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 「中堅・中小企業を中心に650社を新規獲得」という記事には、少し驚かされた。650社というのは、SAPジャパンの2006年の数字。SAPには失礼だが、中堅・中小企業向けにそんなに売れているとは思っていなかった。中堅・中小向けの売上は43%増だそうで、2007年はさらに強気で二桁後半の伸びを目指すらしい。よく見るとSAPだけでなく、国産も含めERPベンダーの鼻息はみな荒い。どうやら2007年度はERP商談の“当たり年”になりそうだ。

 確かに多くの中堅・中小企業にとって今のタイミング、特に2007年度は会計システムなど基幹系の再構築に取り組まなければならない時期だろう。Y2K騒動以来、放って置いたシステムもそろそろ限界。上場企業、あるは上場を目指す企業なら、2008年度の日本版SOX法適用が気掛かり。そう言えば金融商品取引法により、内部統制制度(日本版SOX法)だけでなく四半期レビュー制度も導入される。国際会計基準へのコンバージェンスの観点などから、そのほかにも制度変更が怒涛のように押し寄せる。

 既に基幹系システムの刷新を完了している大企業はともかく、中堅・中小企業は耐用年数の切れたシステムを何とかしなくてはならない。特に中堅企業では、スクラッチで作ったメインフレームベース、オフコンベースの業務システムが山のようにあり、これを使い続ける選択肢はなくなりつつある。しかも昨今の景気回復の恩恵が中堅・中小まで行き渡ったことで、IT投資余力も高くなっている。ERPベンダーが色めきたつのも無理はない。まさに山のような市場が動き出したというわけだ。

 ところでERPと言えば、ひと昔前は「ERP導入により業務改革」というスローガンが流行った。さすがに今、しかも中堅・中小相手に、「ERPには(欧米企業の)業務プロセスのベストプラクティスが詰まっている」といった売り込みをするベンダーはいなくなった。私は以前、ERP関連の噴飯モノのマーケティングや論調にすっかり閉口していたので、基本的には悪い傾向だとは思わない。ただ最近はそれが行き過ぎ、「とりあえずパッケージを導入しましょう」といったベタな売り込みに流れすぎてはいないだろうか。

 例えば日本版SOX法対応。上場企業相手のERP商談では、ERPによる日本版SOX対応について提案が必要なのは誰でも分かること。で、「弊社の製品には、こんな内部統制機能があります」とアピールする。しかし、本当にそれだけでいいのか。考えてみれば、ERPに対象化された業務プロセスの“ベストプラクティス”を適用して一番効果が上がるのは、売上向上でも業務の効率化でもなく、内部統制確立に向けた取り組みにおいてである。今こそ、ERPのロジックの方ではなく顧客の業務プロセスの方をいじる提案が、もっとあっていいと思うのだが。