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 これまで2カ月に渡って,「説得力をもった文書」をテーマに事例やテクニックを紹介してきました。

  • 他人を説得するための文章術 (1)文書の説得力とは?
  • 他人を説得するための文章術 (2)説得力がない文書とは?
  • 他人を説得するための文章術 (3)文書を駄目にする10の原因
  • 他人を説得するための文章術 (4)“しつこい”と思うくらいに説明しよう!
  • 他人を説得するための文章術 (5)顧客が嫌がる文書
  • 他人を説得するための文章術 (6)説明不足に陥らないための工夫
  • 他人を説得するための文章術 (7)まだまだある“駄目な文章表現”
  • 他人を説得するための文章術 (8)上司や顧客に“駄目出し”される表現

     私がこれまで実施してきた添削経験から,どんな表現が説得力を弱めているのかを分析・整理し,「これはまずい」という駄目表現を選び各回で解説しました。今回のシリーズでご紹介したもの以外にもたくさん駄目表現はあるのですが,特に気になるものを取り上げ「書いてはいけない駄目表現」として説明してきました。

     では,シリーズ最後の今回は,これらを総括して,「文章力」を語ることにしましょう。

    「自分は大丈夫」と思ってはいけない

     これまでご紹介したものは,どれも文書の説得力を弱めるものばかりです。

    「書いてはいけない」駄目表現

    ・主張と理由が不明確,またはまったく書いていない。
    ・分かりやすくない。何を言っているのか不明。
    ・伝える相手と自分の,持っている知識の前提の違いをよく考えていない。自分が分かっていることは,ことわりなく省略してしまう。
    ・接続詞や助詞,副詞の間違い。
    ・敬語やお詫びの文章が不適切。
    ・修飾語の長い文章。
    ・あいまいで抽象的な表現を使う。

     私はいつも文書を読み,見たくない駄目表現を見つけ,黙々と赤書きをします。

     駄目表現を見つけてしまうと赤書きしなくてはならないので,見つけないようにするのですが,やはり,長年の癖なのでしょう。どうしても見つけてしまうのです。

     こんな駄目表現を使って文書を書いていると,上司やお客さまから「分からない,納得できない,説得力がない」と駄目出しされたり,怒らせたりと,書き手にとってまったくよいことがありません。

     私がセミナーでこのような話をすると,「私は問題ない,大丈夫,そんなこと言われたことはない」という顔をされる方がたくさんいらっしゃいます。

     その安心感は根拠がなく,非常に危険と言わざるをえません。誰からも指摘されないから「自分の文書は問題ない」と思い込むのは大変危険です。

     お客さまが何も言われなくても安心してはいけません。お客さまは,あきれて物も言えないだけかもしれません。諦めているのかもしれません。あまりよく読んでいない(読む価値なし)と捨てているのかもしれないのです。

     仕事を合理的・効率的に進めたいなら,文書が原因で発生する無駄(書き直しや追加・補足説明の手間や時間,上司や顧客を怒らせてしまった場合の手間・時間)を排除すべきです。

     つまり,仕事対応力を向上させるためには,「文章力」を向上させることが欠かせないのです。

     では,どんな風に文章力を向上させていけばよいのか。

     ある物語を使って説明しましょう。とくに,解説は書きません。読んだ方の解釈でご理解いただければ結構です。

    書き終わらない「提案資料」

     もう,かなり前の話です。家電メーカーの新商品開発プロジェクトで,量販店向けの販売委託に関する提案資料を作成したことがありました。

     このときはAさんという34歳の主任が提案資料を書いたのですが,上司の部長からなかなかOKがでません。Aさんは,何回も何回も根気よく直しましたが,部長からはOKが出ませんでした。

     部長も,もっと自分で赤を入れればいいのですが,絶対に自分では赤は入れません。具体的な文字列はぜったい書かないのです。

     「もっと説得力を高く」,「理由に納得感がない」,「主張が弱い」,「表現が子供っぽい」,「主張に矛盾がある」という具合に,抽象的なことを言うばかりです。

     何回か修正を命じられた頃,Aさんは部長に腹を立てるようになりました。「俺は文書は上手いのにおかしい」,「これまで文書を直されたことはない」,「部長は細かい」,「難癖をつけている」,「時間がもったいない」と部長がいないとき,周囲に不満を漏らしました。

     でも,それでも部長からはOKは出ませんでした。それどころか,だんだん,Aさんを厳しく詰めるようになりました。冷静ながら反論を許さない論理性をもってどんどん責めるようになったのです。

     Aさんは頭をかかえて夜遅くまで提案資料を書くようになりました。あまりにもOKがでないので,腹を立てていたAさんは,今度は元気がなくなりました。うつむくことが多くなり,自信がない感じでした。部長の前では,声が小さくなりました。

     ぞれでも,部長は,止めませんでした。

     ある時から,Aさんの机に文章の書き方の本や論理学の本などが積まれるようになりました。当時使われ始めていたインターネットで,文章の書き方などのサイトを検索するようになりました。

     その頃から,Aさんの言うことは変っていきました。「部長の言うことは正しい」,「納得感がある」,「自分の文章は駄目だった」,「部長の指摘は勉強になる」,「素直に聞くと,ノウハウになる」と周囲に話すようになりました。それまで,少し横柄だったAさんの態度も変り,紳士的になっていきました。

     そして,Aさんが書き始めてから,1カ月後,部長から提案書すべてにOKが出ました。そして,それは,Aさんの部門や関係部門,会社の上層部に見せられました。Aさんは,いろいろな人から「しっかりした提案書」,「説得力があってよい」,「文章が上手いね」と褒められました。

     Aさんは,うれしくなり,部長にお礼を言いました。すると部長は,

     「あのままだったら危なかったな。仕事がゆるいと今後がきついからな。まあ,文章力は一生ものだから,今回頑張って得したろう?お前の価値をあげてやったんだから感謝しろよ」と言いました。

     Aさんは嬉しそうな顔をする部長を見ながら,自分が何とも晴れやかな気持ちになっていることに気づき,何か新しいものを自分に中に感じました。

     Aさんは,その後何年かして教育コンサルタントになり,文章力の向上を指導するようになったそうです。

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