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写真1 広い道沿いに1キロ・メートルほどビルが並ぶ。写真のビルの裏にも別のビルがある
写真1 広い道沿いに1キロ・メートルほどビルが並ぶ。写真のビルの裏にも別のビルがある
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写真2 延々と歩いてやっと入り口にたどり着く。とにかく広い
写真2 延々と歩いてやっと入り口にたどり着く。とにかく広い
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写真3 中国大手パソコン・メーカー「聯想」(レノボ)の本社も中関村軟件園にある
写真3 中国大手パソコン・メーカー「聯想」(レノボ)の本社も中関村軟件園にある
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 前回,中関村は「『中国の秋葉原』とも『中国のシリコンバレー』とも呼ばれる街」と書きました。確かに,日本の秋葉原のような電脳ショッピング街で有名なのですが,実際のところそれは中関村の一部に過ぎません。また,中国のシリコンバレーという表現も微妙に違うように思います。中関村は大学を中心とした研究エリアで,工学・自然科学系だけではなく社会科学系の研究所も多数存在します。シリコンバレーよりも大学や研究所の存在感が大きいように思います。

 中関村はかつて,郊外の文教地区だったのですが,現在では発展する先端産業への期待から,「中関村西区」と呼ばれる北京大学南側のエリアに,巨大なビルが次々と建っています。もっとも,ビルを建て過ぎではないのか?との印象もあり,中にテナントが入り切るのかどうか,他人事ながら心配です。実際に,テナントが埋まっていないビルも目に付きます。

 中関村にはソフトウエアの開発拠点「中関村軟件園」があります。軟件は中国語でソフトウエアの意味で,「ルアンジエン」と発音します。

 中関村軟件園は清華大学の北側でアメリカ的な低層の大きなビルが延々と並んでいます(写真1写真2)。とにかくビル郡は巨大で,ある意味では万里の長城や紫禁城を思い起こさせます。やはり中国人は巨大なものを作るのが好きなのでしょうか。また,空が広い開放的な雰囲気は日本の筑波研究学園都市に似ていなくもありません。

 中関村軟件園には有名なレノボの建物があります(写真3)。こちらも横に広く伸びた巨大なビルです。他にも有名どころでは「甲骨文」(オラクル),日本のルネサステクノロジ,IT機器販売やSI業務の「神州数碼」などが研究・開発拠点を構えています。

中国でITは人気産業

 これらのIT企業に北京大学や精華大学などを出た一流の技術者が就職します。最近の日本と異なり,中国ではITエンジニアの人気は高く,非常に良い仕事だと思われています。検索エンジン「百度」の創業者,李彦宏氏のようなIT業界のヒーローが登場していることもITエンジニア人気を高めている理由でしょう。ちなみに,私が日本ではITエンジニアだったと言うと,「それは良い仕事ですね」と言われます。どうやらお金持ちだと誤解されるようです。

 地方に住む優秀な学生の成功イメージは,中関村にある大学に進学し,中関村の大手IT企業に就職して「北京市の都市戸籍」(*)を得ること。そして,良い給料をもらって暮らすことだと聞いたことがあります。中国でも激しい受験競争を勝ち抜いた先にあるゴールの一つが,中関村なのです。

 今回は北京市西北部にある「狭義の」中関村をご紹介しました。実は現在,中関村という名称は地理的な枠を超えて,言わば国家ハイテク産業プロジェクト自体の名前になっています。次回は,この「広義の」中関村をご紹介します。



(*)北京市の都市戸籍:中国の戸籍は「農村」と「都市」の2種類があります。その中でも最も有利なのは北京市など大都市の都市戸籍です。大都市の都市戸籍にはさまざまな利点があります。例えば,中国人の海外旅行は一部の大都市の戸籍を持つ人にしか開放されていません。また,都市戸籍を持つ人は社会保険や年金をはじめとした社会保障を受けることができます。さらに,北京の都市戸籍を持てば子供の教育面でも有利です。居住する場所の都市戸籍がなければ,小学校や中学校に通うにも割高の学費を払わなければなりません。
 地方出身者が北京市などの都市戸籍を手に入れるには,高学歴と特殊技能を持つことが条件で,さらに各企業に割り当てられた数少ない戸籍枠を競争で勝ち取る必要があります。最近では都市への居留制度ができたために戸籍の重要性は薄れつつありますが,それでもまだ北京市の都市戸籍は中国で最も強力な「階級」の一つなのです。