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 日本IBMにアウトソーシングの担当するプロジェクト・エグゼクティブと呼ぶ役職がある。アウトソーシングがコスト削減から次の段階に入ったとし、06年1月にアウトソーシング事業をアウトソーシング・クライアントサービス事業と組織名称を変更すると同時に、アウトソーシングの顧客を専門に担当する責任者を配置した。それがプロジェクト・エグゼクティブである。

  アウトソーシング・クライアントサービス事業の小林正一部長によれば、アウトソーシングは5年、10年という長期的な契約なので、その視点での関係維持を求められる。経営にITを使って競争力をつけたというニーズが高まっている。個人情報保護法や日本版SOX法(企業改革法)など法令順守やセキュリティ対策など解決すべき課題も数多くある。こうしたことを、技術的な視点からのマネージを担当するプロジェクト・マネジャーだけでは対応できない。営業担当者でもない。「誰に相談すればいいのか分からない」(小林氏)となり、「すべて面倒を見てくれという要望が出てきた」(同)ことから、アウトソーシングの“総合窓口”という位置付けの役職を設けたという。

 しかも、システム障害や機密情報の漏洩などITシステムの品質、安定した運用などが求められてきた。「安定した運用ができないと、利用者に迷惑をかけるだろうし、企業のブランド価値を損なうこともある」(小林氏)からだ。経営を取り巻く環境の変化に柔軟に対応できるシステムも求められている。そこで、着目したのがIT予算の7割を占める既存システムの運用・保守を1割でも2割でも削減したら、その分を新規投資に振り向けてもらうことだ。ここにプロジェクト・エグゼクティブの大きな役割がある。

 アウトソーシングは変革期に差し掛かっているということだ。日本IBMは93年からアウトソーシング事業に本格的に乗り出し、04年初めの段階で140社強の顧客の獲得に成功している。その後、公表した顧客はごく僅かだが、200社近くになっているかもしれない。アウトソーシングは当初、コスト削減が大きな狙いであったが、IBMはサービス品質の向上、IT強化、ビジネス変革へと移行することを期待してきた。だが、「コスト削減だけがクローズアップされすぎた」(小林氏)。これでは、IBMの売り上げは減る一方になってしまう。

 もちろんコスト削減の要求には応える。ただし、従来からの方法では難しいので、インドや中国を使う策がその1つになる。「例えば、米国企業の中にはセンターを米国内に設置するが、保守運用はインドに担当させる。(COBOLなど)昔のアプリケーションのお守りに常時10人で担当していれば、それを中国に出す。そして、その10人を新規に使うことが可能になる」(小林氏)。A社、B社、C社のシステムを集約化し、リソースを共有化することも考えられる。

IT部門強化の支援も

 米国では、役員レベルのプロジェクト・エグゼクティブもいるそうだが、日本は40人強(07年1月)で、1人が大手なら1社、中堅なら数社を担当している。「顧客企業の業績はよくなっており、今のうちに投資をしようとなっている。しかし、顧客の要求は高度化している」(小林氏)。それに応えられる提案を、プロジェクト・エグゼクティブが行うことになる。IT予算を消化してもらうという狙いもある。

 同時に、顧客企業のIT部門強化も支援する。「IT部門の弱点を指摘し、そこをIBMが請け負う。その間に、スキルを含めてIT部門を育成する」(小林氏)。07年1月に発足した日本IBMの100%出資のITサービス会社6社を統合させた日本IBMサービスが蓄積したノウハウを生かせる形にもする。

 アウトソーシングがIT部門のスキルを低下させたという声に対して、小林氏は「IT予算を小分けにしたことが、IT部門の地位を下げた」と見ている。例えば、予算1億円をもつIT部門は、1億円のシステムだと稟議が必要になるので、1000万円に細切れにしてしまう。そうなると、経営者から見たら、IT部門が何をやっているのか分からなくなる。投資効果も見えない。

 そこで、細切れになったプロジェクトを大きくまとめあげ、経営会議で議論してもらう形にする必要があるという。例えば、SCM(サプライチェーン管理)の場合、工場や物流拠点の再編、部材調達先の見直しなども必要になるかもしれない。なので、SCMプロジェクト全体の投資総額を決め、そのうち何%をIT投資に割くのかを決める。そうすることで、IT投資の効果もはっきりしてくる。日本IBMはこんな役割を持たせたプロジェクト・エグゼクティブをさらに増やす計画だ。