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 エレベータやエアコンなど,皆さんの会社が入居しているビルディングの設備を,企業情報システムと連携させる――。こんな発想について,皆さんはどう思われますか?

 ビルの制御システムと,その企業の人事,財務,CRM,製造といった企業情報システムとを,Webサービスで連携させるためのオープン・スタンダードを開発している標準化グループがあります。国際的な標準化団体,OASISのOpen Building Information eXchange (oBIX) 技術委員会です。今回は,ビルの制御やメンテナンスを担うビルコン業界が中心となって開発中のオープン・スタンダードについてご紹介します。

 まず,ビルの制御システムと企業情報システムを連携させることのメリットを考えてみましょう。例えば,学校のキャンパス・ビルディングは,とても分かりやすいケースです。教室の利用を予約するシステムをビルディングの制御システムと接続し連動させれば,教室の利用状況に合わせて,エアコンや照明,セキュリティ設備を自動的に調整できるようになります。これまでは連動していないため,設備の調整にムダが生じていました。こう考えると,設備予約をはじめとした組織活動の情報は,ビルディングの制御システムと決して無縁ではないわけです。

 それは,ファーストフードや銀行といった多くの店舗を有するビルディングでも同じことが言えます。この種のビルディング管理では毎月,電気などエネルギーの利用状況を,各店舗や部門ごとの利益率をモニタリングしている企業情報システムに入力する必要があります。システムによっては,外部の天候や店舗内部の営業状態を関連づけて入力する必要もあるでしょう。これらの要素を連動させれば,かなりの効率化が図れます。製造業における工場ビルディングも,生産の状況によって様々なビルディングの要素を自動制御できれば,大きなメリットが生まれることでしょう。

 これまでのビルディングに組み込まれている伝統的なビル制御システム,つまりビルの暖房,換気,空調,エレベータ制御,実験室などの安全装置,生命安全システム,設備アクセス制御,外部侵入感知,Audio/Videoイベント管理,ビデオ監視システムなどは,そのほとんどがスタンドアローン型のシステムです。しかもビル建設会社固有の標準を使用しており,他のシステムとの連携を前提として開発されていません。

 そこで,2003年4月にContinental Automated Buildings Association (CABA)という標準化団体が,XML/Webサービス・ガイドライン委員会を設置して,現在oBIXとして知られる原型仕様の開発を始めました。2004年5月には標準化の場をOASISに移し,他のビルコン企業やIBMをはじめとしたITベンダーと共同でOASIS oBIX技術委員会を設立し,今に至っています。

 OASIS oBIX技術委員会は現在,oBIX仕様を策定中です。oBIX仕様は,セキュアな手段でビルの制御システムと企業情報システム間のデータ交換を可能にする標準です。当面の目標は,データ内にイベント(警報や出来事)を定義したり,温度や湿度などを追跡するためのデータ・ログのフォーマットを標準化することです。

 同委員会は,2006年3月にoBIX v0.10(zipファイル)を委員会草案として承認し,現在OASISの委員会Webページからダウンロードできるように公開しています。次期版のoBIX v0.11(zipファイル)も,現在同委員会によってレビュー中です。この仕様もダウンロードできます。また同委員会は,oBIX仕様を利用するためのオープンソースJavaツールキットを公開しており,oBIX Sourceforge repositoryからダウンロードすることができます。今後,この仕様の相互運用性を確保するコンフォーマンス・テストの実施や,更なるoBIX仕様の拡張・保守を続けていく予定です。

 このように,新しいオープン・スタンダードを開発することで高度化する産業分野は,まだ多くあります。oBIXは,IT業界以外の業界において,関係企業や競合する企業が協力して,ユーザーのためにオープン・スタンダードの開発を行っている,たいへん参考になる標準化事例だと思います。私は,日本の産業界でも,oBIXに習って,様々な業界でオープン・スタンダードの開発が行われることを切望しています。