された。

 DECの本社はボストン近郊のメイナードという街である。DGはDECのエンジニアがスピンアウトして作った会社であるためか,やはりボストン近郊に本社を構えたようだ。

 さてご存じのように,Ozzie氏はLotus Notesの開発者である。Lotus Notesの原型はイリノイ大学のPLATO Notesであるが,そのPLATO Notesは,Lotus Notesとは別にDECによりVAX Notes(さらに後にはDEC Notes)として進化した。VAXはミニコンのベストセラーマシンで,UNIXのほとんどのバージョンを育てている。ただし,Ozzie氏自身はDECではなくDG社に勤務した。そういうことで,Ozzie氏も長らくボストンに住んでいたようである。Ozzie氏の前の会社Groove Networkもボストンにあった。

 ボストンは,米国では最も古い街の1つで,今でも町並みはヨーロッパ的である。しかし一方で,多くの大学を抱え,先進性も持ち合わせている。隣のケンブリッジにはマサチューセッツ工科大学やハーバード大学がある。バークリー音楽院もボストンである。また,ボストンのあるマサチューセッツ州では同性愛者の結婚が許されている。そもそも,ボストンは“New England”地方というように,イギリスから新天地を求めて渡ってきた人たちが作った街である。先進的なのは当然かもしれない。

 ボストンで生まれ育った技術が,マイクロソフトにどのように影響するのだろう。実際には,生まれ育った土地の影響は大きくないのかもしれないが。ところで,マサチューセッツ州は公式文書の保存にMicrosoft Word形式を禁止する決定を下している。そこで,次期Office製品の一部となるGrooveの開発者が基調講演をしたのも皮肉な話である。