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 「サーバー統合の先にあるのは、ITユーティリティ・コンピューティングの世界だ」。調査会社ガートナージャパンでバイスプレジデントを務める亦賀忠明氏は、日米ITベンダーの最近のサーバー戦略からITユーティリティ時代の到来を予想する。「米国市場でアウトソーシングより、大きなインパクトを与える」(同)と見られているITユーティリティは「IT業界が目指す究極のビジョン」(同)でもある。

 その背景には、モノ作り中心で進展してきたIT業界の問題がある。SI(システム・インテグレーション)と運用にコストが掛かりすぎていることだ。ここを削減するにはシステムを作らないこと、「つまり、どうやって作るのから、どんなサービスを提供するのか」(亦賀氏)に転換することだ。IT業界の戦場が変わることを意味する。

 だから、ここ1、2年前から大手ITベンダーは自社ITインフラに統合化、仮想化、自律化技術を取り込んできた。狙いは複雑化したITシステムを簡素化し、コストを削減することにある。それは当面の話で、これら技術を使うことでサーバーやストレージなどIT資源を共有化するITインフラを整備することにある。センターの集約化でもある。そうなれば、そのIT資源を誰と共有化し、誰がそのコスト支払うのか、というITユーティリティの世界に入っていくことになる。

 亦賀氏によると、04年からIT資源を共有化する事例が出てきた。国内でもサンやHP、富士通などがサーバーやストレージに従量課金制度を導入したし、そうした仕組みを活用する伊藤忠テクノサイエンス、新日鉄ソリューションズなどITサービス会社も現れた。日本テレコムやNTTコミュニケーションズなど通信会社はITサービス会社より、ITインフラを共有化する仕組みに強い関心を示しており、「ここでは、キープレーヤが変わるかもしれない」(亦賀氏)と見る。

ITベンダーが儲かる仕組みなのか

 実は、ITユーティリティ時代の到来をいち早く予想したのは米IBMだった。2000年度年次報告書で、当時のルイス・ガースナ会長が「電気、ガス、水道、電話に次ぐ、第5番目のユーティリティがIT資源になる」といった内容を述べている。その時期を2003年と予想し、IBMはオンデマンド・コンピューティングという言葉を使い、この分野で先行する方針を示した。だが、その時代はなかなか訪れなかった。技術的な問題ではなく、ITベンダー自身が儲かる仕組みを見つけ出せないことが大きな理由と言われている。ハードやソフトを販売して収益を確保するビジネスモデルの崩壊を恐れたという見方もある。

 それを打ち破るのは、アプリケーション・ベンダーが取り組み始めたサービス・ユーティリティ型、つまりSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)になるだろう。既にCRMソフトをASPサービスで提供する米セールスフォース・ドットコムがSaaS市場で業績を伸ばしている。同社のマーク・ベニオフ会長兼CEOは「SaaSも、ASPも、ITユーティリティ・コンピューティングも、オンデマンド・コンピューティングも、ほぼ同意語と思って構わない」と話す。微妙な違いはあるが、インターネットを活用したサービス提供の考え方は同じである。ユーザーを混乱させるより、そうしたサービス提供形態の重要性を訴えたいのだろう。

 「アプリケーション・ベンダーはユーティリティをできる環境になっているが、SaaSが進展するかの問題は儲かるかだけ。ライセンス収入が減り、サービスで収益を得るという検証を誰もしていない」(亦賀氏)。では誰が先鞭をつけるのか。先駆者として破壊を起こすのかだ。そして、既存市場を破壊し、新しい市場で競争優位に立つかだ。

 多くのユーザー企業は様子見の状態だが、インハウスで展開する大手企業が出てくる可能性は高い。競争が激化する市場で戦っているユーザー企業もユーティリティ型に注目している。アプリケーション・ベンダーに中にも、恐る恐るSaaS対応に取り組み始めているし、システム販売からSaaS型への転換を図るろうとする日本のITサービス会社も出てきた。成長が鈍化したIT業界の生き残りかけた戦いが始まったのだ。