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 Aさんの上司は、何をやってもよくできる、キレ者として有名なひとです。確かにAさんから見ても非のうちどころがなく、この上司から何か言われたら、ひと言も言い返すことができません。実はそのことで、Aさんはひどく疲れて、やる気がなくなってしまうのだそうです。

 Aさんの上司は、自分自身やチームの目標を、常に期待されているよりも高めに設定し、そして必ずそれを達成させます。そのために、あらゆることをきめ細かく計画し、徹底的に管理します。自ら率先してバリバリ仕事をするのはもちろんのこと、周囲のひとにも自分と同様の頑張りを要求するそうです。それに応えようと、Aさんとしても相当頑張っているつもりなのですが、何かと厳しく指摘され、どうかすると「もういいよ」と上司が自分でやってしまうこともあります。

達成動機が高いひと

 この上司の方は、若い頃から大変優秀だということで、トップ昇進を続けてこられた方だそうですが、このような方々には、達成動機(*1)が高いひとが多いようです。達成動機の高いひとは、困難を乗り越え、高い水準で目標を達成しようという思いに駆り立てられやすく、そのため、個人として高い業績をあげ、組織からも高く評価されることがあります。

 ただ、このような人がマネージャになった場合、短期的には業績が上がるかもしれませんが、長期的には維持できない可能性もあるともいわれています。かつて、IBMで大口顧客を担当するシニア・マネージャを対象に、動機(モティベーションのもと)やリーダーシップのスタイルを調査されたことがあり(*2)、その結果によると、全てのマネージャは達成動機を主要な動機としていたとのこと。だからこそ、そのクラスのマネージャになられたのかもしれませんね。

なりふり構わず目標達成!?

 そして、ここからが興味深いのですが、それらのマネージャのうち半分は、率先垂範で自ら動き回り、部下へも厳しく命令する率先・介入タイプで、あとの半分は、自分よりもチームの利益を優先し同僚や部下を助ける親和タイプだったとのこと。そして1年後、後者のチームの業績が、前者を大きく上回っていたのだそうです。

 冒頭のAさんの上司は、どちらかといえば率先・介入タイプなのかもしれませんね。その方は、短期のプロジェクトを必ず成功させるそうですが、メンバーをまるで機械のように扱うため、言われたとおりにしか動けず成長できないとか、やる気をなくしたり疲弊したりして生産性も低下し、次から次へメンバーを入れ替えないと、長期間はもたないとのこと。また、そのことをメンバーのせいにしたり、他のチームからの協力要請には一切応じないという態度であるため、同僚も積極的にはその人を支援したくないようです。これでは、組織としての効果を生みにくそうですよね。目標を達成したいという思いが強すぎて、他のことが見えなくなっておられるのかもしれませんね。

コントロールよりコラボレーション

 達成動機の強いひとの、上昇志向と目標達成への強い思いをベースに、マネージャとしてその良さが活きるような行動が望まれますよね。あらゆることを自分の頑張りでカバーしようとしたり、常に人を説得して思い通りに動かそうとする行動パターンには要注意。目先の成果は見込めるかもしれませんが、関係者の士気や信頼感を低下させてしまいます。また、達成したい気持ちが度を過ぎると、他者への迷惑を省みず自分の目標だけを追求するとか、お客様への貢献よりも売上げ獲得に力を注ぐなどの行動も起きやすくなるようですので、頑張り屋さんは特に気をつけておかれるとよさそうです。危ないかもと思われた方は、先ず周囲のひとに貢献することに、意識的に力を注がれてはいかがでしょうか。何が貢献になるのかよく考えるところからスタートですね。

 ご存知のとおり、IBMは1990年代の改革のなかで、リーダーシップの改革にも着手され、他者への貢献や支援、協働の促進などの、望ましい行動をマネージャが行うようになるための様々な取り組みが行われました。そして2年前の調査では、マネージャ層にはやはり達成動機が高い人が多かったのですが、コラボレーションや周りと良好な関係を築く行動が増加していることが確認されたそうです(*2)。

両方あることが重要

 ちなみに、ひととのつながりや関係を大事にしようとするのは親和動機というそうです。自分の目標を達成することへの執着や、それをやりきる能力があるのは素晴らしいことですが、それらと同時に、周囲との調和を図るとか関係者を支援する行動がとれること、この両方があるというのが重要ですね。少なくともマネジメントをするにはこの両方がないとうまくいきません。それに、そもそも特定の仕事場面に限らず、独りで頑張るだけでなく、ひとと共にいることや影響しあう喜びがあるほうが、元気よくキャリアを歩めるのではないかとわたくしには思われます。

 それでは、今日もイキイキ☆お元気に。

*1 達成動機とは、特定文化において優れた目標であるとされる事柄に対し、卓越した水準で成し遂げようとする人格特性とされています。
*2 ヘイ・グループの人たちによる論文「「達成動機」のマネジメント」(Harvard Business Review11月号に掲載)より。