「IT業界の中で生き残るためだ」。06年4月にシステム販売の日本ビジネスコンピューター(JBCC)など8社の事業会社を傘下に持つ純粋持ち株会社に移行した狙いをJBCCホールディングスの石黒和義社長はこう説明する。ITサービス産業ではCSK、インテック、ニイウス、日本電子計算などが持ち株会社に移行している。
JBCCホールディングスは06年11月、09年度(3月期)に売上高1100億円、経常利益55億円とする中期経営計画G5を発表した。04年度にスタートした中期経営計画で掲げた06年度に売上高1000億円などの目標をほぼ近い数字で達成できる見通しになり、次の計画を練っていた。
それに欠かせないのが、「どこにも負けないソリューションやサービスを持つこと。つまり、ナンバーワンのソリューション製品をいくつ揃えているかだ」(石黒氏)。G5の目標は10個。顧客企業にナンバーワンのソリューション製品を提供し、評価が高まれば、それを元に新たな投資ができるという好循環サイクルを考えている。その一環から純粋持ち株会社にし、M&A(企業の合併・買収)に乗り出した。「きらりと光る得意技をもつ会社」(石黒氏)をターゲットにし、買収した企業は5社になる。もちろん既存事業を成長させるシナジーを生む形にし、「親子関係ではなく、仲間という位置付けにし、グループとしての一体感を持つようにする。買収して、単に売り上げを増やすというわけではない」(同)。
加えて、「顧客に最適なソリューションを提供するために、今のJBCCグループに不足しているものを取り入れる」(石黒氏)M&Aもある。エンジニアリングに強いCISや製造系向けに実績のある新日鉄ソリューションズと日本IBMの合弁会社NSISSなどがそうだ。ITサプライ販売を展開するサプライバンクのように「ボリューム(売り上げ)を求めた」(同)M&Aの形態もある。
今後はオープンソース・ソフトのサポート、医療情報システム関係などのM&Aを進める一方、各社の共通機能を請け負うシェアードサービス会社を設立した。JBCCから人事や総務部門を分社したJBSSだ。「まずはバックヤードのスタッフを共有化させた。次は機能になる」(石黒氏)とし、品質向上など各社に共通する活動を一体で展開したり、システム販売を手がける3社の合同でセミナーを開催したりしている。「目下のところは現状のままでいく」(同)が、いずれは再編となるのだろう。そして、売上高2000億円という次の大きな目標に向かって邁進することになる。
事業分野別の売り上げ
G5で掲げた経営目標の1つが、経常利益率を06年度(見通し)の2.9%から09年度に5%に引き上げることだ。これを事業分野別に見ると、中核のシステム販売などの情報ソリューションが06年度の3.7%(売上高680億円)を09年度に6%(同720億円)にする。プリンタなど情報機器製造は2.8%(60億円)から5.5%(60億円)と利益率を高める一方、傘下のイグアスによるディストリビューション事業は2.2%(122億円)から3%(180億円)と売り上げを大きく伸ばす。ITサプライも売り上げを55億円(1.6%)から112億円(2.4%)にする計画。
重点施策である自社ソフトの売り上げは06年度の8億円から09年度に14億円にする。監視サービスなどストックビジネスであるマネジメントサービスは62億円から100億円、医療情報システムは6億円から30億円にそれぞれ伸ばす。
こうした自社ソフトやサービスを開発するために、07年度から09年度の3年間で約20億円を投資する。さらに500人のプロフェッショナル育成に10億円以上を投入し、G5の数値目標を達成させる。