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 前回から、影響力の技術として、「返報性」を利用する方法の具体例を説明しています。営業部門と十年以上に渡り対立していたシステム部の関係を改善した西島。彼はどのような方法を使ったのかを説明したいと思います。

西島が持っていた知識

 西島は、最初から何かよい考えがあったわけではありませんでした。しかし、「組織はなぜ対立するのか」、「人はなぜ対立するのか」について興味をもっていました。

 東京に行きたかったのは、営業部門の人々が、どのように行動しているのかを知りたいという好奇心と、何とかして関係を改善してシステム部の仕事をやりやすくしたいという気持ちだったのです。

 彼は、学生時代、東京の私立大学の心理学部で社会心理学を専攻していました。そして、「人間の行動とマネジメント」のゼミで教授の小西に非常に可愛がられ、多くのことを教えてもらっていました。

 小西教授は、「何で部門は対立するのか」などについて明確な主張をもっていました。教授は民間企業でマネジメントを長く経験したあと、マネジメント論を体系化し、有名になっていました。それから、会社を辞め、大学教授になったという経歴をもっていました。

 西島は、理論と実践の両方をバランスよく持っている小西教授にさまざまなマネジメントテクニックを大学時代から教えてもらっていました。

 西島が卒業して、会社に入ってからも、西島は壁にあたると小西教授に連絡し、コーチングを受けていました。西島はあきらかに人をマネジメントすることにおいて、他の人間と違う知識をもっていました。それは、小西教授との関係に負うところが大きかったのです。

小西の気づきと行動

 西島が東京に赴任してしばらくして、小さい事件がおきました。名古屋の富山から、「問題が起ったので、営業企画課長の矢野に説明をしてほしい」との依頼を受けたのです。

 富山に話を聞くと「名古屋のシステム部の担当者が、営業部門の若手からきたシステム化案件に好ましくない返事をして、矢野を怒らせてしまって苦情になっている」ということでした。

 早速、西島が詳細調べてみると、以下のことが分かりました。

(1)営業企画課の若手社員が、上司である課長の矢野から「営業マンが使う見込み客検索用地図システム」をシステム部の若手社員に「導入したい」という申し入れをした。

(2)システム部の若手社員は、これをどう判断して分からなかった。そこで、断りたかったので「このようなものは、効果があるか疑問なので、導入はいかがなものかと思う」という旨のメールを若手社員に返した。

(3)メールを受け取った若手社員は、課長の矢野を含む営業企画の全員にこの返信メールを転送した。

(4)メールを受け取った営業企画課の全員が怒って、矢野がシステム課長の富山に苦情の電話をした。「システム部の人間に、営業のミッションをとやかく言われる筋合いはない」と激怒して電話をかけてきた。

 西島は、この話を聞いて、不審に思いました。このような話は、過去にいつも起きているのです。そして、東京にいることを利用し、営業部門の若手と段々仲良くなり、酒をのみにいくようになると、彼は矢野をはじめ営業部門の人間は、いつもシステム化案件を通すために、この手を使うことが分かってきました。

 つまり、最初からシステム部の不手際を責めるつもりだったのです。

 「なるほど」と西島は思いました。小西教授がよくいっていたことを思い出したのです。

「人は、ミッションを帯びるとその遂行のために行動する」

 とくに、システム部のような間接部門と違って、営業部門はインセンティブが働きやすい組織です。評価されるためには、ミッションを遂行しなければならない。そして、ミッションを遂行するためには、人的リソースやシステムリソースが必要になります。これをどんな手を使っても取りにいくことが、営業部門としては当たり前の行動であることが分かりました。

 当たり前にシステムリソースを取りにくる営業部門と、簡単には渡さないシステム部。でも、必死さ、貪欲さで上回る営業部門は、常に強引に行動するということが分かってきました。

 西島はこれを理解し、自分の次の行動を考えることにしたのでした。では、西島は何を考え、どういう行動を行ったか。これについては、次回に説明しましょう。

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