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 「競合他社もこの市場に参入にしてくると思っていたが、今もって姿が見えない」。こう嘆くのは、マイクロソフト日本法人で中小企業市場開拓を担当する眞柄泰利執行役専務だ。

 同社が中小企業の市場開拓に本格的に取り組み始めたのは2001年3月。「誰かがこの市場を引っ張っていく必要がある」(眞柄氏)との思いからで、背景には大手ITベンダーが大手企業向けシステム販売に重点を移してしまったことにある。1970年代後半から80年代にかけて、NECや富士通などオフコン・ベンダーが全国的な販売網を築き上げ、オフコンを中堅・中小企業に売り込んできた。ところが、パソコンの急速な普及とともに、ハードとソフト、サービスを一括で提供するオフコンのビジネスモデルが崩れ、中小企業向けビジネスで高収益を上げるのが難しくなってきたからだ。

 そして、儲からない中小企業向けビジネスは、マイクロソフトが開発したパッケージや開発環境を活用する方向に転換してしまった。中小企業向けの自前製品は少なくなった今、市場開拓はまさにマイクロソフトに“おんぶに抱っこ”に見えてきた。

 それでいいのだろうか。中小企業は日本経済の基盤を支える存在だとし、政府も活動強化に向けた様々な支援策を打ち出してきた。IT化も重要施策の一つに掲げている。だが、「中小企業のIT導入率は先進国の中でかなり劣っている」(眞柄氏)。マイクロソフトの調査によると、100人未満の中小企業では、日本のパソコンの導入率は米国の2分の1、PCサーバーは3分の1だという。しかも、「中小企業に情報の共有化や生産性の向上を訴えても、そのメリットをなかなか理解してもらえない。大手企業のような効果が出ないし、根本的にITを必要とする状況になっていないからだ」(眞柄氏)。

 そこで、眞柄氏は「政府にもIT導入のメリットを用意してほしい」と訴える。日本の中小企業のIT導入率が低い原因の一つがそこにあると見たからで、着目したのがe-Japanで推進した電子申請システムなどだ。「中小企業に大きなメリットにつながるはずだ」と眞柄氏が期待する電子申請システムは、各省庁がそれぞれ数億円、数千万円を投資して構築したものの、その利用率は数%、なかには1%を切るものさえあるという。ETC(有料道路自動料金収受システム)が料金割引の導入で急速に普及したように、何らかのインセンティブを用意することがIT活用を加速させる材料になると、眞柄氏は考えている。

ボリュームライセンスが20、30%成長

 もちろんITベンダーの地道な努力も必要になる。マイクロソフトはこれまで中小企業の市場開拓に力を注ぐ販売会社を支援する一方、中小企業の経営者らにIT活用の啓発活動を続けている。間接販売を主力とする同社にとって、「販売店は生命線」(眞柄氏)と考え、売り方などを含めた中小企業のIT化のシナリオを用意したり、ITコーディネータ協会など公的機関に協力したりしてきた。営業拠点も増やした。地域との接点を増やし、地場の有力企業との関係を強化し、各地域にあったプログラムを用意するためだ。

 その結果、同社の中小企業向け売り上げは着実に拡大し、総売上高の60%を占めるまでに育った。とくにボリュームライセンス契約が年間20~30%で伸び、ライセンス契約の売り上げは前年度(06年6月期)から店舗販売を上回っている。「顧客の顔が見えるようになり、パソコンの切り替え時に合わせて新バージョンの購入を勧められるようになるなど、大きな効果を上げている」(眞柄氏)。マイクロソフトが打った販促活動に合わせて、販売店が中小企業に商談を進めた履歴も販売店と共有できる仕組みにした。こうした施策が功奏し、日本法人の今年度の売り上げは前年度に引き続き2ケタ成長を実現できそうだという。

 マイクロソフトは6年かけて、中小企業向けビジネスを確立させた。眞柄氏が指摘するように「中小企業の市場開拓は余裕がないとできない」のかもしれないが、大手ITベンダーは再び時間をかけても、中小企業のIT化推進に取り組む必要はないのだろうか。マイクロソフト頼みでは寂しい限りだと思うが。

注)本コラムは日経コンピュータ07年1月22日号「ITアスペクト」に加筆したものです。