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 私は1992年から97年まで,あるITベンダーの名古屋所長をしていました。前半はバブル崩壊の荒波がこの業界を初めて襲い,下請開発の仕事はナッシングです。自転車でユーザーをかけづり回っていました。小さいけれどソリューション型直ビジネスです。しかし,後半は景気も回復し,要員調達提供ビジネス,下請開発ビジネスにうつつを抜かしてきました。

 しかし,優秀なSEリーダー達がいてくれたおかげで,ユーザーのシステム開発には開発上流から参画していました。ITで問題をどう解くかと言うソリューションに関しても,皆堂々と意見を言ってくれていました。“女衒下請”と言いながらも,ユーザーからの直接仕事は最低時期でも売上の4割はありました。コンサル活動も続けていました。その時感じたのは,テクノロジーの力でもプロジェクトマネジメントの力でも開発上流での競争力が全てを支配している。上流での競争力があれば,SEのモチベーションは下がり難いという確信です。

 労働集約サービスは人間が作業します。提供サービスの価値とは無関係に,生きて行くための生活費が下限となります。ですから,圧倒的な低賃金層の存在が,労働サービス業を成立させます。フリーターのペイは安いからこそ意味があります。

 構築SEの(ユーザーが認める)市場価値の低さは,賃金(人月単価)に反映しています。少数の勝組と多数の負組という格差社会において,構築SEは明らかな「負組」を構成し初めています。少なくとも専門家のペイではありません。前回の某ITベンダートップからのメールにあった「IT産業などとというのは幻想,巨大な失業対策事業」を否定できないのです。しかも,中国,インド,ベトナムへのオフショアが脅威になっていますが,日本のIT構築市場は価格競争力を持つ彼らの射程に完全に入っています。どっちにせよ,構築工程の収益の酷さは,SEがモラールを維持するモチベーションを喪失させる元凶です。


今はQCD効率の消耗戦(失業対策事業)からの脱却のチャンス


 QCD(クオリティ,コスト,デリバリー)の消耗戦の闘いから,付加価値で勝負する土俵にシフトする丁度良い時期が,スクラッチ開発で儲かっている今です。景気循環に合わせて,SEがいれば儲かるというサプライヤーの売り手市場は,そろそろピークアウトし始めています。振動減衰しながら収益トレンドカーブは下がっていきます。

 「どのように作るか」から「何をつくるか」や「いかに作らないか」にシフトするのは,新しい競争の土俵を作ることに繋がります。私のこの気持は,マトモなシステム・インテグレータの経営者の皆さんの本心だと思います。つまり,上流工程で存在感や競争力があるSEがいれば,業容を変えることが可能です。SEの本来の向上心も表れてきます。残された未踏の領域が要求定義です。そこで力をつけたSEは,景気循環に関わらず売り手市場になるのです。消耗戦(失業対策事業)から脱却する意思と意欲のあるマジメなシステム・インテグレータの目指す道の一つです。

 そんな意思も意欲もない負組は,果てしない競争の続くレッドオーシャン(血の海)で泳いでおればよろしい。多分必要悪としての社会的存在ですから,その存在をとやかく言うのは,人間としてハシタナイ行為なんでしょう。私がこのコラムで「何をつくるか?」を「開発上流」と言わず「ビジネス中流」と叫んでいるのは,まさにここです。発想の転換がいるのです。軸足はITよりビジネスです。ビジネスとは「経営と現場」です。