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 2007年3月26日から4月1日まで,早稲田大学東伏見三神記念テニスコートで,日本初の大学主催による国際テニス大会「アディダス・早稲田大学フューチャーズ大会」が開催されています。この大会の主催者は昨年度,全日本大学対抗テニス王座決定試合で男女共に優勝を果たした早稲田大学庭球部と,同OB会である稲門テニス倶楽部です。同大学創立125周年を記念して,(財)日本テニス協会(JTA),国際テニス連盟(ITF)アディダスなどの後援企業を募って開催する画期的な大会です。

 残念ながら,日本では,一部の人気種目をのぞけば,スポーツマーケティングの手法を駆使して,世界で活躍できる選手を産学協同で育てていく仕組みが未成熟です。スポーツマーケティングとして成立するためには,選手の認知度と能力を同時に高めていくことが欠かせません。早稲田大学主催の国際プロテニス大会は,こうした閉塞状況をブレークスルーしようとする試みです。さらに,大会オフィシャルWebサイトの効果的な運用と合わせて,主催者の早稲田大学生が主体になったブログが活用され,相乗効果を上げようとしています。

全国優勝の次は世界で活躍する舞台を

 2003年にスポーツ科学部を新設した早稲田大学は,トップアスリートの育成に熱心なことで知られています。庭球部では,OB会も積極的に助言をして,長期視点で科学的なトレーニングを徹底した結果,昨年,男女共全国優勝という成果を収めました。その次のステップは当然ながら,国際的な大会で活躍できる選手を育成することでしょう。

 今回開催される「アディダス・早稲田大学フューチャーズ大会」は,まさに新人の登竜門となる国際的なプロテニス大会です。実は,私も今回初めて「フューチャーズ大会」の存在を知りました。

 その最もわかりやすい説明は,実は主催者の大学生が運営するブログのプロフィールにありました。ブログの一文を引用させていただきます。


 ウィンブルドンなどグランドスラムと呼ばれる大会はご存知かと思いますが,フューチャーズ大会とは国際大会としては一番下のレベルの大会で,将来世界で活躍する選手のための登竜門となっています。あのシャラポワも,草津のフューチャーズ大会で初優勝してから世界ナンバーワンプレーヤーへとのぼりつめました。しかし,そのフューチャーズ大会は日本では数が少なく,多くの日本人選手は世界へのチャンスを失っています。

 もっと日本人選手が世界で活躍するチャンスを増やすために,テニスをもっと好きになってくれる人を増やすために,早稲田大学は立ち上がりました!皆様,ぜひぜひ応援よろしくお願いします!


国際大会こそがスポーツ業界のキラーコンテンツ

 スポーツマーケティングの世界で,認知度と広報効果を高めるためには,国際大会の開催が欠かせません。

 国際大会を開催することで,スポーツ新聞・専門誌はもちろん,新聞・雑誌・テレビといったマスメディアの取材を受け,記事や番組掲載のパブリシティが期待できるからです。オリンピックやワールドカップが最大のスポーツマーケティングの晴れ舞台になっていることを見ても,それは明らかでしょう。

 また,現在のインターネット全盛時代において,国際大会を通じた広報効果は急増しているはずです。テレビやラジオで生放送されない試合でも,公式サイトやメディアサイト経由でリアルタイムに試合経過や結果を知ることができるからです。

さらに,大会前後には,選手ブログもスポーツ愛好家のブログも盛り上がり,記事,コメント,トラックバックが急増します。前回の冬季オリンピックで起きた現象については,かつてこのコラム「金メダルよりも価値がある!?選手ブログに寄せられたお宝コメントたち」でもご紹介させていただきました。

 すなわち,国際大会はスポーツ業界においてネットを含む媒体価値の高いキラーコンテンツであり,同時に「ブログ情報爆発の導火線」なのです。国際大会の広報価値が上がっているからこそ,スポンサー企業の冠をいただいた大会の開催も可能になるわけです。

スター選手が育てば,さらにブランド価値も高まる

 こうしたキラーコンテンツとなるプロテニス大会を,マスメディアや広告代理店ではなく,全国優勝で全盛期を迎えつつある早稲田大学の庭球部自身が主催するところが注目に値します。

 もともと早稲田というブランド価値の高い大学が,システマティックに全国優勝レベルの粒ぞろいの選手を育ててブランド価値をさらに高めてきました。同庭球部のWebサイトを見ても,有力選手を多数抱えて選手層が厚いことがわかります。

 早稲田大学庭球部 加藤清忠部長のインタビューをテニスでお仕事というブログで拝見しました。早稲田大学スポーツ科学部教授として身体形態学を担当する医学博士で,早稲田大学競技スポーツセンター所長というプロフィールをお持ちと知りました。効率良く筋肉を発達させるための効果的なトレーニング方法などを研究されているそうです。

 同インタビューによれば前任の宮城 淳部長は全米ダブルスのチャンピオンということですので,おそらく昔ながらの気合と根性だけでやみくもに鍛える方式ではないのでしょう。

 こうしたシステム思考のトレーニングの上で,OB会と選手による手作りの国際大会を主催することが英断されました。世界レベルのプロ選手の試合のみならず立ち居振る舞いまでを,若い学生選手たちが目の当たりにし,有力選手は参戦する機会まで与えられるのです。この貴重な体験を通じて,さらに学生選手たちがレベルアップを果たし,その中からスター選手が育つ可能性が高まるはずです。

