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 ITサービス会社は今、技術者不足に悩んでいる。業界自体が若者に不人気で、プログラマ、SEを志す人も減りつつあるという。それはそれで大きな問題なのだが、あくまでも現象論。少し考えてみてほしい。このままでは、ITサービス業の産業構造、ビジネスモデルは人材面の問題から間違いなく崩壊する。これは論理的必然である。

 多くの人がもう忘れ始めているが、ほんの2~3年前にはITサービス業界では技術者が余っていた。優秀な技術者はその頃でも足らなかったという議論があるが、総体としてはやはり過剰だった。多くのITサービス会社が危ない案件の安値受注に走ったのも、技術者の稼働率を維持するためだった。下請け会社が容赦ない料金引き下げ要求にさらされたのも、その頃だ。

 もともとITサービス業界はその黎明期から、慢性的な技術者不足が続いていた。ITサービス市場は景気変動の影響をほとんど受けず、基本的には右上がり。人さえ手当できれば、仕事はいくらでもあった。ユーザー企業はIT投資を聖域としており、新技術、新製品などサプライサイドの都合であっても、IT投資を行ってくれた。とにかく技術者が足りない。ある意味、幸せな時代が長く続いた。

 ところが今や、「ERPで経営改革」といった無内容なスローガンのメッキがはがれ、ITの“神通力”は失われた。IT投資は聖域から追い出され、他の投資と同じ、もしくは優先順位の低い投資へと転落してしまった。そうなるとITサービス市場は、景気変動の影響をモロに受けるようになる。ここ数年のITサービス業のスランプは、まさにそういった事態だった。そして日本の景気が完全回復した最近になって、遅まきながらIT市場も復調したわけだ。

 だから、ITサービス市場は今後、日本国内の景気に連動して拡大したり、縮小したりすると考えた方がよい。技術者もそれに合わせて足らなくなったり、余ったりする。そうすると、ITサービス業のビジネスのカタチは、表面的にはますます建設業に似てくる。建設業では、景気変動に対する“安全弁”として多重下請け構造が機能する。景気が良ければ末端の事業者や労働者の数が増え、不況になればその数が減る。

 では、ITサービス業も好むと好まざるにかかわらず、建設業のようになるかというと、そうはいかない。ソフト技術者は、多重下請け構造の底辺にいる人でも技術者であって、単純労働に従事しているわけではないからだ。技術者になるためには、本人や雇用している企業がそれなりのお金や時間を投資する必要がある。仕事がいっぱいあるからといって、どこからか技術者をかき集めてこられるわけもないのだ。

 つまり、ITサービス業界の多重下請け構造は、市場の右上がりの成長が前提で、多少の変動を吸収するぐらいしかできない。建設業のように景気変動に“柔軟”に対応できるような代物ではないのだ。そうすると、ITサービス業のこうした産業構造はもはや維持できないということになる。ただでさえ新3Kなどと言われてイメージが悪いのに、不況期に失業するリスクも高くなるのであれば、ITサービス業界に就職しようという酔狂な人もいなくなってしまうだろう。

 だから、人月商売、多重下請け構造を維持し続けるのは、もはや絶対に不可能である。そして現状では、ITサービス業界に優秀な人材を集めることなども、夢のまた夢だ。やはり個々のITサービス会社が新たなビジネスモデルを作り出し、ITサービス業界から“決別”していくしかない。今の好況期がおそらく、そのための最後のチャンスだろう。