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サービスとマーケティング―パートナーシップマーケティングへの展望
著者:浅井 慶三郎
出版社:同文舘出版
価格:3990円(税込)
ISBN:4-495-63652-9

 それぞれの書物には,それを著した方の意図や目的がある。だから,読み手にとっては,その書物の意図や目的を適切に理解するための「適切な読み方」があるはずだ。これから数回に渡って,CRM分野の書物をいくつか紹介しつつ,それぞれの「適切な読み方」を記したい。

 世間には,CRMを解説したり宣伝したりする多数の書物が存在する。だが,論理的かつ実務に役立つと思えるものは少ない。私が英語による書物を多読するのは,日本語で書かれたものに至らなさを覚えるからだ。代表的なのが「CRM―顧客はそこにいる」(東洋経済新報社刊)である。

 序章ではCS(顧客満足度向上)活動で得られた教訓として,CS活動を推進した結果発生したさまざまな問題を,うまく整理してある。その問題の抜本的な打開策がCRMだ,と筆者たちは指摘する。これについては,異論や話題の欠けを挟む余地はない。

 それでもこの書籍には,明らかに欠けているものがある。それは次のような点の指摘と,それに対する処方箋だ。「CRMが適切に機能させ,CRMで成果を出すためには,組織風土の変革と組織に属する人々への教育訓練が欠かせない。CRMは組織が実施するマーケティング活動の一形態であり,CRMの活動がその組織に定着しなければ,成果は期待できない」。

 これはいわゆるチェンジ・マネジメントである。チェンジ・マネジメントの欠落は,多くのCRMプロジェクトが失速する一番の理由である。米国におけるCRMの議論を追っていると,「利害関係の調整」という話題がしばしば出てくる。CRMのチェンジ・マネジメントについて明確に言及した国内の書物は,私が知る限り存在しない。

 理念としてのCRMには誰も異論を挟まない。ところが,それぞれの組織には,理念だけでは片づけられない固有の状況(問題意識)がある。その組織,その固有の状況それぞれに処方するべきCRM戦略,戦術は異なる。普遍的なCRM論をとりまとめることは難しいと言われているが,その理由はここにある。