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CRM実践顧客戦略
著者:ポール・グリーンバーグ,斉藤 英孝(訳)
出版社:ダイヤモンド社
価格:2625円(税込)
ISBN:4-478-37383-3

 「CRM実践顧客戦略」は,CRMにはこんなにも多様な要素があるのかと納得し理解できる良書だ。特に,CRMプロジェクトを率いるマネジャには必携である。徹底してCRMアプリケーションの導入と適用のプロジェクトマネジメントの視点で書かれており,プロジェクトマネジメントの“勘所”がよく理解できる。翻訳書にありがちな日本語の不適切さがない。翻訳者の技量が推察できる。

 ITproの読者は,情報技術分野に従事しておられる方が多いと思われるので,夏休みに一読されることをお薦めする。

 念を押すと,この書物はプロジェクト・マネジメントの視点を堅持している。CRM戦略やCRMを支える情報技術についてはほとんど言及していない。

記事から読み解くCRM

 書物だけでなく,新聞や雑誌も役に立つ。日本経済新聞の連載「消費をつかむ-第3部売り手の新発想」である。この連載には,CRMを伺わせる記述が数多い。

 例えば,8月6日付では,NECパーソナルプロダクツ,「でんかのヤマグチ」のヤマグチ,大手紳士服のアオキなど各社の逸話が紹介されている。

 NECパーソナルプロダクツではサポート強化(この表現の意味は多様だ)によって,パソコンの再購入確率が3.4%から59%に上昇したそうだ。ただ,耐久消費財のうち,家電製品で「ブランド・ロイヤルティ(忠誠度)」が高い顧客の再購入確率は,筆者の実務経験では75%前後だった。このことを思い返すと,59%というのは相対的には低い。ちなみに,ブランド・ロイヤルティが高い顧客の再購入確率は,家電製品メーカーのブランド選好度に近似している。私がある実務に携わっていた当時は,松下電器産業で約45%だった。

 アオキのトップ販売員は1500名ほどの顧客を把握しているそうで,その情報は顧客台帳として記録されているという。アオキのすべての販売員がトップ販売と同じ質の販売活動ができるようになるかどうかがアオキの最大の目標だろう。販売員にはどんな技能をどう習得させるべきか。その時間やコストはどの程度か。販売員教育を含めた活動のライフサイクルを組織的に実行できるかどうか。これが,アオキにとってのCRM戦略である。

 顧客数を減らしてサービスを手厚くしたでんかのヤマグチの逸話は,家電業界では以前かなり話題になった内容だ。でんかのヤマグチは特に団地の高齢者世帯3300戸を大事にしているそうだ。すぐに駆けつけてくれる安心感が顧客に醸成されているという。

 新聞は日々流れていく読み物あるいは情報源と読み捨てないで,図書館の新聞架などで通して読み返すことを薦めたい。新聞だけでなく,雑誌記事にも同じことが言える。時間軸でものごとを把握できるようになるからだ。

 次回は「営業が変わる 顧客関係のマネジメント」を紹介する。

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