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 「今後3年間、(コンピュータ)事業の売り上げを毎年2ケタ成長させ、営業利益率を2ケタ台にする」。NECがこの4月に新設したITプラットフォームビジネスユニットの責任者になった丸山好一執行役員常務は高いハードルをクリアする意気込みを語った。

  NECはこれまでハードはハード、ソフトはソフトの責任者(執行役員常務)をそれぞれ配置していた。だが、2つの事業をバラバラに運営していくと非効率になると判断し、統合したのがITプラットフォームBU。もちろんSIサービスを支える技術力と製品開発を強化するためだが、背景にはソリューション事業に走りすぎ、自社製品の開発や販売が希薄になったことがある。

 ITプラットフォームBUは大型サーバーや周辺機器を担当する第一コンピュータ事業本部、PCサーバーのExpressやワークステーションを担当する第二コンピュータ事業本部、ミドルウエア製品などを担当するシステムソフトウェア事業本部、サーバー用プラットフォーム・ソフトやデータベース/ストレージ用ソフトなどを担当するコンピュータソフトウェア事業本部の4つの事業本部と販売推進部隊で構成する。連結子会社を含めた要員は5000人近くになる。

 だが、ハード/ソフト事業はやや苦しい状況にある。05年度のサーバーやストレージなどのハード(コンピュータ・プラットフォーム)は前年度比2%減の4899億円、ソフトは同3.8%減の1028億円だった。丸山氏はこれらすべてを担当するわけではなく、出荷金額で4000億~5000億円が担当範囲だという。

 仮に事業規模を4500億円とすれば、年率10%成長なら3年後に6000億円程度になる。このうちネットワーク系ソフトやストレージ用ソフトなどを含めたソフト(上記のカテゴリとは若干異なり、社内向けなども入っている)の売り上げを05年度の約2000億円から08年度に3000億円に引き上げる。つまり、ソフトを1000億円増やし、価格競争の激しさを増すハードは500億円の上乗せという計算だ。伸び悩むハードを伸ばし、あらに5%強(ハード3%、ソフト15%程度)と見られている営業利益率を、10%台に引き上げるのは容易なことではない。

課題は技術力より戦略とマーケティング

 年々売り上げを減らしているハードの中で、サーバーとストレージの合計売り上げは05年度に約1600億円。メインフレームACOSなどNEC固有技術製品やUNIXサーバーが落ち込む一方、Expressなどオープン系製品が増加したことで、なんとか横ばいをキープできたという。金額で約6%増、台数で2ケタ増のExpressの健闘だけが目立つ。ただし、無停止など独特の製品があるものの、デルやHPなど競合会社との販売競争は激化する一方である。デル日本法人のジム・メリット社長は「エンタープライズ領域で競合するITベンダーはIBMとHPだ。NECや富士通はクライアントのところで競合する」と語っており、サーバー市場でNECの存在が薄くなっているのかもしれない。

 だが、丸山氏は「ITプラットフォーム事業のキーは技術力だ」と見る。「米EMCなどアライアンス先から高く評価されているし、当社の技術者にはIBMやサン、インテルの技術者に引けを取らない技術力がある。だから『自信を持ってやれ』といつも話している」(同)。問題は、戦略とマーケティングが弱いことだ。ここを補強するのが販売推進部隊の役割になる。ソリューション事業にシフトしたことで、NEC製品にこだわらないでSIを展開したことも1つの要因だろう。

 自社製品販売強化の具体策は3つある。1つは、05年度に少なかったNEC製品を使った大型案件の受注に力を注ぐこと。もう1つがサーバー製品(NXとExpress)とソフトプロダクトの売り上げ目標を、国内営業の支店と2つの業種ソリューション部隊の事業部門ごとに設定し、管理する仕組みを導入したこと。「握り」だ。

 そして、3つ目が支店や業種ソリューションの営業、SEと開発部隊(ITプラットフォームBU)の連携を密にさせること。「顔見知りがいなくなった結果、営業が工場(開発部隊)に気軽に問い合わせできなくなってしまった。性能をどうするのか、どんなシステム構成にするのか、といったことを工場に直接声をかければ直ぐに回答する体制を整える」(丸山氏)。社内の営業やSEから見た問い合わせ窓口の一本化である。これも、他社製品を含めたソリューションに走った結果から発生した課題でもあった。

ハイエンド・サーバーとストレージに注力する

 事業拡大に最も重要なのがハイエンド・サーバーとストレージ製品の売り上げをいかにして伸ばすかだ。キーとなるのが、05年10月に発表した統合プラットフォームSIGMAGRIDだ。サーバーとネットワーク、ストレージを1つの筐体に組み込み、グリッドや仮想化、自律化の技術を活用してIT資源を統合させるもので、「まず国内の大手企業に売り込み、いずれ海外展開もしたい」(丸山氏)。ただし、この日立製作所が先行している分野で、同社は売り上げ1000億円という大きな目標を発表している。

 もう1つが「生き残るために必要な事業のスケールを確保する」(同)こと。国内だけで出荷台数を伸ばすのは困難なので、グローバル展開が必要になるということだ。だが、NECに成功体験はない。そこで米ユニシスや米ストラタス、米EMCと、それぞれサーバーやストレージ製品の共同開発とOEM(相手先ブランドによる生産)供給に関する協業を実現させた。ただし、実際の数字として上がってくるのは07年度後半からになる。

 サーバー事業で忘れてならないのが米HPとの関係だろう。UNIX系になる。2~4プロセッサ構成と最上位のSuperdomはHPからのOEM調達になっている。なんとか8プロセッサ構成以上のAsAmAを手掛けているものの、「HPとのアライアンスの方針は簡単に変えられない」(丸山氏)。そうした中で、06年下期に出荷予定のインテル製マイクロプロセッサMontecitoを搭載したAsAmA!)(開発コード名)の発売も間近に迫っているし、ストレージの新製品も下期に発表する予定だ。ただし、不思議なのはITと通信の融合製品の代表格であるUNIVERGEは丸山氏の担当外なことだ。企業ソリューションBUの中のエンタープライズネットワークソリューション部隊の主管になっている。

 ソフトプロダクトは、高品質や高性能、高可用性に関わるところを自社開発していくのが基本。「こうしたソフトはハードとの接点になる」(丸山氏)からだ。例えばNEC製品で唯一、世界で売れているCLUSTERPRO(クラスタリング・ソフト)がその1つだ。UNIX、Windows、Linuxの統合管理ミドルウエアSigamaSystemCenterやシステム運用管理ソフトWebSAM、セキュリティ製品の一部、RFIDなどユビキタス製品などもある。時間とリソースの問題からM&A(企業の合併・買収)の可能性は否定できないが、NECがハードもソフトも自社開発にどれだけ力を注げるかが、丸山常務の掲げる目標達成に大きく影響するだろう。国内で競合する富士通、日立製作所より早く、ハード/ソフト事業で営業利益率10%台を確保できるのかは、丸山氏を中心とするITプラットフォームBUの実行力にかかっている。