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 日本において,中国,インドその他の国への「海外アウトソーシング」の動きはますます加速しています。ところで,本当に事業への成果は出ているのでしょうか。

 これまで様々なオフショアプロジェクトを通じて,パフォーマンスや顧客満足度が高く大きな成果の出たケース,それとは逆に,パフォーマンスが低く満足度も低いケースの両方を経験してきました。そこで今回は,海外アウトソーシングのパフォーマンスについて述べてみたいと思います。

「技術者の数=パフォーマンス」ではない

 最近,インドで500人,中国に1,000人のオフショア人材を確保した,ベトナムなどに優秀な技術者を100人確保した,といったニュースをよく目にします。海外事情に精通されていない方々は,言語や文化,商習慣の異なるインドなどの外国に,ソフトウェア開発という知的労働分野で一定数の優秀な技術者や管理者を確保していると聞くと驚かれることと思います。

 オフショア開発の目標が,海外に一定の数の技術者を確保して開発業務に当たらせることであれば,その数値を満たしさえすれば,目標は達成されたことになります。しかし本当の狙いは,開発の成果やパフォーマンスにあるはずです。事業的にいえば,「コストを削減し,企業の競争力を強化し,事業プロセスを最適化すること」と定義できます。この定義に沿ってさらに検討してみましょう。

 まずコストに着目しますと,一般的な海外IT人材の給与は,学卒初任給で月300ドル前後から,IT技術者やSEで月500~600ドルからと,スキルや能力に応じて異なっています。欧米企業は短期的効果を狙い,優秀な技術者を日系企業よりも高い給与で雇用し,フルに活用しています。

 日本から海外企業に委託する場合は,現地人件費の他に,教育費,社屋コスト,利益などが加わり,オフショア委託費で1人月当り1000数百ドル~3000ドル~6000ドル~の幅となっています。技術力の高い海外企業の中には,一般的な日本国内の企業よりも,委託費が高い企業もあります。現地企業の間接費が大きいことを知って,自社で現地法人を設立する日本企業も多くあります。

 海外オフショアの初期の段階の一番の狙いは開発コストの削減です。IT市場は自由競争の中にありますので,一般的に開発コストは技術力/対応力/最終成果との比例関係にあります。そこで,!)技術/対応スキルが高くコストも高い委託先にある程度任せ,日本側の管理の手間をできるだけ減らす,!)日本側の手間は少しかかるが,低コストで優秀なリソースを育成しうまく活用してパフォーマンスを上げる,などの対応策があります。

国内企業に委託するよりコスト高になることも

 日本国内で,60万円/人月x9人月=540万円の仕事を,単価25万円/人月の海外企業に委託するケースを考えてみましょう。

 初期段階ではドメイン知識の移転・言語対応・生産性などが関係して,日本と比較して工数が増加する傾向があります。最初のプロジェクトのため5割の工数増加を仮定しますと,25万円/人月x13.5 人月(9x1.5) = 338万円の委託費となります。さらに日本側の管理費60万円/人月x0.3x3カ月=54万円や海外出張費20万円x2回=40万円も必要となるでしょう。

 このように仮定した場合,日本国内で委託すると540万円になるこの仕事は,海外委託をすると,委託費338万円+日本側管理費/海外出張費94万円=計432万円となり,108万円(20%) のコスト削減が期待できることになります。

 しかし,もしオフショア開発で不具合が発生し,日本側でフルに2カ月間フォローしたとすれば,60万円/人月x2カ月=120万円コストがかかります。この場合,国内委託以上のコスト高となってしまいます。

 あるオフショアのケースでは,当初,日本国内委託に比べて40%のコスト削減になる計画だったものが,オフショア開発の失敗により反対に60%もコストが増え,納期も半年遅れ,日本側リソースがフォローに当たったために別のプロジェクトチャンスも失った例があります。

 ただしこれを教訓とし,次からプロジェクトがうまく進むようになれば,このコストは教育投資として後のプロジェクトで回収できることになります。不幸にも不具合が続き,オフショアプロジェクトが中止となれば,失敗経験と無駄な投資だけで終わってしまうことになります。

 これは,事業的にマイナスとなるので避けたいところです。アウトソーシングの投資効果は,定性的と定量的の両面で評価することが必要です。費用面では,委託費(変動費)だけでなく,委託元の固定費,教育投資も含めた総費用で判断すべきでしょう。

 欧米のアウトソーシングにおいても異文化のオフショア対応に苦労している責任者も多いようで,うまく進めるためには「オフショアを考慮した,スコープ(範囲)・スケジュール・品質・コスト・リスク・コミュニケーションなどに関わるプロジェクトマネジメントこそが重要」と指摘しています。一般的に欧米はデジタル思考で分析的なのでマネジメントの考え方が我々日本人にとっても参考になります。

アジャイル型開発で生産性を5割アップ

 これまでマイナスの結果を生んだ事例についてお話ししましたので,次にプラス思考のお話しをしたいと思います。