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写真1 北京国技科海電子市場前。「保護知識産権 打撃軟件盗版」と中国大陸特有の簡体字(簡単化した漢字)で書かれている
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 みなさん,初めまして。玉利と申します。現在,北京に住んでいます。今月より「中関村からニーハオ! ITエンジニアの中国ウォッチ」と題して,中国のITや経済,文化に関する記事をお届けしたいと思います。

 さて,中関村とは何ぞや?といった説明は次回以降に回すとして,第1回目の今回は旬の話題,「Windows Vista」を取り上げたいと思います。といっても,Windows Vistaの海賊版の話です。海賊版は中国語で「盜版」(dao ban,ダオバン)と言います。

 中国のニュース・サイト「網易」に,Windows Vistaの盗版についての記事がありました。「ブラジルでWindows Vistaの盗版が出現。価格は6米ドル(約728円)」というものです。興味深いのはこの記事に付いたコメント。「6米ドルは高い。中国なら5元(約75円)だ」といった書き込みが散見されます。

「海賊版撲滅」の横断幕のもとで海賊版が売られる

 既に有名なことかも知れませんが,中国には盜版のソフトウエアが溢れています。

 北京の電脳街である中関村へ行くと,「保護知識産権 打撃軟件盗版」(知識財産を保護し,盗版ソフトウエアを撲滅しよう)といったスローガンが横断幕に書かれています。しかし,この横断幕を掲げた「北京国技科海電子市場」(通称,国技)のビルの中では大量の盜版ソフトウエアが売られているのです(写真1)。この様子は現在の中国でよくある建前と本音や,「上に政策あれば下に対策あり」という言葉を端的に表しているでしょう。

 筆者は試しに国技の中に入り,Windows Vistaの盜版があるかどうかを調べようと思いました。中に入ると,売り場には中古のノートPCやソフトウエアが並んでいます。一見,盗版は売っていないようですが,よく見ると売り場には“ファイル”が置いてあり,そのファイルの中には有名な画像処理ソフトなど,ソフトウエア製品の名前がズラリと並んでいます。どうやら,このファイルを見て,店員にソフト名を告げると,その場でCD-RやDVD-Rにコピーして販売するシステムのようです。おそらく,取り締まりに踏み込まれたとき,現物証拠を押さえられないようにするための対策なのでしょう。

 さて,肝心の(?)Windows Vistaの盜版ですが,ファイルには記載がなく,どこの店で尋ねてみても「Vistaは無い」の一点張り。外国人なので警戒されているのかもしれません。

 諦めてビルを出ると,路上で盗版映画DVDや脱税用の違法領収書などを販売する売人がいました。中関村にはこのような売人がたくさんいます。そこで彼らに「Vistaはあるか?」と聞いてみると,「ある。何でもある」との返事が返ってきました。

正規版のWindows Vistaはほとんど売ってない?

 「Windows Vistaはある」と言い切った売人(写真1右側のピンクの服を着た女性)は,「価格は30元(約450円)」だと言って,国技のビルの中へ入って行きました。しかし,数分で戻ってきた彼女は「Vistaは無かった」と言い,「他に欲しいものはあるか?DVD,領収書・・・」とまくし立てるので,その場を立ち去ることにしました。

 ところが立ち去ろうとすると,彼女のそばにいた別の女性売人が大急ぎでやってきて,「何でもあるから欲しいものを言ってみなさい」と聞きます。筆者としてはそろそろ引き時だと思っていたのですが,一応「Windows Vista」と答えると,彼女はどこかへ行き,10分ほどで1枚のDVD-Rを持って戻ってきました。


写真2 北京市の地下鉄ホームで撮影。「文文」と「明明」というキャラクターを登場させ,マナーのある地下鉄の利用を呼びかけるポスター
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 おもわず本物(?)の盗版Windows Vista(と思われるもの)が出てきてしまったので,少々怖くなった筆者は適当にごまかしてその場を退散しました。こういう時は言葉が十分にわからない外国人のふりをするのが一番です。ちなみに,この2月に筆者が中関村の電脳街を探し回った限りでは,正規版パッケージのWindows Vistaを展示している店は1店舗だけでした。

 盗版ソフトウエアを売る方は「自分の懐が痛むわけではないので別に構わない」,買う方は「使えて安ければそれでいい」というのが中国の現状です。そもそも盗版やコピー品が悪いという意識は薄いようです。

 今,北京ではオリンピックに向けて,至る所に「文明」という言葉が標語として掲げられています(写真2)。中国語の「文明」は日本語の「公共意識」に近いニュアンスなのですが,現時点では「文明」が足りないからこそ「文明」が標語になるのでしょう。盗版も文明の問題です。北京オリンピックが迫っていますが,中国政府は世界が注目(監視)している盗版ソフトウエアの問題をどのように解決するのでしょうか?

 さて,この連載では,IT分野を中心に筆者が北京で見聞きした中国の最新事情をレポートします。今後ともよろしくお願いします。