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 皆さんは仕事で会話をするとき,どのような話し方を心がけていますか。私は「起承転結型」が多いです。「起承転結型」というと一見,話上手に聞こえますが,実は違うんです。「起」と「承」が長かったり(前ふりばかり?),たまに「転」じてしまい,元のテーマから外れてしまったり……。相手からは,「結局,何が言いたいの?」と突っ込まれてしまうことも多く,なかなかロジカルには話せません。

 起承転結は,文章を構成するときの基本形ですよね。小説や物語などは,ほとんどがこの形で書かれています。大学時代,日本文学を専攻した私は,すっかり起承転結型にはまってしまったようです。でも,実は起承転結型はビジネスの場ではあまり適さないようです。特にIT業界では「結論」から先に言う「三角型」が好まれます。

感情が先に立つと論理的になれない

 社会人になってしばらくは,ロジカルに話せていないとは思っていませんでした。むしろ他の女性社員と仲良くなったり,飲み会でみんなを笑わせるのがうまいので,コミュニケーションは私の得意分野だと思っていたのです。仕事上の人間関係もうまくいっていたし,ビジネス会話にもそれなりの自信がありました。

 そんなある日,次期の仕事や目標について,上司とミーティングする機会がありました。その上司とは日ごろから,よく話しをする間柄。会社の中でも私の考えをよく理解してくれている人だと思っていました。しかし,上司から提示された仕事の方向性は,私が描いていたものとはまったく違うものでした。

 上司の説明は理解できましたが,あまりにも思い描いていた内容と違うので「なんで,こんな仕事を」と,ショックを受けてしまいました。もちろん,上司が提案してくれたキャリアパスは,素晴らしいもの。今後,この方向で進んでいくことは,会社はもちろん,私にとっても不利益になるものではありません。

 でもなぜか,その仕事が嫌だと感じてしまったのです。そんな感情が顔に出てしまったのでしょう(社会人として直さなければ!)。私の顔色を見た上司は,「何か意見があるの?」と聞いてくれました。でも,私の頭の中は,「嫌だから嫌」「やりたくない」と,ただ感情が先に立つばかり。論理的に説明しなくてはと思いながらも,まったく言葉が浮かんできませんでした。

 いくら私でも,「ただ嫌なんです」というだけで,仕事を断れるはずがないと分かっています。結局その時は,嫌だと感じる理由を明確にして上司に説明することができず,アサインされた仕事に就くことになりました。(後日談ですが,その仕事は非常に楽しいものでした!機会があればまたぜひ携わりたいと今では思っています)

 この一件は,ロジカルに物事を捉え,説明できていないことが,これまでにもあったのではと自分自身を反省し,話し方について真剣に考える機会になりました。

相手の立場で論拠を組み立てる

 こんなこともありました。「予算はこれ以上出せないし,スケジュールもずらせない。でもこの機能とこの機能を増やして欲しい」というお客様に対し,要求が無理であると説得する役割を担ったときのことです。「スケジュール表を見れば,できないことくらい分かるのに・・・・・・」と言いたい気持ちをぐっとこらえて,お客様に納得していただくための根拠を考えました。

 機能を追加することで手戻りが発生する,その手戻りによってスケジュールがずれる,想定外の工数追加のためコストが発生するなど,様々な根拠が見つかりました。それを資料にまとめ,交渉の場に向かったのですが,結果は惨憺たるものでした。

 私が説明した内容では,お客様はまったく納得してくれなかったのです。話し合いの最後には,「伊藤さんたちの苦労は分かりますが,もう一度現在の作業内容とスケジュールを組みなおして検討してもらえませんか」と言われました。

 会社に戻った私は,「何で分かってくれないんだろう。普通,この資料を見たらできないって分かりますよね」と,先輩相手に愚痴を言う始末です。すると先輩は,「それは伊藤さんの見方を伝えただけなんじゃない? 自分が納得する説明と,お客様が納得する説明の方法は違うと思うよ」とアドバイスしてくれたのです。

 開発側の立場である私が納得する理由と,発注側のお客様が納得する理由は視点が違います。それなのに私は開発側の視点だけで無理である理由を挙げていました。お客様を説得するためには,お客さまの視点から無理である理由を挙げ,説明しなければならなかったのです。

 このときは結局,お客様にとっては必要な機能であるということで,開発に盛り込まなければならなくなりました。ただし,言われた通りの仕様で見積もりを出すのではなく,代替案を「松」「竹」「梅」で用意して一番影響が少ないと開発側で判断した方法を「松」に据えました。この「松」だけが開発費に影響が出るもののスケジュールは今まで通りという提案でした。残りの「竹」「梅」バージョンは,どちらも開発費とスケジュールの両方に影響があるものを用意しました。

 こうすることで,「私たち開発側も努力しました。ここまでお客様の機能の実現について親身になって考えました」という姿勢を見せたわけです。お客様にとっても案が3つ出されているのに,スケジュールとコスト共に影響がある案を選択する理由はありません。
 結果的に,お客様は「松」を選ばれ,無事に交渉を終えることができました。

 開発側の視点で話しを進めると,「開発会社が楽をしたいだけじゃないの?」と思われてしまいがちです。そうではなくて,お客様の側に立って,メリットとデメリット,そして選択肢を用意することで円満に解決できるものなのだと感じました。

 いろいろと大変な一件でしたが,話をロジカルに組み立てるだけではなく,相手の立場に立って話すことの大切さを学ぶことができ,私にとって貴重な経験となりました。



仕事はロジカルに,プライベートは??

 このような経験から,仕事上のコミュニケーションでは,できるだけ論理的に話そうと意識的に取り組んでいる毎日です。周りでロジカルな思考や会話をしている方を見ると,「ああ~かっこいい。こういう風に話せればいいなあ」と感心しつつ,コツなどを吸収しようと努力しています。

 ただ,プライベートでは思い切り「非ロジカル」を楽しんでいます。カフェで女友達とたわいもない世間話に花を咲かせているときに,論理的思考法を持ち込んで議論など始めたらまったく興醒めでしょう。「ロジカルと非ロジカルを巧みに使い分けられるスマートな女性になる!」をモットー(?)に,毎日を過ごしています。