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 この前、「なんか(N)、合点がいかない(G)、ネットワーク(N)」なんて話を書いたが、最近ますますNGN熱が高まってきたようだ。NECや日立製作所など通信部隊を持つベンダーが相次いでNGN事業戦略を発表したのはもちろん、日本IBMや日本オラクルなど外資系のITベンダーもNGN商戦への参入を表明し、NTT詣でを繰り返しているようだ。

 もちろんベンダーのこうした動きは、NTTが来年度からの商用化をにらんで、今年末からNGNのフィールドトライアルを開始することを受けたものだ。NGNは巨大なIPネットワークなので、ネットワーク機器はもちろん、サーバーやストレージ、ミドルウエアなどに膨大な投資が必要になる。NTTグループをはじめ通信業界向けのIT市場が大きく膨張するわけで、ベンダー各社の舌なめずりの音が聞こえてきそうである。

 ただ、IT屋から見たNGNの本当の面白味は、これではない。何と言っても魅力的なのは、NTTなど通信事業者がこれまで“門外不出”にしていた機能・情報の切り出しである。課金機能、位置情報、認証機能などを、APIを通して外部のアプリケーションから利用できるようになる。APIがどのレベルのものになるか全く分からないが、まあWebサービスの形になるのが順当なところだろう。

 この前も書いたが、こうしたNGNの試みは極めて今日的だ。主にコンテンツ・サイドの文脈で語られるWeb2.0、ソフトベンダーのマーケティング的観点で語られるASP改めSaaS、企業内情報システムの観点で言うところのSOAなどと同期した動きと言える。地図情報サービスにおいて、通信事業者の位置情報と“マッシュアップ”して、なんていうWeb2.0的なビジネス・イメージがすぐに浮かぶ。だから、NGNは、Web2.0で象徴される新しいITビジネスの潮流への通信事業者の参戦ともとらえることもできる。

 そんなわけだから、直接、通信事業者に製品を売り込めるベンダーだけでなく、SIからアウトソーシングやASPなどのストックビジネスへの移行に迫られるITサービス会社にとっても、NGNは極めて興味深い試みだ。通信事業者の認証や課金機能を容易に活用できるようになれば、ITサービス会社はストックビジネスへの投資額を減らし、顧客にはより高度なサービスを提供できる可能性が開けるからだ。

 通信事業者も、特定の旧電電ファミリーだけでなく、ITベンダーやITサービス会社、ネット企業などを広く味方につければ、以前のIN(インテリジェント・ネットワーク)の二の舞にはなるまい。「なーんだ、皆、ハッピーじゃないか」と言いたいところだが、やはりNTTをはじめとする通信事業者のNGNの取り組みはなんかおかしい。この手の話で絶対に必要な「利害関係のない第三者を儲けさせる仕組み」がなかなか見えてこないのだ。

 NGNとして提供するサービスは基本的にインフラ・サービスなのだから、NGNを成功させるためにはユーザーのことだけを考えていたらダメだ。インフラを使って儲けようとする人に対して、できるだけ容易に(できれば勝手に)ビジネスができる仕組みを作る必要がある。誰かが言っていたが、マイクロソフトはアプリケーションベンダーを儲けさせる仕組みをうまく作ったことで、Windowsで大成功を収めた。iモードなんかでも、“勝手サイト”の隆盛がiモード自体を驚愕の成功へと導いた。

 さて、NGNにそれがあるか。NGNでは、第三者が利用できる機能は提供するとしているが、第三者を儲けさせる仕組みは全く見えてこない。例えば、元気の良い中小ITサービス会社やネットベンチャーがNGNの機能を自由に利用して、自社のビジネスを組み立てることができるようになるのだろうか。NTTあたりが、そんな絵を描いてみせたらNGNも成功し、日本のIT・通信産業の飛躍にもつながるのにと思う。通信業界内の縄張り争いや放送業界の取り込みのために、政治闘争に明け暮れている場合ではないはずなのだが。