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 ITサービス業界は本当に人が足らない。個々のITサービス会社では四半期ごとの決算発表などの際に、経営トップが「技術者不足で顧客の要請に応えられない」と嘆いてみせる。調査会社の市場予測でも「技術者不足がITサービス市場を成長阻害する」と警鐘を鳴らす。「大変だ、深刻だ」と騒ぐ人は多いが、本当にそうだろうか。ITサービス会社は今この時期に、安易な人材採用などやめた方がよい。

 もちろん、「ITサービス業は学生に不人気で、良い人材が集まらない」という文脈では、事態は相当に深刻である。“新3K”だとか何だとか言われる状況を改善して、魅力ある職場を作っていかなければならない・・・しかし、これはまた別の話。今回テーマにしたいのは需給ギャップの話、2~3年には想像もできなかった圧倒的な需要超過の状況において、ITサービス会社として何をなすべきかということである。

 そもそも今、人を増やすべきなのだろうか。「大手ユーザー企業5社と安定的にプライム契約を結ぶために、○○人の技術者を確保する」といった明確な経営戦略があるなら、今の採用難の時代でも、がむしゃらに人材採用に走り回るのもアリかもしれない。そうではなく、単純に人月商売の売り上げ拡大のために、人を手当しようとしているならバカであり、顧客の要請に応えるために人をかき集めているのならアホウである。

 確かに、大規模なIT投資を再開したのに、肝心のシステム開発要員が足らないというのは、ユーザー企業にとっては深刻な事態であり、マクロ的に見れば経済的損失かもしれない。しかし、IT投資を抑制していたころには、開発を委託していたITサービス会社や人を無慈悲に切った。客としては当然の行動だが、今日のシステム開発要員が足らないという事態は、ある意味、自らが招いた結果だ。「人をもっと出せ」と言われたら、ITサービス会社としては「最大限努力します」と言って、放っておけばよい。

 この前、「ITサービス業の産業構造は近い将来、間違いなく崩壊する」でも書いたが、従来のような人月商売では、もはや永続的な右上がり成長はあり得ず、景気変動と共に需要が変動する。いま需要があるからといって人を増やしたら、将来どうなるのか。第一、今は大変な採用難で、ITサービス業よりはるかに人気のある産業でも絶不調、甘あまの採用活動を行っている状態。そんな中で、無理をしても良い人材を採用するのは至難のわざだろう。

 規模を追うという明確な経営戦略を持つ大手ならともかく、それ以外のITサービス会社は今、無理に陣容を拡大する必要はないし、そうすべきでもない。人材採用の最前線が圧倒的に売り手市場ならば、ITサービス市場も売り手市場。このアドバンテージを利用しない手はない。

 今は、買い叩くことや怒鳴ることが仕事だと思っているような情報システム部長がいるユーザー企業など、とっととオサラバして、パートナーとして遇してくれる話の分かるユーザー企業とのリレーションを強化すべき時である。あるいは得意の技術やノウハウを磨く、あるいはSaaSなどストックビジネス、“作らない”ビジネスへの取り組みを強化する。やるべきことはいくらでもある。ITサービス会社には是非、この“最後の機会”を利用して、量の拡大ではなく質の転換を実現してほしいと思う。