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 保守開発による見積もりは,新規開発とは違った難しさがあります。母体部分と,修正を加えるエンハンス部分を分けて見積もる必要があるからです。今回は,保守開発における見積もりについて考えてみましょう。

 最近は,ゼロからソフトウエアを作るプロジェクトの方がむしろ少なくなってきました。すでに企業活動のほぼ全域にわたってIT化されていること。システム開発にもスピードが求められ,既存システムに手を加えて要求を実現することが多くなったこと――などが理由です。

 ところが,保守開発における見積もり方法は,発展途上にあります。このため見積もりに戸惑うエンジニアは実に多いことでしょう。

 エンハンス部分の見積もりは,新規開発と同じです。問題は,母体部分の見積もりをどう行うかです。そこで私は,以下の三つの方法を提案します。

(1)母体係数法
 母体部分の品質を保証するために必要な作業工数を,母体規模をベースに算出する方法です。具体的には,「母体規模×係数」という計算式を使って,新規開発に相当する規模を算出します。これを基準生産性で割って工数に換算します。

(2)母体分析法
 母体部分のソフトウエア構成を分析し,影響を受けるモジュールや機能を明確にして必要な工数を積み上げていく方法です。正確に見積もることができる反面,これを実施できるのは既存システムについて相応の知識がある場合だけです。

(3)作業積算法
 母体部分の品質要件を実現するために必要な作業を,WBS(Work Breakdown Structure)によって展開し,作業ごとに工数を見積り,それを積み上げていく方法です。

 母体部分の品質を保証する作業工数の算出は,母体部分を熟知している場合を除いて,(3)の作業積算法を用いるべきでしょう。概算見積もり段階で見積もりできる,徐々に精度を高められる――という利点は他の方法にはありません。

 現行機能の調査が完了した後なら,より正確に作業工数を見積もることができる(2)母体分析法を用いてもよいでしょう。つまり,現行機能の調査前(概算見積もり)は作業積算法,調査後(詳細見積もり)は母体分析法を用いるのが現実的です。






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