 国際大会で活躍するスター選手が育てば,早稲田大学庭球部のみならずテニス自体のブランド価値が向上します。そうすれば,テニスプレーヤーの身につけるものばかりでなく,公式サイトや選手ブログが人気を博すことになるでしょう。

大会スポンサー,アディダスのブログ戦略の可能性

 2002年から,早稲田大学とアディダスジャパンは,大学としては日本初のスポーツ分野での包括パートナーシップ契約を締結しています。

 パートナーシップ契約の3つの柱は(1)プロモーション,(2)学術研究,(3)ブランドビジネス,ということですが,お互いの高いブランドイメージを生かして相乗効果を上げるのが主眼でしょう。

 今回のテニストーナメントにおいても,アディダスの名前が冠され,メインの後援企業となっています。当然ながら,大会の公式サイトでも最上位の一等地にリンクバナーが掲げられています。

 ここで「もったいない」と思いましたのは,リンク先のアディダス公式サイトに,このトーナメント紹介のニュースリリースやリンクが見当たらないことです。また,同サイトのニュースリリース自体も2-3行だけで済ませ,PDFファイルがダウンロードできるだけの形式になっています。

 これこそブログスタイルにして,もっと更新を容易にすることで発信頻度を高め,検索エンジン対策も図れば,アディダスサイトを訪れる来訪客も増えるはずです。また,国内の著名大学を支援していることを積極的にアピールすることで,ファン層を広げることができるでしょう。

 また,別途「アディダスfor早稲田大学」というブログポータルを創って,各部の主要選手を紹介しつつ,選手の製品使用レポートをコメントで集めることにすれば,早稲田大学のアスリートたちへの注目も集まるはずです。各部のマネージャーや,スポーツ科学部の学生が企画運営しても良いかもしれません。

 そうすれば,体育会系のアスリートやOBに限らず,大会を応援している在学生にも,アディダスブランドを「味方」として感じていただけるでしょう。

フォーマルな公式サイトとカジュアルなブログ

 アディダス・早稲田大学フューチャーズ大会では,大学庭球部のホームページの他に,大会専用の公式サイトと,大学生発のブログを制作したところも注目です。

 手作り風の庭球部ホームページに対して,こちらはプロが作ったサイトに見えます。もし,庭球部のホームページしかなかったら,これだけ大会にフォーカスした情報発信は難しかったでしょう。また,その公益性から,協賛企業のバナーなどをベタベタの掲げることも実現できなかったかもしれません。

 さらに,運営に関わる大学生が立ち上げた「早稲田フューチャーズテニス大会2007」というブログも注目に値します。これは,サイバーエージェントのブログサービスであるアメブロを使った無料ブログですが,これなら大学生有志でも情報発信が可能でしょう。

 記事の中身は,今のところ事前準備の裏話と大会結果が中心になっています。肝心の写真よりも,絵文字多用のブログ記事も多いのが気になりますが,学生らしいといえば学生らしいでしょう。

 今後は,庭球部サイトに加えて,フォーマルな公式サイトと,カジュアルな学生運用のブログ,さらにはケータイを使った速報サイトを同心円上に適材適所で配置していくことが重要です。

選手発,大会ブログの質を高める方法

 最後に,大会ブログで慣れない情報発信をしている早稲田大学庭球部の学生に敬意を表して,バージョンアップを図るためのアイディアをいくつかご提案させていただきます。肖像権などの問題もあると思いますが,主催者の特権を生かせば実現できることも多いはずです。

1.デジカメ連写で選手の写真を満載に
 ブログの中のキラーコンテンツは,絵文字ではなく,試合中の迫力ある選手の写真です。今のデジカメは高速シャッターでの連写が得意ですので,学生何人かで「数を撮れば」必ず良い写真が撮れるはずです。

2.試合前,試合後の選手のインタビュー
 テレビや雑誌でもインタビューは欠かせませんが,テニス部メンバーだから聞ける技術や心理に関する深い質問もあるはずです。そんなインタビューがあれば,テニスファンは誰もが注目するでしょう。

3.有力選手のサーブ・フォア・バックの動画
 YouTubeなどのサービスを使えば,動画をブログに貼り付けることも難しくありません。若き有力選手のサーブ・フォア・バックの動画が見られるとなれば,テニスファンは必見でしょう。

4.会場に足を運びたくなる記事
 このブログを読んでも,一般の人が来場しても良いか,見るとどんな感動があるかが,まだ伝わってきません。東伏見には他にどんな名所やグルメスポットがあるかも含め,観衆を増やすかという視点で記事を書きましょう。

5.未来のメジャー選手の過去をアーカイブ
 選手の貴重な写真・インタビュー・動画は,大会が終わっても永久保存して,いつでも閲覧できるようにして欲しいのです。将来メジャーになる選手の若き時代の雄姿が見られる貴重なサイトとして,ファンが必ず訪れるサイトになるでしょう。

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 今回はじめて開催される国際大会は,回を重ねるごとに成長,発展していくでしょう。その歩みに合わせて,大会公式サイト,学生ブログが成長を遂げて,日本のスポーツマーケティング史に残ることを期待しています。