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 Microsoft Windowsがビジネス分野に本格的な参入を果たした頃,マイクロソフト認定技術者資格制度(Microsoft Certified Professional,MCP)が始まった。ベンダーの認定資格は,即戦力を求める企業には人気が高い。資格を持っていることで,その製品に関しては最低限の技術レベルに達していると考えられるからだろう。一方ベンダー資格には「操作ができても基盤技術の一般論が分かっていない場合がある」という批判もある。

 実際には,上位資格を取得するには基盤技術の知識も必要になるので,ベンダー資格がそれほど問題になるとは思えない。批判の原因にあるのは,「学習はまず基礎ありきで,応用は基礎ができてから学ぶべし」という概念があるからかもしれない。学校での学習パス(順序)は基礎から応用であり,公的な技術試験でもまず基礎技術が問われることが多い。しかし,ベンダー資格の場合は,初めに求められるのは基本技術と基本操作であり,基礎技術は上位で求められる。公的な技術試験とベンダー資格とでは,学習パスが違うのだ。

 私はMCP試験の初期の段階から資格ビジネスに関わっている。最近思うのは,資格目的で講習会を受講する人がほとんどいないことだ。以前は1クラス20人いれば半分以上はMCPを目指したものである。今は1人いるかいないかである。「資格は結果であって,目的ではない」という当然のことが浸透してきたのだろうか。実際,受講生の方に尋ねても「せっかく勉強したのでついでにMCPを取得したい」という人の方が多い。とにかく資格だけを取ればいいと言う人はほとんどいない。

 実は,10年前は違った。多くの企業で,全社を挙げてMCP資格取得者数の増加に力を入れた。私の勤務先を含む数社の教育ベンダーにも声がかかり,MCP試験対策講座が開かれた。そのときの受講生にはこういう人が多かった。

「Windowsは現在使っていないし,今後も業務に使う予定はないし,興味もない」
「そこは試験に出ますか」
「問題を教えてもらえますか」

 試験のためだけに講義を受けるのは,本人もつらいだろうが,講師も結構つらい。古参のトレーナの間では未だに語り草となっている。

 既出試験問題集を公然と要求した会社もあった。実際の試験問題を教えるのは規約違反なので,丁寧にお断りしたら失注した。失注の原因が問題集を出さなかったせいかどうかは分からない。また,別の会社に頼んだのかどうかも分からない。

 最近は,そこまで目の色を変えて受験する人も,受験させる会社もほとんどない。受験目的は実に健全になった。良いことである。しかし,資格至上主義が完全になくなったわけではないようだ。米国のWebサイトを見ると,「補足資料」と称して既出問題を売っている教育センターなどもあると指摘されている(参考資料1)。この内容が日本のサイトに掲載されていないのは,日本にはこうした不正行為がないということなのだろうか。

・参考資料1
Software Pirates, Beware!(米MicrosoftのWebサイト)
Frequently Asked Questions About Exam Integrity and Security(米MicrosoftのWebサイト)

 また,オークション・サイトで問題が売られているという話も聞く。たぶん英語版だと思うが確認していないので分からない。

 不正行為で資格を取得することは,資格の価値を落とす。また,長い目で見ると本人のためにもならない。最近,MCP資格試験が全面改定され,「MCP」の呼称も徐々に消える(参考資料2)。同時に不正行為も排除されることを願う。

・参考資料2
新MCP資格は何が変わったのか(筆者の執筆記事)
マイクロソフト認定資格プログラム (MCPプログラム)資格体系を大幅に改定(マイクロソフトのリリース)
新資格のご紹介(マイクロソフトのWebサイト)

【訂正】当初「資格は目的であって,結果ではない」とありましたが,コメントにてご指摘頂きました通り,正しくは「資格は結果であって,目的ではない」でした。お詫びして訂正致します(7月5日)。