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 エンジニアもチーフクラスになると、客先で要件確定交渉をすることが多くなります。当然、客先の担当者に嫌われないように話をしてくるのは大事なのですが、無理な要求を引き受けてきてしまうのも困りものです。

 数ヶ月前、あるITベンダー企業の集まりで経営層クラスの勉強会に講師として招かれたことがありました。この場でも、ある会社の社長が「断れないで持ち帰るヤツが多い」ことが問題だと怒っていました。

 その社長に「どうしたら、断れるようになるのでしょうか?」と聞かれた私は、以下のような話をしました。

「断れる」人とは?

 客先の要求をその場で断ったり、相手が主張することを、自分の考える方に誘導するためにはそれなりのテクニック(行動パターン)が必要になります。それは、いわゆる「説得術」や「交渉術」と呼ばれているものです。

 たとえば、そのなかのひとつに「相手が強く要求していることに対し、相手の知らない法律(税法や著作権等権利に関する法律)や、過去の失敗事例など相手にとってマイナスの情報を与えることによって相手にデメリット感を与え自分の主張を断念させる」ような方法を使うことがあります。

 「○○さんの言うようなことを聞いて、他社では酷いことになった」
 「税務調査で指摘されるので、貴社のために絶対できません!」

 特に、最近は、ソフトウェア開発に関するコンプライアンスも認識されてきたので、このような話法で断りを入れることが有効になっています。

 しかし、こんなことは、特にテクニックでもなく、簡単であたりまえの話です。でも、これがなかなか部下たちには身につかないのです。

 本来、交渉や説得は、そんな難しいテクニックを必要としません。あるのは、「相手の主張・論拠を想定し、自分の反論を考え、それに対する相手の反論を想定し・・・」を根気よく繰り返すことだけです。

 つまり、論理的な会話のパス(経路)をできるだけ多く想定し、準備できた方が勝利するのです。相手の方が立場が強い場合(自分が業者で相手がお客さま、自分が部下で、相手が上司)は、さらに、多くのパスを準備しておかないと力負けするので、入念な準備+練習が必要で、私は、部下に意地悪な質問や要求を出してパスの多さや論理性をチェックするのです。

せっかちな部下

 私は、こういう話を部下にして準備させるのですが、なかなかうまくいかないことが多いです。うまくいかない原因はたくさんあるのですが、主なものを2つ紹介しましょう。

 ひとつは、パスをたくさん用意できない部下です。自分の主張を「どういおうか?」ということは一生懸命考えるものの、相手が全く別の観点で反論してくることが考えられないのです。何度いっても直らない。こういう人は、残念ながらいつまでたっても交渉が強くなりません。

 もうひとつは、いくつかの交渉パスを用意しているのですが、本番でそれらのパスを忘れ「自分の主張を最初から相手に伝える」せっかちな部下です。うまく断るためには、相手にたくさんしゃべらせてから、最後に自分の考える結論に誘導するのがよい方法です。

 しかし、せっかちな部下は、最初から「自分の主張を相手に押し付ける」のです。結局、相手を怒らせ、負けて帰ってくることになるのです。

 こんな部下に「なぜ、うまくいかないのか?」と聞くと「相手がいると、早く終わらせたいという気持ちになってしまう」と言います。性格の問題もあるでしょう。だからこそ、周到に準備し、正しい行動パターンで説得するように心がけねばなりません。

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