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 1980年代,当時の流行に従い,システム部は情報子会社として分社独立しました。ユーザーとピッタシの関係は少し少し変化して行ったのです。どこの情報子会社もほぼ同じです。平均的なパターンを以下述べます。Yさんとトナチャンが勤めていた会社もほぼ同じです。

 情報子会社は収益を目指します。親会社には情報子会社への交渉窓口ができ,子会社との間で利益を奪い合います。親会社は,IT技術者を育成する義務も雇用する義務もなくなり,ITオタクの集まりであるシステム部は,得意なIT市場で頑張ってくれた方が,社外収益もあがり,専門家集団として能力もアップすると信じていました。部門として多くの制約を感じていたシステム部門やそこに所属するSEも,勃興するIT市場で雄飛せんとバラ色の未来を思い描きます。お互いがWin-Winになる,と錯覚していたのです。

 親会社や親会社グループからの受託開発が情報子会社の収益基盤です。まず,システム運用で安定的な収益を稼ぎ出します。子会社の経営者の資質やビジョンにより一概には言えませんが,ほとんどは,今までお客と業者の関係であったハードメーカーから安易に仕事を貰います。親会社関係の取引会社も多い。ほとんどは派遣人月ビジネスです。ローリスクローリタンの女衒下請けと余り変わらない,品格の無い仕事です。SE要員を増加すれば売上(利益)が増えます。特に,情報子会社の仕事はコンペテターがない親会社絡みですから,“ノーリスクミドルリターン”の安定収益です。情報子会社の経営トップは,人間関係のみで十分,暇を持て余します。逆に,経営者がイノベータタイプなら苦しみます。

 イノベータタイプの経営者は,新しい市場へ進出しようと,ユーザー企業から直接受注する直ソリューションビジネスもやりますが,容易ならざることに気が付きます。対象ユーザーは中堅・中小企業ですから,IT技術者の人月価格は親会社や大企業からの下請価格よりはるかに安い。中堅・中小企業の厳しい要求・要望をシステム要件化することがこんなにも難しいことか,と改めて感じます。開き直ってソリューション提案営業をかけますが,収益への貢献度は低い。経営者も頑張る意思を喪失し,直ビジネスで利益を稼ぎ出すことは至難であると理解していきます。そんな時,ノーリスクミドルリターンの安定収益構造にしがみつく経営者を,簡単に責められますか?

 元来市場で揉まれたこともありません。親会社のブランドでの派遣ビジネスをやった方が金を稼げます。人月ビジネスのうまみを知って,IT市場への雄飛の気持は萎え,堕落していきます。グループ子会社の中では安定収益を稼ぎ出す優良?子会社です。堕落と思うか思わないか?少なくともイノベータにとっては堕落です。情報子会社の堕落は,結局,親会社が大きな被害を蒙ることになるのです。

 情報子会社は連結決算の中で親会社と収益を取り合う関係ですから,真の相談相手の役割りは減っていくのは自然です。親会社にノーを言うリスクは避けるようになるのも自然です。儲け優先ですから,構築に専念し人月ビジネスで収益を上げることにシフトしていきます。親会社は子会社の癖にという気持と,単なるITベンダーに過ぎない癖にとの思いを強くしていきます。提案も相談相手にもならない,なれない...。

 Yさんのレーゾンデートルは,好きな仕事を作り出しビジネスに価値を創出し,お客を喜ばせることです。Aさんも私も同じです。顧客の相談相手としての役割りを担うことが,まさにそんなビジネスモデルを可能ならしめる入口です。Yさんは情報子会社を退任するまで親会社の役員とそんな関係だったようです。親会社のキーマンは,Yさんのずば抜けた能力を知っていましたから。

 しかし,子会社のミッションは稼ぐことです。情報子会社で代表権を持つ経営者になり成功したYさんの心の中には,SE魂が存在しています。内心忸怩たるものがあったのではないでしょうか?いよいよ次回は最終章,「黎明期への回帰は弁証法的スパイラルアップ」です。