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 前回は,私が人材指導において,なぜ「長い説教より論理的な5分」と言っているのか,その理由をご説明いたしました。

 今回から,私が行っている5分間指導の具体的な話を紹介していきます。

「抽象的な言葉は禁止だ!」

 もう,数年前のことです。その頃私は,ある企業でスタッフとして一人で気ままな仕事をしていました。普段はあまり仕事はないのですが,会社で何か問題が起ると,そこに投入されて短期間で問題を解決するという仕事をさせられていました。そう,この頃の数年は,私は部下を持たず,気楽な生活だったのです。

 そんなあるとき,会社である問題があり,私はその仕事に投入されました。仕事は,大手企業との商品供給提携のための交渉でした。私一人では厳しいので部下を何人かもらって,久しぶりに部下を指導をすることになりました。

 私は,提案資料を部下の岡田に命じました。しかし,1日たっても何もでてきません。そこで,どんな内容にするか確認したところ・・・

芦屋:岡田,提案資料の構成だけど,どう考えてる?

岡田:今,考えているところですよ。もう少し待ってほしいんですが。今,資料調べているんですよ。

芦屋:そうか。それはいいけど,具体的にどういうページ構成にするの?

岡田:そうですね。まず,目次があって,次に挨拶があって,次に商品説明があって・・・商品説明は,訴求力がある感じで,色もきれいにして・・・

芦屋:岡田,抽象的な話はいいよ。僕は,具体的に聞きたいんだよ。目次の中身を今からホワイトボードに書いてくれないか。今,思っていることでいいから。1日考えたんだから,何か書けるでしょう。具体的な商品説明の言葉を書いてよ。訴求力をもつ言葉かどうかチェックするから。

岡田:それは,まだですね。資料に落としてから見てもらいますよ。

芦屋:駄目だよ。今の君の頭の中を見たい。今ここで書いてよ。

岡田:それは・・・もう少し待ってほしいって言っているじゃないですか。

芦屋:駄目だよ。お前の言うことは抽象的なんだよ・・・いいか,人間は,脳でイメージしたことしか実現できない。イメージが抽象的なら,アウトプットも抽象的なものになるんだ。だから,このまま,お前に任せると,出てきたものをまた,大幅に修正しなくてはならないんだ。

岡田:それは・・・

芦屋:目次書いて,ホラ(ホワイトボードマーカーを渡す)

岡田:はい(すごすごホワイトボードのところにいくが,考え込んでいる)

芦屋:なぜ,書けないの?

岡田:どんなものを書いていいのか・・・

芦屋:そうか。では,考えてみよう。商品売り込む相手は誰なの?誰をターゲットにするの?

岡田:それは,権限がある,販売企画みたいなところの人ではないでしょうか?

芦屋:抽象的な表現だな。具体的に考えようよ。それは,誰なの?

岡田:分かりません。

芦屋:では,どうすれば,分かるの具体的には?

岡田:・・・

芦屋:具体的に考えてみようよ。

岡田:そうですね。同業の取引先に聞いて見ましょうか?大学時代の同級生がいますので,人脈たどりましょうか?もし,たどれたら,資料の構成なんかも,聞けるかもしれませんね。夜もセットして。

芦屋:いいね。具体的でいい。じゃあ,今から動いて。明日のこの時間に打合せしよう。時間がなくてもそれで終わり。1日で終わりだよ。岡田,仕事は時間を切らなければ意味がない。「仕事があって時間がどれくらいかかる」のではなく,時間が決まっていて仕事のやり方を決めるんだ。そうでなければ,仕事を計算することはできないんだよ。

岡田:そう・・ですね。

芦屋:それから,今後「抽象的な発言は禁止」だ。抽象的に考えているうちは,仕事は進まない。いいか,抽象的なことしか言えないのは,理解が浅いんだ。自分の意見を言うとき,議論をするときは具体的に考えなければならない。それが,仕事の質を決めるんだ。

 私は岡田にこんな話をしました。この間5分くらいです。岡田には,このとき,「抽象的でなく具体的に考えよ」ということと,「まず時間があって,そこに合う仕事のやり方を考えよ」ということを伝えました。

「ルール」が習慣を変える

 岡田が,すぐに見違えるように仕事ができるようになることはありません。でも,この5分間には大きな意味があるのです。私は彼にこの2つを「やってはいけないこと」と認識させ,2人の間のルールとして「動機付け」しました。

 つまり,「何がよい」,「何が悪い」という具体的な尺度をルールとして理解させたのです。

 仕事を具体的に考える必要があるのと同様に,指導もまた曖昧ではいけません。抽象的な話---「お前はまだまだだな。もっと頑張れ」や「何をやってるんだ。よく考えろ」では駄目なのです。具体的に「何がよく」て,「何が駄目」なのかを理解させなくてはなりません。これは,無意識に好ましい行動を選択させるという「強化」,簡単に言うと習慣化させるということです。

 習慣を変えること。それは,たまの説教では身につかないものです。習慣を変えるためには,会うたび,顔を付き合わせるたびに,上司と部下の間のルールを徹底し続けること。これが大事なのです。

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