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 前回はプラットフォームの基盤技術,規格の話題について動向を見ました。今回は「超短納期,低コストの企業情報システム」という市場ニーズを踏まえて,今年,盛り上がりそうな具体的な実装方法について触れます。

 私が1年半前から唱道してきました「Web2.0 for Enterprise」は,「チープ革命」を前提にした,低コスト,短納期,短寿命,高機能・多機能の情報システム開発というのが基本的な考え方です。

 多機能という言葉を言い換えると,利用頻度の低い業務(業務の「ロングテール」部分)を支援する機能までカバーする,となります。従来,開発コストに見合うパフォーマンスが上げられなかった業務のIT支援を実現しようというわけですから,劇的なコストダウンが必須です。これは,eコマースにおけるロングテールと全く同じ事情です。

 このように「超短寿命化」し,低コストかつ短納期が求められるエンタープライズ・システムの実現には,次の四つの手法のいずれか,あるいはいくつかの組み合わせで対応するしかないのではないか,と私は考えています。昨年11月,私は某所でこの考えをベースに講演しました。講演内容のエッセンスを紹介しましょう。

超短寿命時代の企業情報システム実現のために:

(1)「エンタープライズ・マッシュアップ」(クライアント・サイド)
(2)「XMLDBのスキーマ拡充やミドルウエア」(サーバー・サイド)
(3)「軽量言語 (Ruby on Rails等)の活用」(比較的小規模なサーバー)
(4)「“軽量”Webサービスやmicroformatsで連繋」(必要な部分だけ作る)

 これらの手法の採用が2007年には急加速するだろうと私は予測しています。

 マッシュアップ手法によるシステム開発は,法的メタデータの処理やSLA (Service Level Agreement) に基づく適正料金設定により,普及の足を速めることでしょう。他社サービスをマッシュアップしたアプリケーションが社内で毎日使うアプリケーションに使われたり,外販される事例が一挙に増大する,と思います。

 長きにわたって「雌伏の時代」を経験したXMLデータベースも,2007年には各所で話題に上りそうです。「毎日のようにスキーマが変わってもOK」という柔軟性,既存の様々なシステムやアプリを繋げる連携性が,超短納期で大規模システムを実現するのに役立ちます。徹底してデータ中心指向の「Web2.0的エンタープライズ・システム」では,XMLデータベースを設計の中心に据えるのは極めて自然な考え方,と言えるでしょう。

 「特定のベンダーに依存したくない。既存製品の細かなバージョンアップに対応するためにテストをし続けるのは勘弁してほしい。だが超短納期という要求は変わらず,追求し続けなければいけない」。このような環境に囲まれている方は多いことでしょう。そんな人たちには,上記の(3), (4)が有効です。現場の要求のすぐ近くでオリジナルの開発ができる状況だったり,要求を出す本人が試行錯誤しながらアジャイルに開発できるならば,Ruby on Railsをはじめとする軽量言語の活用が極めて有効です。

 従来,「軽量言語は開発者1人~数人による小規模なシステムを開発するもの」という認識が“常識”とされてきました。ですが,2007年末までにはこれがくつがえる,と私は予想します。開発チームの規模も,出来上がったWebサーバーの規模も大きくスケールアップしていくことでしょう。弊社でも常時6~7名で,Ruby on Rails環境でWebレセコンというシステムを開発しています。しかも,開発者はほぼ半々で上海と東京に分散し,米国に置いたサーバーを介して連携しつつ毎時間のようにバージョンアップしています。

 なお,昨年Webに掲載されたShiv Singh氏の記事「A Web 2.0 Tour for the Enterprise」によれば, RSS や WebAPIと並んで,Ruby on RailsがWeb2.0を支える重要テクノロジーと位置付けられています。

 彼も私と同じ事を行っています。軽量言語による開発は,ユーザ自身を開発チームに取り込みやすいのです。この点でも,「Web2.0 for Enterprise」との相性は抜群,といえるでしょう。

 (4)の「“軽量”Webサービスやmicroformatsで連繋(必要な部分だけ作る)」というのは,マッシュアップの一般形です。リッチなデータを核としたWebAPIの借用にとどまらず,自前のアプリを簡便な手法でWebサービス化したりして疎結合で安定したシステムを素早く作ろう,という考え方です。

 さらに,例えば社員プロフィールなどでシステム間でデータ形式,メタデータの定義が不統一で困っていたのを,コンパクトで汎用のmicroformatsで代替/補間/統一することも,無用な複雑さを切り捨てるのに有効。(1)と違って特定のベンダーに必ずしも依存しなくても適用できるのが特徴です。

 以上のいずれか,あるいは,いくつかの組み合わせによって,短納期ながら高品質で高機能,大規模(あるいはロングテール業務もカバー)という二律背反を解決するのを模索する努力が加速することでしょう。

 以上,3回にわたる長い新年企画をお読みいただき,ありがとうございました。上記の議論や予測をご覧になって,2007年も「Web2.0 for Enterprise」を意識する価値がある,と感じて頂けたら大変嬉しいです。どうか本年もよろしくお願いいたします。