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 目の見えない友達がいて,子供が生まれた。そこで,健常者の子供と目の見えない親が全くストレスを感じずに遊べるゲームがあるとよいのではないかと思った。目の見えない人は立体的に音を捉えており,その感覚を追体験できるようなゲームがあると面白そう。現実的には健常者と一緒に遊ぶことは難しい。現実にある楽しい時間を,目が見える見えないなどに関わらず楽しめたら。どこにいるかがわかるようなもの,森の中,町の中,コンピュータの中,体の中,海の中…が音で分かる。

具体例:
  • 虫取り
  • ビーチバレー
  • 人間の体内を探検する自分が小さな医者になって病原菌と戦う
  • 人ごみの中で迷子の子供を捜す
  • 野良猫になって,夜,人間から食べ物を奪う
  • 恋人の足跡を聞き分ける

 これはPBL(Project Based Learning:プロジェクトベース教育)のプロジェクト,「映像のないゲーム」の学生のアイデアです。発想起点が優しく素晴らしい。どんな面白いゲームを作ってくれるのか?とても楽しみです。

 SIビジネスは,「何をどのように作るか?」のどちらかと言うと「どのように」に重点を置いています。言わば,「行き先客まかせ」のタクシードライバーと同じです。どの道を通ったら最短時間で行けるかはプロのドライバーの誇りです。どのように作るかにモノ作りの楽しみがあります。

 一方,ゲーム開発は「何を」が重要です。いかに楽しいものを作れるか?作っている自分達が「面白い」「楽しい」と思わなければ,面白いものができるはずはありません。投入するコストは,作ったゲームがどれだけ売れるかで回収します。プロジェクト管理を完璧にやって理想的なQCD(Quality, Cost, Delivery)でリリースしても,売れなければパーです。パッケージやミドルソフトも,いかに良いものを早く市場にリリースするかが勝負ですから,残業を超えて寝袋です。ヒットするかどうかはセンミツ,千やって三つうまくいくかどうかです。

 ゲームは,前期のPBLプロジェクトからの継続案件です。前回は完璧なPMBOK管理。2~3人のプロジェクトに何とスケジュールとコストを管理するEVM(出来高管理)を使っていました。大規模プロジェクト以外は使う価値がない言われているEVMをです。EVMは問題発見より,管理報告用途で作られたものです。

 しかし,今回のプロジェクトマネジャはゲーム会社のSEです。全く管理方式が違います。アイデア創出を第一優先にしたプロジェクトです。中間報告会で既にα版のデモをするようです。

 プロジェクトのメンバー2人が,それぞれのゲームアイデアの断片を構築しながら議論し,作っては捨て拡張し,アイデアを創出し合います。ゲーム開発はウォータフォールでは無理です。完了条件は誰も分かりません。あえて言うならタイムベースです。アイデアが出れば良いのですが,面白くなければ万事休すの失敗プロジェクトです。

 映像のないゲームのアイデアは面白そうでしょう。満員電車の中でも遊べます。聴覚は脳の芯と繋がっています。死ぬ直前,脳の「前頭前野」の働きを失って目が見えなくなっても,音は聞こえているようです。速聴という脳トレもあります。音楽は聴覚刺激ですね。ゲームによる脳の可塑性により立体的な聴覚神経ができ上がったら,脳自体も大きく変化を受けます。携帯でダウンロードできたら是非やってみたい。

 このようなゲーム開発とオブジェクト技術に基づく無限反復開発,ビジネスドリブンな世界が融合すると,何か日本独特な新しいものができそうです。機能分化やモジュラや分析的トップダウン思考では,どうしても日本人の勝ち目はないようですから。

 最後は寝袋持ち込んでも,面白いもの,自分達が納得するものを作って欲しい。Googleは世界の天才達の小人数チームが競うように知恵を出し,遊んでいます。寝袋持ち込みの開発は,管理ではなくモチベーションやドーパミン報酬系のおかげです。好きで面白くなければ,脳のクリエイティビティは活動し始めません。

プロセス管理は作るものが正しい時だけ効果がある

 情報システムはインターネットと融合し,社内からB2Bへ,インタフェースは一般顧客を巻き込むWebシステムが標準になりました。ということは,サプライヤ,ユーザー,クライアントが昔のようにキッチリ分離できないと言うことです。現場ユーザーにヒアリングして…というスタイルは,今後は少なくなるでしょう。

 「ITがイネーブルするビジネスモデル」になって来たら「要件を言って下さい作ります」は過去の牧歌的時代,否,ジュラ期・白亜期のできごとです。SEはITのターゲットドメインに好むと好まざるとに関わらずどんどん接近していきます。システムの成否はゲームやパッケージのように市場が判断するのかも知れません。ユビキタスはこの状況をもっと加速させます。

 どのように作るかのプロセス管理は,作るものが正しい時のみ効果があります。間違ったモノをどんなに正しく作っても,資源の浪費です。目的に適うかどうかが重要なのです。