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 前回に述べた情報の徹底共有が可能にする「人材の最適配置と高い動機付け」の下で、様々なアイデアが創造的サービスに結実していく。そのプロセスの特徴をひと言で表現すればそれは「自然淘汰」ということになる。今回のインタビューで最も頻繁に聞いた言葉が実は「natural selection(自然淘汰)」であった。

 人の能力と、事業アイデアのそれぞれが自然淘汰にさらされる仕組みが社内に組み込んである。人の能力に関しては、前回評価制度のところで述べたが、情報共有の仕組みによって誰が何をやっているかが全員に筒抜け状態の下で、個々人の技量や能力に対する同僚の評価が形成され、それが人事上の評価に直結している。つまり、エンジニアコミュニティ内部で能力が自然淘汰され、その結果がそのまま人事評価に反映される制度になっている。

 事業アイデアの自然淘汰もしかり。すでに紹介したアイデアMLやエンジニアの自由なプロジェクト間の移動(特にプロジェクトから抜ける自由の保証)、さらに対外的にはアイデアラボによって、事業アイデアは自然淘汰されていく。個々のエンジニアが自分自身の興味関心に合致するような行動を取ることによって、全体としては最も効率の良い取捨選択が行なわれる。

 こうした自然淘汰は、伝統的な階層構造型統治(ヒエラルキー型)の下での、権威者による上意下達の構造によらず、いわば平等な個の集合体の中で、市場原理に基づいて経営資源が最適配分されていく仕組みが企業内で実現していることを意味する。この手の社内市場による経営資源配分に関しては、理論的主張はいくらでも可能だが、それを文字通り実践して成果を出している例は稀であろう。