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 コンピュータの黎明期から30年~40年が経ちました。ITプロセスは,業務プロセスに骨や筋肉や神経系のように分離不可能な状態で包含されています。よって,具体的でない総論や,あやふやな戦略で進めようとすると必ず失敗します。ITを体得していなく,現場を知らないコンサルタントの描いた,夢のような美しいIT化プランは,ほとんど失敗しています。

 経営戦略をITが担えると企業経営者が本当に思った時,「何をつくるか」に軸足を置いた真のシステム・インテグレータの価値は,急カーブで上がります。ほとんどの経営トップは,ITを戦略の道具だとは思っていないようですが,その戦略をビジネスプロセスモデルとしてインプリメントし継続・実践を可能にする道具がITです。


システムの価値はメンテナンスで上がっていく


 在庫管理をSCMと呼んでも呼ばなくても,即納率と在庫削減というトレードオフ状態の最適な落しどころは,「20%の人気商品が80%の売上を占める締める」というパレートの法則に従います。それには,頻度をX軸,金額をY軸とした2次元領域に対して,その領域を複数の矩形で分割します。その矩形ごとにMax,Miniなどの在庫管理情報をセットし,それを過去実績でシミュレーションしながら,最適な矩形集合を求めます。ITがなければ不可能です。

 ただし,このメカニズムがキッチリ動き出すと,ア!という間に不良在庫が発生します。過去の実績データに基づくシミュレーションだけでは,季節変動品,設計変更,新車投入などの変動要因が未来の予測を損なうからです。そのリスクをどうするかがSEの腕の見せ所です。人間系との連携もあります,希望納期のような未来の情報があればさらに面白い。ここらはSEのソリューション力の独壇場です。いままでの業務プロセスをガラッと変えることもあります。

 例えば,自動車部品の発注・出荷業務を考えてみましょう。自動倉庫でなければ,部品マンは出荷指示に従い,倉庫内を走り回って部品をかき集めます。そこでSEは部品マンの倉庫内の運動量(移動距離)を減らし,出荷効率を上げようと考えます。つまり集約出荷です。棚の近いものを単位時間ごとに集約し,一緒に出荷指示を出した方が効率的です。

 面倒な部品の品番入力も,自動車の車両イメージ画像の部位をクリックして,型式年式から自動的に品番翻訳できれば非常に効率的です。インターネットのWeb経由で同じことができれば,発注者に便益を提供できます。

 このほか,整備士がアニメーションのマニュアルの助けを借りて,修理箇所を検査しながら部品を発注できるようにする。自社倉庫になければ部品サプライヤーに発注できる。その補修部品がいつ到着するかまで分かれば,作業スケジュールをダイナミックに自動調整できます。そのスケジュ-ルに合わせ,補修部品はマトメられて,前準備されスタンバイしていきます。

 以上は,着眼大局・着手小局の事例です。システムはメンテナンスで完成度が上がっていくから,ダンダン良く鳴る法華の太鼓です。最初から100点を望まない,周りの環境整備に伴ってベネフィットが向上していきます。新車のモデルチェンジ情報,設計変更情報,保有車両情報や入庫率や故障率がわかれば,未来情報の精度が上がります。保険情報と連動していたら,事故見積と外装入庫の案内も素早くできます。

 部品表データ,保険データ,工場スケジュール,保有車情報,故障率,入庫率,設計変更データモデルチェンジデータ…,情報装備率の向上に伴って,全国,世界の販売店に利便が提供されます。持続的競争優位の実現です。

 これらの事例は,よりIT側にシフトしていますが,もっとビジネスより,つまり,組織,人,それにビジネスプロセスや組織ケーパビリティに依存したITも同じです。インタンジブル(組織や人間のスキルのように無形)なものの成熟度に相関しながら,ITをチューンナップしていく。モニタリングしながら,戦略や戦術をPDCAサイクルの中で変化させることもあるでしょう。ITのターゲットドメインを考え続け,道具としてのITも絶えず考えます。SEは,地道に裾野を広くしながら,高く伸びていく総合技術とも言えます。