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 日本IBMでどのように女性社員活用のための施策を行ってきたかをお話しする前に,まず私自身の簡単な自己紹介をさせてください。

 私は80年代前半に日本IBMに入社以来,システムズ・エンジニア(SE)としてコンピューターの世界で20年以上働いてきました。そのほとんどの期間,コンピューター・ソフトウェア製品を使ってシステムを稼動させたり,お客様や他のSEへの技術支援という分野で働いてきましたが,特にここ10年ぐらいはデータベース・スペシャリストとして働いています。その傍ら,昨年9月から日本IBM社内の女性技術者支援コミュニティー,COSMOSのリーダーをしており,また社外の日本女性技術者フォーラム(JWEF)の運営委員長も務めています。

 日本IBMという会社は,本年6月の「日経ウーマン:女性が働きやすい会社」の特集で,うれしいことにランキング第3位という評価をいただきました。これもここ数年,私達が取り組んできた様々な女性社員活用支援のための活動が実を結んだ成果だと思っています。

ダイバーシティーを積極的に経営に生かす

 みなさんご存知のようにIBMという会社は世界170か国でビジネスを展開しているグローバルな企業ですが,人事方針として「業界最高の人材をひきつけ,動機付けし,保持する」というのがあります。その中でも70年代からダイバーシティー(Diversity),つまり多様性を寛容するという伝統がありましたが,90年代の前半からはより踏み込んで,優秀な社員の獲得と人材の活用という面から,ダイバーシティーをもっと積極的に経営に生かそうという方針に変わってきました。
 
 ただ,そのような話の他にも,実は1993年に社外からIBMのCEOになったルー・ガースナー会長は,IBMで働きだした時にある発見をしたそうです。彼はそれまで女性の活用ということには何ら問題意識をもっていなかったそうですが,IBM社内の多くの優秀な女性社員達に出会った時に,「この人たちにもっと活躍してもらえれば,企業にとってなんと素晴らしいことになるだろう」と思ったそうです。そのような思いも,その後のIBMにおける女性社員の活躍を支援する施策につながっているともいえます。

 図1は,1998年当時の,IBM各国における女性社員比率ですが,これを見ていただくとわかるように,日本IBMは13.6%で世界の中で最下位だったわけです。また単に社員比率だけではなく,男性社員と比べて女性管理職比率も他の国に比べて低く,まさに惨憺たるものでした。


図1 各国のIBMにおける女性社員比率(1998年当時)
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女性のキャリアアップを阻害する3要因

 そこで,1998年1月23日に,当時取締役だった内永ゆか子(現取締役専務執行役員)をリーダーに,女性社員の能力活用に関する諮問機関「JWC(日本IBMウィメンズ・カウンシル)」を社内で立ち上げました。これは当時社長だった北城恪太郎の強い希望で決定したものです。

 この時のメンバーは女性16人と男性2人から構成されていましたが,このカウンシルの目的は(1)女性の能力活用の阻害要因の発見と解決策の検討,(2)女性のビジネス貢献を目指した能力・プロフェッショナルリズムの開発・育成計画の提言,(3)多様性を推進するための目標設定と進捗状況評価の3つでした。

 JWCでは,最初に侃々諤々の議論をしたわけですが,その時に女性のキャリア・アップ阻害要因として挙げられたのが,次の3点でした。

1.将来像が見えない
 10年後に自分はいったいどの役職で,何をしているのか不安である
  身近に目標となる人(上司,先輩)がいない

2. 仕事と家事・育児とのバランス
  時間に拘束され,意欲・能力があっても退職せざるを得ない

3. オールド・ボーイズ・ネットワーク
  昔から培われてきた男性中心社会の男性独特の文化についていけない

 その後,この上記の分析にもとづいて,問題を解決するためのいろいろな施策を実行してきました。JWCも数年ごとにリーダー,メンバーを入れ替えながら,2005年まで活動を続けました。現在は,女性役員・理事で構成されるボードメンバーによるアドバイスのもと,人事部門が具体的なアクションを実施しています。ただし,JWCとは別に昨年来,女性社員一般を対象とするのではなく,女性技術者に対する支援活動のためのコミュニティー「COSMOS」を立ち上げて,現在も活動しています。

 次回では,JWCとCOSMOSが過去に行った,また現在行いつつある,実際の施策についてご紹介します。


JWC(日本IBMウィメンズ・カウンシル)の主な活動と成果
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