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 ある技術を独学で修得したKさんは、それを使ってゲームを創りたいと思い立ち、メンバーを募って開発を進めてこられました。苦労の末にとうとう完成したゲームが大好評だということで、すごくイキイキしておられます。このところお疲れ気味のITプロフェッショナルも多いのですが、このようなイキイキや疲れはどこからくるのでしょうか。

仕事そのものの面白さ

 Kさんのイキイキぶりはどこからきているのでしょう。まず興味のあることを身につけて実践してみること自体が、ワクワクしますよね。他の専門家と集いソフトウェアをつくり上げていく過程では、意見の対立や突然来なくなる人などもあり困難もあったそうですが、それでも、この技術を役立てたいという熱い思いから最後までやり通せたと言っておられます。更に、完成しておしまいというのでなく、出来映えが利用者に好評だということで、まるで自分自身を褒められているようで感動しているということでした。これらはまさにITプロの仕事の面白さですよね。それにしても、技術修得に励み、設計や製作、チーム内の問題解決などしながらプロジェクトを進めるということなら、お疲れ気味のITプロの方々も、なさっていること自体は似ているような気がします。では、どの辺りから疲れが生じるのでしょうか。

 誰もがKさんように自分の思いを起点とした仕事ができるわけではないかもしれませんが、こんな説もあります。わたくしたちは、どうにかご飯を食べていける経済状態にあるとすれば次には、周囲から認められることによって、自分の存在や行動を価値あるものと実感でき、活力がでたり頑張れたりするのだそうです。ただ好きなことをしていれば良いとうわけでなく、他者から認められることが、やる気や元気に繋がっているということです。Kさんも完成したゲームが好評であることを喜んでおられますよね。ところが過度になると、存在価値が脅かされる恐怖から、自らの意思はそっちのけで、他者から認められるための行動に駆り立てられることもあるようです。こうなると、心も身体も無理をすることが多くなり、疲れますよね。本来は、自らの意思による自律的な動きを認められてこそ、やりがいもあるというものでしょう。ただそうはいっても、いくら自律的でも誰からも認められないのでは継続していかれないでしょうから、周囲の目が気になるのもよくわかります。

誰に認められたいか

 ところで、あなたは誰から認められたいですか? お客様、上司・部下、業界のITプロたちetc。その人たちは、何をみてあなたのことを認めるのでしょう? アウトプット物、売上高、保有スキル、仕事の進め方、人柄、態度etc。

 会社員の方ですと、勤務先の上司からの評価が気になることもあるでしょう。最近では成果主義といわれながらも、成果だけを厳密に測定して社員を評価するのでなく、仕事の進め方や態度などの要素もいくらかみられているようです。「今回のプロジェクトではうまくいかなかったけど、彼はいつも精一杯頑張ってくれているので・・・」のように。このこと自体には良い面とそうでない面の両方がありそうですが、環境が厳しい折から、「認められるには、常に限界ぎりぎりまで努力しなければならない」と脅迫的に思い込んでしまうと危険かもしれません。(自分がそうしてきた人は、無意識のうちに他人にも同じことを要求するので連鎖することもあります)

 自らの意思で仕事を選び、やり方を任されているときは、Kさんのように自然と楽しく頑張れるかもしれませんが、そうでないときでも常に‘限界まで努力’を投入するのはとても疲弊します。仮にそういうふりをしているだけであったとしても、態度を管理されるのはエネルギーを消耗するものです。組織としての活動であり多少の無理はやむを得ないかもしれませが、それが高じて、いつどんなときも限界まで頑張る態度や、長時間勤務や単身赴任など生活全般を省みない態度が、仕事に対する努力の証のような感覚になり、あちこちの無理から破綻するケースなどは問題です。

 では、ITの利用者や業界のプロフェッショナルたちに認められたい場合はどうでしょうか。ITプロとしての技を効果的に提供し、前向きにそのプロジェクトを成功に導くことは、当然ながら重要ですよね。しかし、あなたを丸ごと雇用している勤務先に比べると、利用者や業界のプロフェッショナルたちは、あなたが‘限界まで努力’をしているかどうかよりも、本来期待されている仕事を十分にやりきること自体を重視しているでしょう。むしろ、限界ぎりぎりではなくサラリとやりこなす姿のほうが、優れていると見られるかもしれません。そこで期待以上の仕事をすれば一目置かれることにもなりますよね。結果として仕事の仕方について一任されるなど自分の意思が反映されるなら、やりがいも高まりそうです。

自分の腕次第

 考えようによっては、企業人の中でも特にITプロフェッショナルは、専門性を発揮することによって、顧客や業界において認められることをより大切にする働き方をしやすいほうかもしれません。真に顧客から信頼され、世間のITプロからも一目置かれるというのは、社内で態度を認められるよりも難しいことかもしれませんが、本当にITに興味がありそれを活かす仕事で身を立てるなら、ベクトルをそちらへ向けるのも大きな価値があるのではないでしょうか。企業にとっても、社員が世の中で勝負できるレベルを目指すほうが、社内の目線ばかり気にしているよりも、組織全体の実力アップにつながり良い結果になるでしょう。

 「ITスキル標準」も、個別の企業内だけでなく業界共通の基準をもって、プロフェッショナルとしての個々のITエンジニアをみようとするものですよね。もしも、これを用いている企業で、世間に通用する実力をつけることを謳いながら、同時に自社への全面的な‘限界まで努力’も要求しているとしたら、社員にとっては矛盾を感じるところもありそうです。単純に考えると、マーケットでバリバリに通用する実力があるなら、自分の意思や生活を大幅に犠牲にするような要求に敢えて応える必要がないからです。だからといって、実力のある人が自分勝手なわけでもありませんし、組織や仲間への愛着もあるでしょうから(これは大切なことです)、気に入らなければさっさと去っていくということにはならないでしょう。けれども、「いざとなったら他のところでもやっていける」という気持ちをもてること、つまりプロフェッショナルとしての自信こそが、より自分の意思にそった仕事生活をしていく元となるのだと思います。力のあるプロフェッショナルは、より魅力ある仕事や職場を選ぶようになっていくでしょう。

世に出ること

 「皆さん出世してください」。卒業式に恩師からいただいた言葉です。出世というのは世に出ることだ。企業のなかで職位を上って組織を動かすのも、プロフェッショナルとして(企業内だけでなく)世の中に影響を与えるのも意義あることだと。世に出てイキイキとした仕事生活のできるITプロが、企業の内外に増えることを願っています。

 それでは、今日もイキイキ☆お元気に。