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 最近はフラットになってきましたが,多くの企業では「平社員→主任→係長→課長→部長→事業部長→本部長→役員→社長」というように出世します。どの国でもこのように階段型に出世するとの固定観念があります。でもこれは日本独特!なんだそうです。

 戦術(タクティクス)を掌(つかさど)る管理職は前線指揮官です。他人の感情を考慮しつつ自分の感情をコントロールするために,高い“EQ(情動指数)”が求められます。人望や人間的魅力は重要な資質です。人を通して業績を上げることが任務ですから,リーダシップが大きなウエートを占めます。伝統的組織は音頭を取ったり仕切ったり,リーダーが多いほうがうまく行きます。

 翻って戦略を掌る経営職は,後方司令官です。必要なのは“IQ”,頭の良さです。経営の対象は“枠組み”です。未来,先端,外部,統合がキーワードです。経営問題の多くは未来予測であり,「好ましい未来への妨げ(問題)を如何に排除するか」です。人が対象ではないので,リーダシップは必要ありません。カリスマタイプも重要な資質ではありません。

 元IBMのルイス・ガースナーも部下を従えたことはなく,講演でもボソボソ。決して人にインパクトを与える人物ではなかったそうです。インテルのアンディ・グローブは自分自身をパラノイアと言っていますが,メチャまともな人だそうです。ただ,「ハンガリーからの移民」というネームタグが貼り付けられた机まわりは,確かにパラノイア並みに綺麗とか。経営能力は抜群だそうです。

 業績をあげるのがけっこう地味な経営者というのは,アメリカでも最近よく言われるようです。著名な経営学者であるジム・コリンズの著書にも,そうした調査結果が載っています。

日本企業の多くは分業体制の駅伝経営

 大昔のTVドラマ“コンバット”で言えば,戦術担当は現場管理職のサンダース軍曹です。部下を率いて業績を上げるリーダーですから,しょぼくれていてはダメです。一方,戦略担当の後方司令官はジミな少尉でした。

 日本はつぶしの利く最強実務集団です。だが経営職はお粗末です。よって戦略不毛。特に戦後は収益率が下がりっぱなし。利益を犠牲にして成長(規模拡大)に励んだ。しかし,最近は売上もジリ貧傾向で,利益率は依然として長期低落。実務は素晴らしいが利益に結びつかない。新規事業,多角化,企業統合,M&A,海外進出,…等で企業成長は遂げるが,経営環境はさらに複雑になり難易度が高くなっている。経営能力は追いつかない。

 長いキャリアアップを経過してやっと経営トップになるので,年齢は60才?,タイプは調整型。米国の40才のトップダウン型経営者とは比べようもない。日本企業の多くは分業体制の駅伝経営。しかし,戦略とはすべてを統合すること。分業調整体制を経営とは言いません。

 大企業の部長が中小企業に役員として招かれました。トップマネジメントの一人です。求められる能力も,経営者的な戦略策定能力です。しかし悲しいかな,大企業のミドルマネジメントに戦略策定能力は微塵(みじん)もなかった。大企業の部長なら勤まったかもしれませんが,中小企業のトップマネジメントは勤まらなかったのです。それで潰れかかった会社が一杯あります。

 高卒=決められた手順通りに業務を処理する,大学卒=工夫を重ねて問題を早く解決する,大学院卒=そもそも何が問題なのかを発見しそれをモデル化する。高卒,大卒,大学院卒にはそんな一般的役割があるのでしょう。しかし,私が知っている人の中では,素晴らしい高卒の人が沢山います。問題の巣窟である社会にいち早く出て,自分の頭脳で考え勉強していますから当たり前です。IQ(地頭の良さ)は受験偏差値と違います。

 米国は宗教,性別,民族,学歴…,に係わる一切の差別はありません。そのかわり能力は明確に差別します。日本の社会はハンモックナンバー(海軍兵学校の卒業成績順位)社会です。有名大学出身の役員がいます。お客様と会って帰ると,OB名簿を見ます。そのお客様が自分より後輩だと,頭を下げたことを悔しがり怒ります。まるでアホバカ骨董品です。旧態依然のハンモックナンバーで人間の価値が決まる簿価社会は,衰えながらも大企業や官僚では依然勢力を保っています。