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 産学連携実践PBL(Project Based Learning:プロジェクトベース教育)は5つのプロジェクトでスタートしました。前回のエンハンスト版の3つと,今回の新規2つです。エンハンスト版は,クライアントが実際の仕事で使いますから,要件を言うクライアントは真剣で厳しいです。本物のプロジェクトと同じはずです。

 その本物と同じプロジェクトの1つが,デジタル・メディア研究のS先生がクライアントのプロジェクトです。先日PM(Project Manager)インタビューに参加したのですが,先生の発言は,前回までのプロジェクトとは全く違います。学生の実力で,どこまで可能なのか? 先生には全て分かっていますから,スコープは前回より圧倒的に小さく,完全にピンポイントの要求です。

 その対象への土地勘がないと,理解したりコミュニケーションをする前提となる共通領域がありません。ユーザーとSEとは,世界を理解する枠組や文化や世界観が,そもそも違っています。にも関わらず,ノーリスクで会話をします。会話と言っても,インタビューではなくヒアリングです。ユーザーが言うことをどのように実現するか,SEはひたすらHowの頭で聞いています。

 SEは自分の得意な世界に写像しますから,ユーザーとのコミュニケーションは結局,齟齬(そご)の塊になりやすい。まさに私はそれを実感しましたネ。共通インターフェースが空集合ですから,まずそれを埋めるための事前学習です。ユーザーの話を聞いていてWhyの質問を言えないのは,わかっていないからです。その質問もユーザーにとって自明なことを何回も聞かれると,ユーザーはどう思いますか?

 ですから,適切な質問は簡単ではないのです。SEは防御本能が働きますから,小さく得意なタコツボ世界にますます入っていきます。うまく行かないプロジェクトは,ほとんど最初からうまくスタートできていないのです。既にユーザー(この場合はS先生たち)は厳密な要件を言おうとされているのが,手に取るように分かります。その厳密なレベルで,話を聞けているのか?会話のレイヤーが違うと,とんでもないことが後で露呈します。いかにそこらを発見し,同一レイヤーでのコミュニケーションができるか?

 このPBLのプロジェクトでは,ITのプロからの詳細な仕様書で,内部モジュールを構築します。PM(Project Manager)に聞くと簡単余裕ですと。メンバーも同じ感触です。こんな下請構築がPBLになるのか?彼らは簡単と言っているが本当なのか?私に土地勘がないのでわかりません。コミュニケーションを丁寧に行い,クライアントが理解度を評価すれば済むことです。しかし何か違和感があったのです。

 私がどうしても知りたいのは,「要員の気付き」です。何かヘン?と感じるのは何故なのか?しかし,結論から言うとPMも学生も,問題の予兆である違和感を感じることはできなかった。違和感や直感はヒラメキではありません。曖昧なこと腑に落ちないことが,偏桃体(好き嫌いの中枢)を通して顕在脳に浮かび上がって来ることです。それには,納得できるまで考えたり求める気持が無ければ無理です。

 「彼らは何かヘン?」という私の違和感は当たりました。この“簡単”プロジェクトは大変なことになったのです。この顛末はまた後で。次回は顧客満足を超える顧客驚愕です。