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 SIは儲からない。だから、ビジネスの軸をパッケージソフト販売や運用サービスに変える必要がある----これは、ITサービス会社のビジネスモデル変革の公式と言ってよいだろう。富士通の黒川社長も経営戦略説明会などの場で、よくそんな説明をしているらしい。そのココロは「できるだけ作らない」である。だが、トラディショナルな受託ソフト開発会社で高い利益率を上げる企業もある。さて、その辺りのことを、どう考えるべきか。

 ITサービスのビジネスのプロセス順に、パッケージ販売、SI、運用サービスを横に並べ、縦軸に利益率をとると“ITサービスのスマイルカーブ”が描ける。なんのことかと言うと、両端のパッケージ販売と運用サービスは利益率が高く、真ん中のSIは利益率が低いので、曲線で結べば、スマイルマークの口元のラインのようになる。

富士通なんかは、ITサービス事業の収益力向上策の説明でこの図を使う。儲からないSIの比率を下げて、パッケージと運用の比率を高めていましょう、というわけだ。他のITサービス会社の多くも、証券アナリスト向けの戦略説明会などで似たような話をしている。ユーザー企業に、ハードやミドルウエア製品と合わせて業務パッケージを売り込み、できるだけカスタマイズなどのSIを減らし、構築したシステムの運用受託にもっていくことで、収益力を高めていく----まあ、そんな話だ。

 少し話を飛躍させると、伊藤忠テクノサイエンス(CTC)とCRCソリューションズの合併も、この理屈でよく理解できる。CTCは本質的には販社であり、CRCは名門計算センターの流れを汲む運用会社である。両社ともSIの事業比率はそれほど高くない。スマイルカーブの理屈から言うと理想的な組み合わせで、狩猟型と農耕型という極端に違う企業文化の差異をうまく消化できれば、かなり面白いビジネスモデルを作れる可能性がある。

 ただ、SIの比率を減らすと言っても、ITサービス会社からSIの仕事がなくなるわけはない。で、どうするのかと言うと、SIではひたすら生産性を向上させ、赤字案件を出さないようにすることで、利益率を少しでも引き上げる地道な取り組みを続けるだけである。ところが、SI(より正確に言えば、受託ソフト開発だが)で、二ケタの高い利益率を上げる企業もある。

 例えば、トラディショナルな受託ソフト開発会社である日本システムディベロップメント(NSD)の前期の営業利益率は16.2%。こうした受託開発会社は、長期間にわたって特定の顧客の仕事を続けており、最近のITデフレの際には、担当プロジェクトの中止や料金引き下げ要求に直面し苦境に立った。いきおい、経験の乏しい案件を安値で取りにいって、いくつもの赤字案件を抱え込むことになった。

 ところが、IT景気が回復してくると、こうした受託開発会社の業績は急回復する。苦境の時に、プロジェクト管理の精緻化や生産性向上の取り組みで、SE料金がそれほど回復しなくても利益の出る体質になった。仕事も、勝手知ったる長年の顧客のものが中心。営業担当者もほとんどいないから、販管費もわずかで済む。いわば“極限の効率化”が図られているわけで、SIは儲からないと嘆く企業にとっては、なんとも羨ましい限りだ。

 ただ、こうした古典的なビジネスモデルが、これからもOKかというと話は別だ。もちろん、こうした企業にはプライム企業から下請け企業まで様々なバリエーションがあり、とても十把一絡にはできない。十分に結論の出ないエンディングで恐縮だが、そのあたりの分析は、もう少し知見を蓄えて別の機会に書くことにしたい。