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 1998年,日本IBMでは,女性社員の能力活用に関する諮問機関「JWC(日本IBMウィメンズ・カウンシル)」を社内で立ち上げました。今回はその活動について詳しくご紹介します。

 JWCでは1999年2月26日に,東京国際フォーラムに女性社員1400名を集めて第一回総会を開催,翌年5月11日には1500名を集めて第2回総会を開催しました。

 総会の一番の目的は,女性社員に自覚を持ってもらうことと,また会社が女性社員にこんなに期待しているんだということをわかってもらうことでした。けれでもおもしろいことに,副次効果として,来賓として招待された男性役員に対するショック効果もあったようです。

 つまり,圧倒的多数の女性の中に身を置くことで,来賓の男性役員たちは今まで自覚したことのない「多数の中でのマイノリティー集団であることの不安や不利益」を身をもって知ったということです。経営の中枢にいる役員の方々が,マイノリティーに対する意識を高める機会になったことでも,総会は重要な意味を持つことになりました。

男女共通の課題として「働く環境」を考える

 JWCの活動の中では,ロールモデルの確立,キャリアセミナーの開催,女性を部下に持つ管理職への支援,女性ネットワーキングの確立など,女性社員を対象としたいろいろな施策を行いました。それとは別に,やはり女性にとって気になる人事制度についても,人事部門といろいろ議論しながら取り組みを進めていきました。

 幸運なことに,当時は日本社会全体で男女共同参画社会や少子高齢化,2007年問題などについての議論が活発化し,女性だけではなく男性にも共通な課題として,企業における新しい働き方を考えてみようという時代になりつつありました。このこともまた,JWCの活動にとっては追い風だったように思います。

 そのころ,日本IBMでは,男性・女性共通の育児・介護の支援プログラムとして下記のような施策の提供を始めました。

・ファミリーケア・ネットワーク
・ホームヘルパー制度
・ベビーシッター割引券
・保育園契約:汐留「カンガルーム」の利用
・チャイルド・ケア・セミナー,エルダーケア・セミナー
・介護相談窓口の設置
・イントラネット上での育児・介護情報の提供

 また,日本IBMでは女性,男性にかかわらず,ワーク・ライフ・バランスの観点から,1987年のホームターミナル制度以来,多様な働き方を模索してきました。つまり働く場所と勤務時間の制約をいかに少なくして,効率的な働き方を実現するかを考えてきたのです。その試行錯誤の成果として,現在以下のような制度を提供しています。

●時間の制約からの解放
 フレックス・タイム制度
 短時間勤務制度(60%・80%)
 裁量勤務制度
 産前・産後休暇(産前7週間・産後8週間)
 育児休職(出産から子が満2歳まで)
 育児時間(1日1時間)
 介護休職(1年,再取得可)
 看護休暇(年間5日間)
 教育休職
 ボランティア・サービス休暇(年間12日)
 ボランティア・サービス休職(原則1年)
 フレッシュ・アップ休暇(勤続10・15・20・25年)

●空間の制約からの解放
 e-ワーク制度
 モバイル・オフィス
 サテライト・オフィス
 オンデマンド・ワークスタイル

 この中で女性だけに適用されるものは,産前・産後休暇と育児時間だけです。例えば,e-ワーク制度は勤続1年以上で,業務の性質上自宅での勤務が可能な社員を対象として,申請ベースで許可される制度ですが,現在推定2000人以上の社員が使っており,その制度を利用している人数は男性社員の方が多いのです。

 それというのも,育児期間中の女性だけに限らず,男性社員でも毎日長時間のラッシュアワーの中を会社に通勤するより,時には自宅でじっくり資料を作成したり,研究した方が効率がいいのです。結果として,女性にとって働きやすい環境とは,すなわち男性にとっても働きやすい環境といえるのだと思います。

女性技術者のリーダー育成に乗り出す

 この8年間,JWCが継続して活動を行ってきた結果,現在女性社員比率は20%弱まで増加してきました。役員,理事相当職の女性も98年の1人から,今では10人に増えました。入社5年目の離職率も女性と男性でほぼ差がみられなくなりました。

 この成功の秘訣は,やはり経営者のトップダウン的な支援が大きかったと思います。経営者メンバーの「女性活用は企業にとって重要である」という思いなくしては,ここまで来られなかったと思います。また同時に,ボトムアップ的な取り組み,すなわち女性社員自らが当事者として意識改革に努めることも必須だったと思います。

 ただし私たちは,この成果だけで十分だとは思っていません。その一つが女性技術者への支援です。女性管理者数はここ数年順調に伸びていますが,リーダーとなる女性技術者数がまだまだ少ないという現状があります。

 その理由の一つとして考えられるのは,管理者の場合は社員のポテンシャルに応じ,チャレンジするためのポジションを与えることで育成し,人数を増やすことができるのに対し,技術者が高いポジションを得るためには実績を積まなければなりませんし,スキルを証明しなければなりません。そのためには,管理職とはまた違った支援策が必要になります。

,例えば論文の書き方,新しい技術の取得の方法,技術コミュニティーへの参加のしかた,技術者特有のメンタリング方法などです。そのような課題を議論し,支援活動をするために,前回のコラムでもご紹介しましたが,私が現在リーダーを務めているCOSMOSというコミュニティーが昨年日本IBMの社内に発足しました。

 COSMOSの意味は,無限の広がりを持つ宇宙であり,かつ可憐なコスモスの花をイメージしています。私たちは今も,社内の多くの女性技術者の声を聞きながら,彼女達が自由に,また思う存分,能力を発揮できるような環境を実現するために,試行錯誤しながら積極的に活動を続けています。


11月に開催したCOSMOS定例会の会場風景
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