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 先週,米国版ロケフリ「Slingbox(スリングボックス)」を試してみたけれど,うまくIPTVが見られなかったお話をしました。

 英語で,サービスの使用感のことを“User Experience”と言います。最近,米国のIT業界では,User experienceがキーワードになっています。

 User experienceをもっとかみ砕いて考えると,「ユーザーがそのサービスや製品を利用して,どう感じたか」という意味になります。サービスを提供する側の観点から見た品質ではなく,サービスを利用した側から見た品質ということがポイントです。

 以前,IT業界では“User Friendly”がよく使われていました。User Friendlyは,操作性 → 使いやすさ → 利便性にその主眼を置いていたのに対して,User Experienceは同じような意味でありながら,ユーザーがサービスや製品を使った結果どうであったかを重視している点に違いがあります。

User Friendly = 操作性,使いやすさ,操作の簡単さなど
User experience = 利用した結果どうだったか,サービスの品質,快適性

Slingboxで見たIPTVのUser experienceが良くなかった理由

 さて,話しを元に戻して,楽しみにしていた番組「State Within」のIPTV放送を,Slingboxでは十分に満喫できなかった理由を考えてみると次のようになります。

・PCの画面が小さく見にくい。臨場感に欠ける。
・暗い場面がPC画面ではきれいに見えなかった。
・PCの音質が悪く,せりふが聞き取れない箇所が多々あった。
・画面が凍るケースが何度かあった。しかもSlingboxを再起動しなければならないケースがあった。

 PCで観ることに起因する画質,音質の悪さに関しては,今後PC自体が高解像度,高品質のビデオを視聴することを前提に設計されるようになれば,改善されるだろうと期待できます。

 それよりも気になるのは,回線速度とパケット損失(パケロス)の影響です。ソニーのロケーションフリーが要求する仕様は,上り実効速度300kbps以上。Slingboxは256kbps以上が必須で,512kbps以上を推奨しています。

 グレース家の回線速度は,下りの実効速度で8Mbps,上りで768kbps。一方,受信側の衛星データ通信のワイルドブルーはプレミア版で下り1.5Mbps,上り256kbpsです 。標準版は下り512kbps,上り128kbps。一応は要求されている使用環境条件は満たしていますし,各種速度計で調べても,ちゃんとスピードは出ている。

 それなのになぜ凍る?

 速度計は,SlingboxでもSpeakeasyのサイトでも無料で使えるspeed testツールがありますが,パケロスについては通信事業者(キャリヤやISP)は常にモニターしているのでしょうが,一般ユーザーが使えるような無料のツールは見当たりませんでした。

 パケロスに対する措置としてFEC (forward error correction) という技術があります。各パケットに,その前後のパケットに格納されている情報の一部も入れておくことによって,あるパケットが損失した場合でも失われた情報を復元できるという手法です。

 「弊社のサービスはFEC対応!」などと書いてある宣伝を見かけないところから推察するに,FECも標準装備なのか,もしくは事業者側の仕組みで利用者には公開されていない情報なのかのどちらかなのでしょう。

 通信速度が速ければパケロスは減るのか。有線は大丈夫で無線だからダメなのか,有線も無線も地球系は良いけれど衛星系だから良くないのか。原因をはっきりさせて,User Experienceを改善したいところです。

 情報インフラの発達した日本ではイメージし難いかもしれませんが,米国では地形的に地上波が届きにくい地域や,人口密度が低い過疎地域では,衛星に頼らざるを得ないのです。衛星通信会社のワイルドブルーは,米国でケーブルやDSLなどのブロードバンド・サービスが提供されていない約2500万世帯を狙っているといいます。米国の総世帯数は1億1000万くらいですから,全体の25%近くが市場というわけです。

 米国で衛星放送はかなり成功していますが,衛星系ブロードバンドはまだまだ帯域が狭く,ユーザが満足する品質にはほど遠い状態です。特にVoIPはつながりもしません。都市部と過疎地域のデジタルデバイドの解決策がブロードバンド化にあるといわれていますが,その到来はまだ当分先のことになりそうです。